お座敷
お座敷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 19:51 UTC 版)
戦後しばらくまで、トップクラスの落語家はお座敷での余興を務めた。東京都内の一流料亭での酒宴に呼ばれて、落語を一席演じる。客は政界人、高級官僚、財界人、そして終戦までは高級軍人であった。一席演じ終えると、客と盃を酌み交わしたりすることもあった。 戦前から8代目文楽は6代目春風亭柳橋と並んで仕事の多さを誇っていた。毎晩、数件を掛け持ちして料亭を回った。まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」であり、出演料も飛びぬけて高かった。大学出の新入社員の初任給が2万円、ラーメンが30円、タバコが20円から40円という時代に、8代目文楽のお座敷での一回の高座のギャラが大体2万円であった。1日5〜6件回るとすると、現在の価値で日給100万円ほどと思われる。多くの落語家は噺だけでは間がもたずに踊りや珍芸などもやっていたが、8代目文楽はあくまでも落語だけを演じた。 弟子の柳家小満んは、ある文学者と話した時に師匠・8代目文楽の話題になり「桂文楽をどの寄席でご覧になりましたか」と聞くと、「君、文楽はお座敷ですよ」と言われた。料亭で飲食出来る階層の間には、8代目文楽の芸を満喫出来るのはお座敷という認識を抱いている者もいた。 座持ちの良さから依頼が多く、二つ返事で引き受けてはあちこちへ飛び回る熱心な仕事ぶりであった。一方で実は裏表が激しく、気に入らないことがあると後で怒ることも珍しくなかったという。その一端を目の当たりにした橘家圓蔵(当時は5代目月の家圓鏡)曰く「古今亭志ん生らと共に福島県の男女川へ旅講演に向かった際、仕事を終えて寿司屋で飲んでいた時に出される品物に逐一『美味しいですね』『いや結構なもので』と褒めちぎる文楽の様子を見た店主が、当地の名物であるホヤの刺身を出した。ただでさえ好き嫌いがはっきり分かれる食材の上、ホヤなどまるで知らない文楽だったが、落語の『ちりとてちん』よろしく『これが!あのホヤでございますか!いやはやこれは!まさに珍味という他ありませんな!』と絶賛し、これにすっかり感じ入った店主が文楽を食通と認める感謝状を贈った。これにも『お金では買えないものをいただき何とお礼を述べて良いやら』と上機嫌そうに言い、店を去った」、しかし「しばらく後、東京行きの夜行列車を待っていた頃に圓蔵が『師匠、これ(感謝状)はいがかいたしましょう?』と尋ねると即座に『そんなモンうっちゃっちまいな!』と激憤した」と振り返り、『ヨイショの圓鏡』の異名を取った圓蔵ですら、本音と建前の落差に唖然とさせられたという。
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「お座敷」の例文・使い方・用例・文例
- 例[おはこ]のお座敷芸を見せる.
- 明日も塞がっているのか, こんなにたくさんお座敷がかかるんじゃとてもやり切れない.
- 僕はお座敷でやるような隠し芸は知らないんです.
- 彼女は京都では一番の売れっ子芸妓の一人で, 一晩に 2,3 度はお座敷がかかる.
- お座敷でご用
- お座敷がかかる
- お座敷を受ける
- お座敷を断る
- 姐さんはお座敷です
- 姐さん、お座敷ですよ
- お座敷へ出る
- 姐さんは近頃お座敷へ出ません
- 姐さんはお座敷がうまい
- お座敷着
- お座敷の都合でここでご辛抱を願います
- 芸者がお座敷を断る
- お座敷さむらい
- お座敷を取り換えましょう
- このお座敷は約束済みになっております
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