「柘榴の花」と「月の微笑」の物語(第526夜 - 第549夜)
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「「柘榴の花」と「月の微笑」の物語(第526夜 - 第549夜)」の解説
バートン版「海から生まれたジュルナールとその子のペルシャ王バドル・バシム(第738夜‐第756夜)」 東洋文庫版「ホラサーンのシャフルマーン王の物語(第738夜‐第756夜)」 昔、ホラーサーンの海に面した王都「白い都」にシャハラマーンという王がいた。ある日、奴隷商人が得も言われぬ美しい乙女を献上したので、王は1万ディナールで買い受け、1年間その乙女のみと過ごしたが、乙女は一言も話さなかった。ある日、王がいつものように乙女を喜ばせ、話させようとしていると、ついに乙女が言葉を発し、王の子を身ごもったと話した。王は大いに喜んだ。 乙女の名はグル・イ・アナール「柘榴の花」といい、海中の国の王女で、母は海の女王「いなご」陛下で、兄はサーリハ王子であったが、ある日、「柘榴の花」は「いなご」陛下とサーリハ王子とささいなことで喧嘩してしまい、海の宮殿を出て陸上で寝ていたところ、男に捕まって、奴隷商人に2000ディナールで売られ、その奴隷商人から王が買ったのであったが、奴隷とされた悔しさから一言もしゃべらなかったが、王の愛を確信し、身ごもったので言葉を発したのであった。 「柘榴の花」がコモール島の伽羅木を香炉に入れ口笛を吹いて呪文を唱えると、海の中からサーリハ王子と「いなご」女王と5人の「柘榴の花」の従兄弟が現れ、飛び上がり、窓から王宮の部屋に入って来た。「柘榴の花」たちは互いの再会を喜び、シャハラマーン王は客人を歓待した。 ほどなく「柘榴の花」は美しい男の子を産み、男の子は「月の微笑」と名づけられた。サーリハ王子は「月の微笑」を抱いて海の中に飛び込み、水中でも息ができ、服も濡れない力を与えた。「月の微笑」はすばらしい少年に成長したが、14歳の時、父王シャハラマーンが亡くなり、王に即位した。 「月の微笑」が17歳になったある日、「月の微笑」が長椅子で横になっていると、眠っていると思ったサーリハ王子と「柘榴の花」は「月の微笑」に相応しい結婚相手の話をし始め、海の国のサラマンドル王の娘の宝玉姫が最も美しく相応しいが、父であるサラマンドル王が反対するだろうと話し合っていた。「月の微笑」は、最も美しいという宝玉姫を恋しく思い、伯父のサーリハ王子に仲介を頼むが、サーリハ王子は迷いながらも引き受け、「月の微笑」を連れて「いなご」女王の宮殿まで行った。 サーリハ王子は「月の微笑」を宮殿に残し、サラマンドル王の所へ行き、宝玉姫と「月の微笑」の結婚を願い出るが、サラマンドル王は断り、サーリハ王子のお供と、サラマンドル王の兵士の間で戦争が始まってしまった。戦いに驚いた宝玉姫は、お気に入りの女奴隷天人花を連れてある無人島に逃げた。一方、「いなご」女王の宮殿の「月の微笑」は、自分の為に戦争が始まったことに困り、「柘榴の花」のところに帰ろうとしたが、道に迷い、宝玉姫が逃れた無人島に着いた。戦いはサーリハ王子の大活躍で、サーリハ王子の勝利となり、サラマンドル王は捕らえられてしまった。 宝玉姫に会った「月の微笑」は愛を告白するが、宝玉姫は王の宮殿に攻め込んで来たことの仕返しに、魔法で「月の微笑」を美しい鳥に変え、女奴隷天人花に命じて水のない無人島に捨てさせようとしたが、天人花は「月の微笑」をかわいそうに思い、別の無人島に捨てた。無人島に捨てられた「月の微笑」の鳥は鳥網打ちに捕まり、鳥網打ちからその土地の王に売られたが、王の妃が鳥の正体に気付き、魔法を解いてくれた。王は「月の微笑」に帰国するための船を与えた。 しかし、「月の微笑」の乗った船は嵐のため沈没し、「月の微笑」だけがある島にたどり着いた。その島には多くの騾馬と驢馬がいて、悲しそうに「月の微笑」に島から出て行くように仕草で示していた。「月の微笑」は町の入り口の薬種商の老人アブデルラハマーンから、騾馬と驢馬たちはアルマナク女王に魔法を掛けられた若者であることを教えてもらった。そこにアルマナク女王が現れ、「月の微笑」に魔法を掛けないと約束して宮殿に連れて行った。アルマナク女王は巧みな愛撫で「月の微笑」を悦ばせ、2人は40日間快楽を尽くした。40日目の夜「月の微笑」がふと目を覚ますと、アルマナク女王が不思議なお菓子を作っていたので、気付かれないよう眠った振りをし、翌朝早くアブデルラハマーン老人ところへ行くと、その菓子は人を騾馬や驢馬に変える魔法の菓子で絶対食べてはいけないと教えてもらい、同じ菓子をもらって宮殿に帰った。宮殿ではアルマナク女王がお菓子を勧めて来たので、食べた振りをし、アブデルラハマーン老人からもらったお菓子をアルマナク女王に食べさせ、アルマナク女王が言った呪文をオウム返しに言うと、アルマナク女王は牝驢馬になった。「月の微笑」はアルマナク女王の牝驢馬をアブデルラハマーン老人に渡した。アブデルラハマーン老人は魔神「電光」を呼び出し、「月の微笑」を「白い都」まで送った。 「白い都」に戻った「月の微笑」は、母「柘榴の花」との再会を喜び、アッラーに感謝した。「月の微笑」はサラマンドル王を自由にし、宝玉姫との結婚を願い出て許可を得た。サラマンドル王は、宝玉姫が隠れている無人島に人を遣り宝玉姫を連れ帰らせると、宝玉姫も「月の微笑」との結婚に同意した。2人は結婚し、幸せに暮らした。
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