自動車運搬船 自動車運搬船の概要

自動車運搬船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/25 09:58 UTC 版)

自動車運搬船 レア・リーダー(RHEA LEADER)
(63,004総トン)

概要

船内に複層の車両甲板を持ち各種自動車を積載できるという点ではフェリーと同じだが、商取引を目的とした自動車を大量に航送する目的で造られているため、フェリーとは構造が異なる。

一般的な貨物船との大きな違いは、積載し輸送する貨物(自動車)が自走して積み込まれ、また荷降ろしされることで、港湾での作業に使うためのクレーンを備えず、船内は自動車を最大限積載するために各層の天井高が各種自動車に合わせた必要最小限の高さに設計されている。

歴史

二国間で、船を使った自動車の輸出入を行う際には、他の貨物と混送させることが一般的であった。しかし、1960年代日本の自動車生産が活発になると、車体に傷が付かないような積載方法が求められる自動車は船舶会社から敬遠されるようになり、自動車輸送に特化した船が構想されるようになった。

1950年代、アメリカ五大湖にむかう西欧の鉄鉱石船が往航の空船を利用し自動車を運ぶようになり、1953年にばら積み船の倉内に自動車運搬のための取外し式甲板を持つ最初の改造自動車兼ばら積み船「Jakarta」が就航、55年にはスウェーデンのワレニウス社により新造自動車兼ばら積み船「Rigoletto」「Traviata」が就航し、70年代にかけて自動車兼ばら積み船の大型化が図られた[1]。1950年代から60年代初頭にかけてはクレーンを用いたLO-LO方式で自動車輸入が行われていたが、重ね積みができず倉内で多くのスペースを占有し傷つきやすくてクレームが多く運賃が安いなど歓迎されざる貨物であったため[1]、1960年代には荷役が早く自動車を傷つけることのないRO-RO方式による自動車運搬船の開発がすすめられ1963年にワレニウス社がLo-Lo荷役設備を備えながらRO-RO方式を採用した「Aniara」を建造、1964年にはノルウェーのディヴィ社によりRO-RO方式の自動車専用船「DYVI Anglia」を建造[1]。しかしながらRO-RO型の自動車専用船は自動車運搬以外への転用が利かないため、70年代まではリスク回避のため自動車兼ばら積み船が並行して整備された[1]

日本では一部でLo-Lo方式の一般貨物船での自動車輸送が行われていたが積載台数が少なく非効率だったため陸上輸送が主だったが、自動車の生産増加と都市の交通事情の悪化や地方道路整備の進まないことから遠隔地への自動車の陸上輸送が困難となったのを受け、1962年に大同海運により世界で初めてRO-RO方式を採用した沿海自動車専用船「東朝丸」を建造[1]。その後自動車輸出の増加に伴い、対米輸出に力を入れていた日産自動車1965年大阪商船三井船舶と共同で海外の自動車運搬船を研究し、日本-アメリカ合衆国航路用にRO-RO方式を取り入れた外航自動車兼ばら積み船「追浜丸(おっぱままる)」を建造[1]。乗用車換算で1,200台積みの積載能力を誇った[1]。その後も日産自動車は、「追浜丸」と同型の「座間丸」などを建造。トヨタ自動車1968年に「第一とよた丸」(川崎汽船運航)を建造して自動車運搬船の利用に踏み切った[1]

しかしながら自動車兼ばら積み船は復航の集荷が予定通りにできずに計画通りの出荷に支障を及ぼしたり、ばら積みの貨物の残渣が自動車に降りかかり塗装を傷めるといったデメリットがあり、自動車専用船の必要性が求められるようになった[1]。そして1970年に日本初のRO-RO式の外航自動車専用船(PCC、Pure Car Carrier)「第十とよた丸」が建造された[1]。その後1980年代にはCKD輸出や自動車部品用のコンテナにも対応した多目的自動車輸送船も登場した[1]

自動車運搬船は、効率性を求めるため次第に巨大化する傾向にある。21世紀初頭に建造された自動車運搬船として、2008年南日本造船が建造したスワンエース、同型船スウィフトエースを例に取れば、約58,600総トンの規模で、1回あたりの積載能力は12層の甲板で6,400台に達している。

低い安全性

船体重量と比較して、喫水が高く、横風の影響を受けやすい。重心の調節のためにバラスト水を注排水するが、それでも台風などによって流されて座礁などの海難事故を起こしやすい。車両積載デッキは、一つの大きな空間となっており、ここに浸水すると沈没を避ける手段がなく、浸水に対しても弱い構造となっている。以下に具体的な数件の事例を挙げる。

  • フアル ヨーロッパ - 台風の暴風雨に流され、伊豆諸島大島に座礁。のちに炎上。
  • クーガー・エース - バラスト水の注入不足により転覆
  • ホーグ・オーサカ(Hoegh Osaka) - 航行中、転覆の危険が生じ、意図的に浅瀬に座礁。
  • バルティック・エース - ロッテルダム港沖合いで、貨物船と衝突して沈没
  • 麗神 - 座礁して廃船。深海に海没処分となる。



  1. ^ a b c d e f g h i j k 進水記念絵葉書に見る自動車運搬船の発達 硴崎貞雄 (PDF)”. 日本船舶海洋工学会関西支部 造船資料保存委員会. 2016年3月16日閲覧。


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