「コロニア語」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 03:02 UTC 版)
日本語で基礎教育を受け、日常生活において日本語を中心に話す日本人移民1世と、ポルトガル語で基礎教育を受け、ポルトガル語を中心に話す日系ブラジル人2世や3世(とそれ以降の世代)との間のコミュニケーション手段として、日本語とポルトガル語を織り交ぜた「コロニア語」が、ブラジルの日本人社会で広く使用されるようになった。ある種の表現は旧来の日本語とかなり異なっている。また、日本で死語となった単語の一部が使用され続けている。例としてすでに廃止されたブラジル政治公安警察は「特高」と訳されていた。また、バス、トラックという表現は用いられず、ポルトガル語風にオニブス、カミニョンと呼ばれる。 「コロニア語」は、日本人移民1世世代の減少や日系ブラジル人のブラジル社会への同化が進んだ現在においても、日系ブラジル人社会に深く根付いており、さらに、日系ブラジル人の日本への「出稼ぎ」の増加(詳細は後述)を受けて、新たなボキャブラリーが追加されるなど、新たな進化を見せている。反面、在日ブラジル人の間で話される日本特有のポルトガル語も生まれつつある。ポルトガル語の日本方言とでも呼ぶべきであろうか[独自研究?]。 コロニア語の例。 「コントラットはせんとじゃが人手の足らんけんポル・ジア、三十ミル・バーガスしてコミーダもカマもこっちゃ持ち、仕事はトマテのマタ・ビッショくらいのことじゃ、ボン・ネゴシオじゃにセマーナもたたんうちにもうマンダ・エンボーラ言いよる。大方ポル・ジアもろたらまたよそへ行って同じこと稼ぐんじゃろ。エウ・ノン・テン・ジネロ」 (契約はしないのだが人手が足りないから日給30千バーガスして食事も寝どこもこっち持ち、仕事はトマトの殺虫くらいのことだ、うまい話なのに、一週間もたたないうちにもう辞めると言ってくる。大方日給もらったらまたよそへ行って同じように稼ぐんだろう。うちに金はないよ。)ここで用いられている「ミル・バーガス」という単位は、かなり過去の表現である。 日本語を母語として習得し教育を受けたのちに、ブラジルに渡った(準)一世が発話者であると考えられる。コントラット(contrato)やコミーダ(comida)など単一の名詞の借用が多いが、ポル・ジア(por dia前置詞+名詞)やマタ・ビッショ(mata bicho 動詞+名詞)などのように、耳にすることが多かったと思われるようなフレーズがそのまま名詞として用いられているものもある。このような名詞を日本語の文法にあてはめることは、コロニア語の重要な特徴である。最後のエウ・ノン・テン・ジネロ(eu não tem dinheiro主格+否定+動詞+名詞)は、一人称単数の動作主に対し三人称単数の活用が動詞になされていることと(文法が間違っているがコロニア語ではしばしば用いられる)、ポルトガル語では[di'ηeiru]である音韻も「ジネロ」と表記されているように日本語の音韻が適用されている。例えば「ミル」、「トマテ」、「カマ」、「ビッショ」、「ネゴシオ」、「ドトール」などはブラジル日系社会独特の発音で、一般的なブラジルのポルトガル語をカタカナ表現するとそれぞれ「ミウ」、「トマーチ」、「カーマ」、「ビショ」、「ネゴスィオ」、「ドウトール」に近い。日本にあるコーヒーチェーン店の名称は、創始者がブラジル一般社会ではなく、日系社会の影響を強く受けていることを暗示する。 コロニア語の特異な語彙の一つに「ハイコー」という言葉がある。一般日本人にはわかりにくいが日系ブラジル人にはよく使われる。「ハイコー」とは漢字で「配耕」と書き、ポルトガル語の「Distribuição」を訳したコロニア語で、ブラジルにやってきた新入移民を入植地に分配する意味である。現在では日本に来た新入ブラジル人が派遣会社により各地の会社に派遣されることを「ハイコー」と呼ぶ。 また、コロニア語においてはブラジルの地名等を日本ではあまり用いられない漢字表記で表すことが多々ある。(例:ブラジル国=伯国、サンパウロ市=聖市、リオグランデ・ド・スル州=南大河州、日本ブラジル=日伯) 「ハポニョール」も参照
※この「「コロニア語」」の解説は、「日系ブラジル人」の解説の一部です。
「「コロニア語」」を含む「日系ブラジル人」の記事については、「日系ブラジル人」の概要を参照ください。
- 「コロニア語」のページへのリンク