#ThisIsACoup
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/11 08:47 UTC 版)
「ギリシャのユーロ圏離脱」の記事における「#ThisIsACoup」の解説
ECBがギリシャに課した懲罰的な流動性供給制限でギリシャ国内銀行が業務停止し、ギリシャ国民がATMから引き出せる額の上限は1日60ユーロまでとなっていた。ユーロ圏の首脳らが、ギリシャ国民投票において、緊縮財政政策に反対する側への投票は実質的なユーロ圏離脱であると脅していた。そのような状況下にあってもギリシャ国民は緊縮に反対する側に投票した。国民投票で反緊縮側が多数となった事実からも、その後のチプラスとEUの対立がさらに激化するとみられていた。しかしチプラスは降参し、EUがギリシャに要求する賃金カットや増税といった財政引き締め政策を容認する方向に転換した。 チプラスが金銭支援を求めEUに白旗をあげたことが明らかになる頃には、シンタグマ広場にギリシャの労働組合の旗をもったデモ参加者が集結していた。デモ参加者はチプラスのとった180度回転を非難した。 チプラスの降伏に懐疑的だったヴォルフガング・ショイブレやメルケルらは、チプラスが後になってEU案を骨抜きにするのではないかと考えていた。そこでドイツ政府はギリシャの忠誠度をみるためにギリシャに更なる要求を突きつけた。チプラスとメルケルの間の長い交渉の焦点となったのは、500億ユーロ相当のギリシャ国有資産を売却民営化して諸外国に開放せよとEUとドイツが提示した案をチプラスが承諾するかどうかだった。チプラスに突きつけられたこの最後通告に呼応する形で、バルセロナで数学と物理学の教師をしている人物がソーシャルメディア上で、ユーログループ案はギリシャへの水面下でのクーデターだと述べた。これは#ThisIsACoup(これはクーデターだ)というタグとなり、瞬く間にソーシャルメディアにおいてドイツを非難する大きな動きとなった。米国でもポール・クルーグマンがこのソーシャルメディア上での動きに賛同し、ユーログループの提示した要求リストは狂気であり、厳しいというレベルを通り越して国家主権を完全に破壊するものであるとEUを非難した。 実際にはショイブレの提示した選択肢にはチプラスの降伏以外に一時的なグレグジットも含まれていた。例えば5年程度ギリシャをユーロ圏から離脱させて、ギリシャの回復を待った後に再度ギリシャをユーロ圏へ入れる検討をするというものである。だがこの案は十分に検討されず、17時間をこえる長い交渉を終えて、チプラスはユーログループに降伏しEU案を承諾した。これにより500億ユーロ相当のギリシャ国有資産は、EUが管理するファンドに移転させられる。バルファキスは、ユーログループの案は現代のベルサイユ条約だと述べた。 ギリシャはGDPの2%分の財政緊縮を2016年に行うことを余儀なくされ、すでに失業率が25%のギリシャ経済はデット・デフレーションに陥り、大不況6年目に突入することは想像に難くない。景気が悪いときには失業者が増加し、政府が給付する生活保護費や失業手当、フードスタンプなどの額が増える。また企業の売上や労働者の所得が低下するために法人税収、所得税収が落ち込む。自動的に財政は多かれ少なかれ悪化する。この意味で財政悪化は不況の反映である。不況の際に財政再建に舵をきれば不況が悪化する。そしてGDPが縮小するため結果的に債務対GDP比が上昇してしまう。歳出削減など財政再建策を施行し、そして財政は悪化するのである。 チプラスは緊縮財政を施行するにあたり、いくつかの関連法案を成立させるようEUから指示を受けた。2015年1月の選挙では反緊縮を掲げて選挙に勝利したSyrizaだけに、チプラスら親ユーロ派がEUとの交渉から持ち帰った案を受け入れるのは難しく、Syriza内のいくらかの議員はこの関連法案に反対をすると考えられている。ギリシャ議会300議席のうち連立与党は162議席を占め、Syrizaの議員のいくらかが反対票を投じれば過半数に届かない。だが新民主主義党や全ギリシャ社会主義運動などの主要野党がEU案に賛成であるため、野党の支持を得て関連法案が成立すると見られている。チプラスは内閣改造を行って関連法案成立に向かってつき進むと見られている。 2015年12月上旬、チプラス政権は政府支出削減や増税といった緊縮財政政策を中心とする2016年の予算をギリシャ議会で承認させた。賛成153反対145の僅差だった。反対票を投じた議員らは、その予算案が反成長・社会的不公平だとして批判していた。その予算によって57億ユーロ相当の政府支出が削減される。この緊縮方針にもかかわらずギリシャ政府債務は対GDP比で180.2%(2015年度)から187.8%(2016年度)に上昇すると予測されている。
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