「サケ・マス論」の提唱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 01:24 UTC 版)
サケ・マス論は、山内が提唱した縄文時代の生業の一形態である。山内は、アメリカのカリフォルニア沿岸のインディアンに、ドングリとマスを貯蔵して生活する集団がいることに注目し、1947年頃から、東日本と西日本のサケ・マス類の漁獲量の違いを根拠に、西日本においてはドングリによる生業しか成り立たず、一方の東日本にはドングリに加えてサケ・マスを漁獲して保存することができたために、食料に余裕が発生したと主張して、東日本の縄文時代の遺跡が西日本よりも格段に多い理由をサケ・マス論に求めた。その根拠として、近世までアイヌが河川でのサケ漁を行なっていたことを挙げ、また貝塚からのサケ骨の出土量が少ないのは、骨ごと粉末にする保存法があったからだとした。 このサケ・マス論は当時学会で話題を呼び、民俗例や漁獲統計からの積極的な肯定や、サケ骨の出土や粉末保存の例の欠如からの否定が交錯した。さらに、山内は「東日本」としか述べていないにもかかわらず、縄文晩期や円筒土器文化圏という地域の限定も発生した。その後も、東日本は針葉樹林帯であり、照葉樹林帯が中心のドングリ生業が成り立たず「非実証的」という批判がある一方で、動物考古学の観点や欧米漁労民の例から、燻製などの特殊な保存法なら魚骨の欠如は説明できるといった肯定論があり、現在でも明確な結論は出ていない。
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