その他の被害者とみなされているケース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 00:29 UTC 版)
「切り裂きジャック」の記事における「その他の被害者とみなされているケース」の解説
ホワイトチャペルで起こった11件の殺人事件に加えて、論評家によって切り裂きジャックに関連付けられた他の襲撃事件もある。「フェアリー・フェイ(Fairy Fay)」のケースの場合、この事件が実際にあったものなのか、ジャックの伝説として創作されたものなのか不明である この事件は1887年12月26日にコマーシャル・ロード近くの戸口で「腹部に杭が突き刺さった」女性の死体が見つかったとされるもので、被害者は身元不明のため、フェアリー・フェイと名付けられた。ところが、1887年のクリスマス前後にホワイトチャペルで記録された殺人事件はなかった。この事件は、鈍器が膣に突き刺されていたエマ・エリザベス・スミスの一件の報道と混同されて生まれたものと推測されており、今日においてはフェアリー・フェイは実在しないという識者たちの見解で一致している。 アニー・ミルウッド(Annie Millwood)という名の38歳の未亡人は、1888年2月25日に脚と下腹部に多数の刺し傷を負ってホワイトチャペルのワークハウス診療所に運び込まれ、見知らぬ男に留め金式ナイフで襲われたと職員に告げた。その後、彼女は退院したが3月31日に自然死している。ミルウッドの事件は、後に最初の切り裂き魔の犯行と仮定されたが、実際のところ明確な関連性を示すものはない。 また、カノニカル・ファイブ以前のもので他にも切り裂きジャックの犯行として疑われているものとして1888年3月28日にボウの自宅の玄関先で、留め金式ナイフで首を2回刺されるも一命を取り留めた若い女性服飾家のエイダ・ウィルソン(Ada Wilson)の一件がある。さらに他の例として1888年11月21日に、マーサ・タブラムと同じ下宿に住んでいたアニー・ファーマー(Annie Farmer)が襲われた一件があり、これも切り裂きジャックの犯行と疑われているものである。彼女は喉を切られており、2人の目撃者によればファーマーの悲鳴の直前に口と手に血が付いた見知らぬ男が下宿から飛び出し、「彼女のやったことを見ろ!」と叫んでいたという。ただ、この彼女の一件は、おそらく彼女自身の自傷行為と疑われている。 1888年10月2日、ホワイトホールに建設中のスコットランドヤードの新庁舎の土地から頭のない女性の胴体が発見され、「ホワイトホール・ミステリー(英語版)」と呼ばれる事件があった。遺体の腕と肩は9月11日にピムリコ近くのテムズ川に浮かんでいるのが発見されていたが、その後、10月17日には胴体の発見場所近くで左足が埋められているのも発見された。頭部や他の手足は見つからず、遺体の身元も不明のままに終わった。これは脚と頭部が切断され、腕はそのままであった「ピンチン・ストリートの胴体」事件と類似していた(ただし、ピンチン・ストリートの場合は腕は切断されていなかった)。 「ホワイトホール・ミステリー」は「ピンチン・ストリートの胴体(トルソー)」と共に「トルソー・キラー(英語版)」と呼ばれる単独の連続殺人鬼によって行われた「テムズ・ミステリー」と呼ばれる一連の殺人事件の一部であった可能性がある。切り裂きジャックとトルソー・キラーが同一人物なのか、たまたま同じ地域で活動していただけの別人物なのかは議論の余地がある。トルソー・キラーの「手口」は切り裂きジャックとは明らかに異なり、当時の警察は両者の関係性を否定していた。この連続殺人事件は4件が同一犯と推定されているが、被害者の身元が判明したのはエリザベス・ジャクソン1人だけである。彼女はチェルシー出身の24歳の売春婦で、1889年5月31日から6月25日までの3週間の間にテムズ川で、様々な身体の部位が発見された。 1888年12月29日、ブラッドフォード州マニンガムの馬小屋で、ジョン・ギル(John Gill)という7歳の少年の遺体が発見された。少年は12月27日から行方不明になっており、遺体は足が切断され、開腹及び腸の一部と心臓が抜き取られ、片耳も切除されていた。その犯行の類似性から、メディアでは切り裂きジャックによる犯行ではないかと憶測に基づく報道がなされた。少年の雇い主であった23歳の牛乳配達人ウィリアム・バレット(William Barrett)は、殺人容疑で2度逮捕されたものの、証拠不十分で釈放された。この事件では誰も起訴はされなかった。 1891年4月24日にニューヨークにおいて、キャリー・ブラウン(英語版)という女性が衣服で首を絞められた後、ナイフで切り刻まれ殺された。彼女の遺体は鼠径部を通して大きな裂傷と足や背中の表面に切り傷がある状態で発見された。現場から臓器は持ち去られてはいなかったが、ベッドの上に卵巣があり、これは意図的に摘出されたのか、意図せず傷口より出てきてしまったのか不明である。当時、この事件はホワイトチャペルで起きた事件と比較されたが、警視庁は最終的にいかなる関係も無いと否定した。
※この「その他の被害者とみなされているケース」の解説は、「切り裂きジャック」の解説の一部です。
「その他の被害者とみなされているケース」を含む「切り裂きジャック」の記事については、「切り裂きジャック」の概要を参照ください。
- その他の被害者とみなされているケースのページへのリンク