せきしゅうわし

伝統的工芸品

石州和紙

石州和紙

せきしゅうわし

和紙

障子紙、石州半紙、封筒、便箋（びんせん）、はがき、名刺

平安時代に書かれた「延喜式（えんぎしき）」には、石州の名が登場しています。江戸時代後期に発刊された「紙漉重宝記（かみすきちょうほうき）」によると「奈良時代、柿本人麻呂が石見の国で守護の仕事に就いていた時、民に紙漉（す）きを教えた」と記されています。 約1300年もの間、石州和紙は漉き続けられてきました。初めは副業として行われていたものが今ではほとんど専業となり、昔も今も変わらぬ技術・技法を引き続いて和紙作りが行われています。

島根県

平成元年4月11日

コウゾ紙は繊維が長く最も強靱です。ミツマタ紙は繊細で弾力があり、柔らかな艶があります。ガンピ紙は最も繊細で光沢があり虫の害に強い紙です。生産の多いコウゾ紙はかつて商人が帳簿に用い、火災のとき井戸に投げ込んで保存を図ることができたほどしっかりしています。

全国和紙産地マップ

石州和紙（せきしゅうわし）

【所在地】 島根県浜田市三隅町 【主製品】 石州半紙・石州和紙・画仙紙

石州和紙は島根県の西部（石見地方）の地域で漉かれています。歴史上、文献に石見の名が登場してくるのが『延喜式』です。その中で「中男作物に紙を四十張」と義務づけられた 42ヵ国の一つに上げられています。 しかし、寛政10年（1798）に発刊された国東治兵衛の著書『紙漉重宝記（かみすきちょうほうき）』によると「慶雲・和銅（ 704～715）の頃柿本人麻呂が石見の国の守護で民に紙漉きを教えた」と記されており、約1300年もの間、石見地方では手漉き和紙が漉き続けられ、守られてまいりました。 また、石州和紙はほとんどが一家一舟の副業であり、明治27年に6,377戸あった紙漉きは機械すき和紙の参入などにより減少し始め、昭和15年には664戸、40年には60戸となり、現在では三隅町で 6戸、桜江町で1戸、他に3戸の計10戸になってしまいました。 今日では事業形態はほとんどが専業となり、後継者も入り、昔も今も変わらぬ技術・技法を引き継いで和紙づくりが行なわれております。 石州和紙は原料にコウゾ・ミツマタ・ガンピの植物の靭皮繊維を使用し、補助材料としてネリにトロロアオイの根の粘液を使い、竹簀（たけす）や萱簀（かやす）を桁にはさんで流し漉きによりつくられます。 西田和紙工房 長見製紙所 石州半紙技術者会（会長久保田保一・会員7名）では若手後継者育成と伝統ある技術・技法の保存に積極的に努めており、また石州和紙協同組合では後継者・従事者の育成と地場産業の和紙業界の発展のために振興策を取り入れ、伝統的技術・技法のみならず新しい試みも取り入れ努力しています。 三隅町として長年の懸案であった「和紙の郷」づくり構想が平成13年頃のオープンにむけて平成8年より始動しました。この構想は、石州和紙の歴史を知ることができる和紙会館の建設を始め、全和紙製造に係わる工場の建設、ブータン王国との交流によるブータン館の建設、町民の憩いの場所としての広場など幅広く利用できるものであり、この構想にむけて三隅町では和紙に携わる人材の育成（新商品開発事業など）に積極的に取り組みがなされています。 全国的に若手の後継者や従事者の不足が叫ばれており、石州和紙でも原料の確保難と共に深刻化しつつありますが、このような施設の活用によって解消が大いに期待されます。 また和紙を通じた国際交流や国際協力に、石州半紙技術者会と石州和紙協同組合では行政と一体となって活動しています。 生産の最も多い石州半紙（楮紙）は地元で栽培された良質のコウゾを使用して漉かれ、緻密で強靭で光沢のある和紙です。かつては大坂商人が石州半紙を帳簿に使い、火災の時いち早く井戸に投げ込んで保存を図ったものです。 このように先人たちから引き継がれた技術・技法を守ることにより、石州半紙技術者会が製造している「石州半紙」が昭和44年国の重要無形文化財の指定を受けました。 また、石州半紙を代表とする石州和紙の技術・技法は、三隅町を中心に住む職人の手で一貫して保持されており、今後の総合的振興を図るために石州和紙協同組合を設立し、平成元年に「石州和紙」が通商産業大臣指定の伝統的工芸品の指定を受けました。