「サスペンスの女王」としての活躍
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「松尾嘉代」の記事における「「サスペンスの女王」としての活躍」の解説
1970年代末以降の、おもに2時間ドラマにおいて活躍。1980年代から1990年代前半において「サスペンスの女王」と呼ばれ、聖女・悪女・娼婦・悲運の女・コメディエンヌと、ありとあらゆる役柄を自在に演じた。また、濃厚な官能的シーンを演じたことで人気を得た。中にはドラマの脚本・演出は凡庸であっても、松尾の演技でドラマが底上げされたとドラマも見られた。 中でもテレビ朝日の名物番組「土曜ワイド劇場」における「女たちの華麗な闘い」シリーズでの熱演は視聴者に強い印象を残した。このシリーズでは、松尾嘉代演じるヒロインが自分の欲望をみたすために、陰謀をめぐらして他人を欺き、時には肉体を利用してのし上がり、ライバルを蹴落とした時には高らかな哄笑を上げて相手を嘲笑う悪女を演じるピカレスク・ロマン(悪漢譚)がたびたび展開された。 松尾嘉代の「女たちの華麗な闘い」シリーズは、一般的に1983年の『エアロビクス殺人事件 女の変身美容教室 “シェイプアップ!』(1983年)から始まったものとして考えられている。『野獣死すべし』(1959年)などのクールなピカレスク・ロマン映画の脚本家として知られる須川栄三のオリジナル・シナリオに基づく犯罪サスペンスであり、松尾嘉代演じるヒロインがスポーツクラブの経営権をめぐる争いの中でみずから謀略や殺人に手を染め、最期は破滅していく物語である。『エアロビクス殺人事件』は松尾嘉代を初めとした出演陣の濃厚な演技と猟奇的な演出によって、現在でも土曜ワイド劇場の名作ドラマとして知られている。このドラマのストーリー・ラインをもとにして、同様に松尾嘉代が野心的な悪女を演じるシリーズが土曜ワイド劇場において次々に制作された。 正式な「女たちの華麗な闘い」シリーズからは外れるが、このシリーズの一本として数えられることも多い土曜ワイド劇場の傑作ドラマとして、『女相続人の華やかな斗い! 看護婦が仕組んだ注射殺人 “婚姻届は知っている…”』(1985年)が挙げられる。「悪女描きのアルレー」と異名を取ったフランスの女流スリラー作家カトリーヌ・アルレーの小説「二千万ドルと鰯一匹」のドラマ化作品であり、松尾嘉代が演じる看護婦は夏木マリ演じる資産家の夫人から、財産横領のために患者を病死に偽装して毒殺する計画を持ちかけられる。 その他、土曜ワイド劇場における名作として名高い濱尾四郎原作の『昭和7年の血縁殺人鬼・呪われた流氷』(1981年)における、妖艶な貴婦人の仮面の下におそるべき狂気を秘めた若宮夫人の怪演は語り継がれている。 悪女役に定評のあった女優だがそればかりではなく、コメディにおいても適性を示した点において真の名女優であった。土曜ワイド劇場で放送された佐野洋原作の「密会の宿」シリーズでは、コミカルな持ち味の女探偵役を演じてコメディエンヌぶりを魅力たっぷりに披露し、視聴者の好評に応えて8本のシリーズが製作された。
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