「構想画」をめざしてとは? わかりやすく解説

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「構想画」をめざして

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 15:28 UTC 版)

黒田清輝」の記事における「「構想画」をめざして」の解説

裸体画大作である『朝妝』(焼失)は、黒田パリを去る直前1893年制作された。本作品はパリのサロン・ナショナル・デ・ボザールに出品して好評を得、日本では1894年第6回明治美術会出品された。しかし、翌1895年第4回内国勧業博覧会京都)ではこの作品出展可否めぐって論争となり、社会的問題にまで発展した当時日本では本作のような裸体画芸術ではなく猥褻物であるという認識があったのである滞欧から帰国後の黒田その周辺画家たちは「新派」と呼ばれそれ以前の、明治初期以来洋画家たちは「旧派」と呼ばれた。あるいは、前者を、陰影を黒でなく紫で描くところから紫派」、後者を「脂(やに)派」と呼んだりもした。しかし、黒田自身はこうした新派」「旧派」といったレッテル貼りには批判的であった黒田1903年次のように述べている。 わが洋画家近来作品実見しかつ其挙動を窺がうのにイヤ紫がどうだとか、或いは黒ッぽいの白ッぽいのとわけも無く騒ぎ廻って、その色の如何によつて彼は新派なり、渠(かれ)は旧派なりなどとの名称を下してゐるが、僕などは斯んな解らない馬鹿げた話は無いと思つてゐる。(中略畢竟新派と号づけられ、旧派称せられるも或る物を捉へて或る物を現はさんとする手段方法用具に基いて命名されたもの、即ち形式上甲乙に過ぎないのである。(中略外形装飾せんが為めの色の遣ひ方のみに気を揉んで、其画の根蒂たる精神と云ふ事に就て余り深く顧る者の多からぬのは、僕等大いに憂ひとする所である。(「日本現今油画に就て」『美術新報1巻23号1903年2月20日黒田のいう「画の根蒂たる精神」とは、作画根本存在すべき思想的骨格を指す。黒田は、絵画単なるスケッチではなく確固たる構想備えたコンポジション構想画)でなければならない考えており、こうした構想重要性こそが、黒田西洋絵画から学び日本移植しようと努めたのだった黒田帰国後の作品である『昔語り』(1898年焼失はこうした構想画への取り組み一つであり、『智・感・情』(1899年)は、女性裸体像を用いて抽象的な概念表した寓意画である。しかしながらこうした構想画は日本土壌にはなかなか根付かなかった。美術史家高階秀爾は、黒田自身の作品においても『昔語り』『智・感・情』あたりを最後として、構想画への試み挫折し、自然なスケッチ風の画風回帰していったことを指摘している。いずれも黒田代表作である『智・感・情』と『湖畔』はともに1897年第2回白馬出品作であるが、前者が無背景の地に理想化され女性像描いた寓意画であるのに対し後者夫人モデルにしたスケッチから出発した作品そのまま完成になっている。両作品はともに1900年のパリ万国博覧会出品されたが(『智・感・情』は1899年加筆)、博覧会銀牌得たのは構想画である『智・感・情』の方だった次に引用する黒田自身言葉みられるように、画家本人晩年至っても「スケッチ」と「画」とを明確に区別しスケッチ」の域を脱して「画」を描きたい願っていた。 私の欲を言へば、一体にも少しスケッチの域を脱して、画と云ふものになる様に進みたい思ふ。(中略)どうしても此のスケッチ時代脱しなければならん。今の処ではスケッチだから、心持が現はれて居るが、スケッチでない画にも、心持充分に現し得る程度進みたい。私自身今迄殆どスケッチだけしか拵へていない。之から画を拵へたいと思ふ。(『美術創刊号1916年

※この「「構想画」をめざして」の解説は、「黒田清輝」の解説の一部です。
「「構想画」をめざして」を含む「黒田清輝」の記事については、「黒田清輝」の概要を参照ください。

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