マツダ・ロードスター
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初代 NA系(1989年-1998年)
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ユーノス・ロードスター(初代) NA6CE/NA8C型 | |
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トヨタ博物館クルマ館に 展示されているNA6CE型 | |
内装 | |
概要 | |
販売期間 | 1989年9月 - 1998年1月[7] |
ボディ | |
乗車定員 | 2名 |
ボディタイプ | 2ドア オープン |
エンジン位置 | フロント |
駆動方式 | 後輪駆動 |
パワートレイン | |
エンジン |
B6-ZE型 1,597cc 直4 DOHC BP-ZE型 1,839cc 直4 DOHC ベルト駆動 |
最高出力 |
B6-ZE型 120ps/6,500rpm BP-ZE型 130ps/6,500rpm |
最大トルク |
B6-ZE型 14.0kgf・m/5,500rpm BP-ZE型 16.0kgf・m/4,500rpm |
変速機 | 4速AT/5速MT |
サスペンション | |
前 | ダブルウィッシュボーン式 |
後 | ダブルウィッシュボーン式 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,265mm |
全長 | 3,970mm |
全幅 | 1,675mm |
全高 | 1,235mm |
車両重量 |
NA6CE型MT 940-960kg |
その他 | |
生産台数 | 43万1506台[8] |
プロダクトデザインは田中俊治、俣野努、中島美樹夫ら数名の手によるものである。量産決定に伴い、開発主査には平井敏彦が就任。後に平井の退職に伴い、サスペンション開発の担当であった貴島孝雄が主査を引き継いだ。
開発の発端[9]は、マツダが北米に「プラン・アンド・リサーチ」というスタジオを設け、俣野が実寸大のクレイモデルを作り始めた頃[10]、スタッフ数名が空港に向かう車中で「MGのようなライトウェイトカーがあれば」と話したこととされている。その後、このスタジオはアーヴァインR&Dセンター(のちのMAZDA RESEARCH of AMERICA。以下MRA)として機能することになる。
この意見を元に、当時MRAに在籍していた福田成徳[11]らがデザインコンセプトをまとめた[10]。デザインコンセプトは有志の手によって具体化が進められ、FA4型ファミリアのコンポーネンツを使用し、英・I.A.D社で試作車が製作された。この試作車はプロジェクトV705号というニックネームで呼ばれ、車体色が赤色であったことやフロントボンネットの造形がボリューム感あるものであったため、福田らスタッフからは「りんごちゃん」と呼ばれていた。
この試作車を使用してイギリス、アメリカで実際に走行試験が行われた。この走行試験は本社の一般の人の反応を見てプロジェクトの可否を決定したいという意向によるものであった。走行試験中、偶然それを見かけた市民が試作車を追いかけてきて、「代金はいくらでも払うから譲ってほしい」と言われることも珍しくなく、民家の庭に逃げ込ませてもらうこともしばしばであった。こうした市中の好意的反応によりプロジェクトの続行が決定され、開発コードは「P729」とされた。今でもこの試作車はマツダ社内に保管されており、2009年夏に20周年イベントのプレイベントにて展示公開された。
その後も開発は、日本国内の本社工場デザイン棟西側に隣接する車両保管棟、通称「リバーサイドホテル」と称される建物の5階で有志により継続された[注釈 2]。もとは車両保管棟であったため、室内にはガードレールが設置されていたが、開発室とするにあたりそれらを撤去したり、トイレを設置したりと幾分かの改善が施され、設計用ドラフター等が搬入された[13][出典無効]。その後、有志によって「ライトウェイトオープン スポーツ」の存在が社内でプレゼンされ、正式開発の指示の下、正式開発ラインに初めて乗ることになる。当時、マツダのデザイン拠点は広島本社とは別に前述のMRAの他、横浜にあるデザイン本部(MRY)、そしてヨーロッパ(MRE)にも展開されており、これら3拠点で練られたデザインが広島本社に持ち寄られ、最終的なデザインの方向性が決められた。主となるデザインはMRA提案であったが、後の開発過程で贅肉をそぎ落としていくことになる。
開発に当たってのキーワードは「人馬一体[注釈 3]」とされた。「人車一体」は開発にあたって田中がまとめた「J58G コンセプトシナリオ」に記されている。そのシナリオには「デザインフィロソフィ”ときめきの世界の創造”」と「発想の原点”もっと楽しいワクワクドキドキする車を作りたい。そんな車が欲しい”」が融合して生まれたデザインコンセプト『Swinging Time Machine』、造形テーマ『ひびきときらめき』が提唱されている[14][出典無効][15]。なお当時のデザインコンセプトは「ときめき[16]」である[注釈 4]。
デザインモチーフには「日本の伝統」を記号化したものが多く用いられた[17]。前述のデザインフィロソフィから生まれた日本の伝統美を具現化する「感性のデザイン」である[14][出典無効]。フロントマスクは、能面のひとつである「小面」、ボンネット部分で盛り上がり、サイドウィンドウに沿ってなだらかに下がって再び盛り上がるサイドのラインは、同じく能面のひとつである「若女」を横から見た姿にインスパイアされている。これらは令室が手掛ける能面を見た田中が日本の伝統美を感じたからであり、実物の能面は今も田中の自宅に飾られている。そして車体の曲面は光の映り込みまで計算されている。シート表面のパターンは畳表の模様、リアコンビランプは江戸時代の両替商が使った分銅の形をデザインしている。独特の形状のアウタードアハンドルは、あえて従来のものとは一線を画すようにデザインされた。これは、日本の茶室の「くぐり戸」から入る際の緊張感と同列の感覚をロードスターの運転を前に感じて欲しいという、開発者からのメッセージでもある。
ヘッドライトにはリトラクタブル・ヘッドライトを採用。ヘッドライトベゼルの曲面形状は俣野の提唱によるものであり、オプション設定されるハードトップのリヤウインドウ形状もR360クーペのアイデンティティを汲むものとして同時に彼が提唱している[18]。
リアコンビネーションランプは、デザイン性と機能性の両立を評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示・永久収蔵されている[19][18]。なお、スペースの都合で車両自体の展示が出来ず、ロードスターのアイコンとして田中が提示したのがこのパーツであった。
量産モデル決定後、他の市販車ではあり得ない約1年半という期間で市場にデビューすることになる。量産開発コードは”J58G”とされた。また短期間で市場に投入するため既存車両の部品流用も多く、2代目AA系キャロルのサイドウインカー、3代目E8/F8系ボンゴの灰皿等が採用されている。灰皿のシボ模様はロードスターの室内樹脂部品のシボ模様と異なるが構成部品として採用された。日本仕様車のフロントバンパー中央に取り付けられるエンブレムは田中がデザインを進めていたが、ユーノスチャンネルでの販売を受けてユーノスブランドマークの”Vマーク”に変更された[14][出典無効]。
NA6CEのスピードメーターおよびタコメーターの縁取りは光沢シルバー仕上げであるが、量産直前に田中が高級感のあるメーターにしたくて中島と検討して決めたものであり、塗装ではなくコストのかかるホットスタンプ工法を採用している。
足回りは当時同クラスでは既に珍しくなっていたFRが採用された。これは当時他社で発売されていたライトウェイト車との差別化もあり、ホンダが前輪駆動のCR-X、トヨタがミッドシップのMR2をそれぞれ開発しており、FR車が存在していなかった背景もある。
エアインテーク経路やエキゾーストマニホールドの設計はパワートレイン担当チーフの横倉恒利が担当し、エキゾーストパイプの集合部分の設計に自身所有のバイク(ホンダ・ドリームCB400FOUR)を参考にした。各シリンダーからの配管が1本に集約される部分の強度確保が難しく、検討を重ねて製品化に辿り着いた[20][出典無効]。また、マフラーの音色にもこだわりの開発を重ね、低周波から高周波の音圧レベルを種々組み合わせて官能評価を行い、その結果を周波数分析により物理量への置き換えを行った[21]。そしてトラックの荷台に積みきれない位の試作品の中から量産品を決定した[20][出典無効]。
エンジンのカムカバーは当初からファミリア用の物を使用することになっていたが、エンジンレイアウトがファミリアの前傾10°の横置きFF用から縦置きに変更される事によるオイルミスト分離容積確保の為ブローバイガス導入口と、気液分離後のオイルリターン配置が異なる物となる為、量産出図直前になって専用部品化が決定。急遽パワートレイン担当者がデザイン本部に依頼し、一夜でデザインが行われた。ちなみにエンジンカムカバーの文字はNA6CEは凹形状、後に発売されるNA8CEは凸形状であるが、これは部品間違いを防ぎたい生産現場からの要望に応えたものである[22][出典無効][23][出典無効]。
レイアウト開発には当時としては先進的な内製3次元CADソフト「GNC2」が導入され、金丸幸広を中心に開発が進められた。「GNC2」はそれまでの2次元図面では表現しづらかった細部も表現できる反面、表現するデータが多くなり、操作にはかなりの苦労が伴った[24][出典無効][25][出典無効]。
ソフトトップの開発は西口定が担当。ロードスターとしてソフトトップを成立させるためにはベルトラインよりも下側に幌生地の付いた幌骨を収める構造にする必要があり、リンク形状の設計が繰り返し行われた。これはチーフデザイナーの田中からの要望でもあった。従来他車のソフトトップのリヤ側取り付け位置はベルトライン位置にあったため、折り畳んだ時に幌がベルトラインよりも上側になりデザインが阻害されてしまう。そこで収納スペース確保を目的としてリヤ側取り付け位置をベルトラインよりも下側に設定して解消したが、雨水の排出場所が難しくなったため、雨樋としての役目を果たすレインモールを設定。左右端部に流れてきた雨水を車体下側に流すルートを車体内部に設定し、問題を解決した。また、Aピラー上部とソフトトップ前側左右両端とドア三角窓上部の3部品が集約される点には構造上雨漏りが発生するが、「侵入を防ぐ」のではなく「水を排出する」構造のAピラー側ウェザーストリップを設計し、問題を解決した。これは3部品が集約される点下を雨受け構造にし、Aピラーに沿って雨水を流し、ドア下(スカッフプレート前端)に放出する仕組みである[26][出典無効][27]。
シャシー開発は安藤文隆が担当。乗って楽しい操縦安定性をコンセプトに開発を進め、タイヤの接地面を有効に使うためにダブルウィッシュボーン、直感的なハンドル操作のためにラックアンドピニオンを採用した。ライトウェイトスポーツを広めたい点から「安く軽くあるべき」という方向性をもってシャシー設計がスタート、来広したI.A.D.社の2人により足廻りの基本レイアウトが示された。この基本レイアウトにはコスト削減のために部品の共通化や合理的な構造設計が示されていた。その後社内でさらに検討が重ねられ、メンテナンス性や泥の溜まりにくい形状等といった市販量産車としての構造が最終レイアウトとして決定された。この様なレイアウト内容を実験部門や製造部門に伝える為、安藤は通常の平面図ではなく立体的に作図をした摸式図を仕上げたのである[28][出典無効]。
なお、ユーノスチャンネルはバブル崩壊に伴うマツダの経営戦略の見直しにより1996年3月末で廃止されたため、名称は「ユーノス・ロードスター」のまま販売チャネルはマツダアンフィニ店に移った。
最初期のモデル以降、2度の大きなマイナーチェンジを受ける。排気量の変更を始め、各部剛性の向上など性能は大きく変化することになるが、エクステリアに関しては大きな変更はなく、どのモデルも大きな違いはない。リアの“Roadster”のロゴプレートに関しては文字色が各モデルで異なり、NA6CEが黒文字、NA8Cシリーズ1が赤文字、NA8Cシリーズ2が緑文字となっている。また、2003年にマツダE&Tにてレストアされたリフレッシュビークル(限定30台)は黄文字である。
2004年、米国のスポーツカー専門誌、スポーツカー・インターナショナルの選出したベスト・スポーツカー1990年代部門で第1位を獲得した。20世紀に生産された乗用車の中から、世界32か国、約130名の選考委員により選び出すカー・オブ・ザ・センチュリーではベスト100に入った。
なお、2015年には4代目モデルのCMに壮年男性の運転する本モデルのロードスターが登場している。
発売から30年以上経過しても根強い人気があり、開発に関わった人物が状態の良い中古を探す事例もあることから、対象を初代に絞ったレストア業者も存在する[29]。
NA6CE(1989年 - 1993年)
1989年発売当初のNA6CE型は、B6型 1.6 L 直列4気筒DOHC16バルブエンジン(ボア78.0×ストローク83.6mm)を搭載する。このエンジンはファミリアに搭載されるものがベースで、縦置きへの変更や吸排気系の高効率化、バルブタイミングの高回転化、軽量部品の使用などの改良が施された。これらの改良によりファミリアのB6型エンジンと較べてレブリミットが200rpm、最高出力が5ps上昇した。
レイアウトとしてはエンジンの重心を前輪の車軸より後方に配置するフロントミッドシップを採用し、ガソリンタンクやスペアタイヤもホイールベース間に収め、ブレーキキャリパーを前輪は後側、後輪は前側に配置するなど、慣性モーメントを減らすために徹底して重量物を中央に寄せる工夫がなされている。また、バッテリーをトランクに設置するなど前後の重量配分を整え、2名乗車時で50対50の理想的な前後重量配分を実現している。シフトはレバー比4.4、ストローク45mmと当時の日本車では最小のショートストロークで、手首を返すだけでも操作が可能である。トランスミッションは当初は5速MTのみであったが、1990年3月に4速ATが加わった。
サスペンションはマツダでは初となるダブルウィッシュボーン式が前後とも採用された。また、ミッションケースとデフケースを結合するパワープラントフレーム(PPF)の使用により、駆動部の剛性を高めてダイレクト感のあるアクセルレスポンスやシフトフィールを実現している。フロントミッドシップのレイアウトやダブルウィッシュボーン式サスペンション、パワープラントフレームは後の世代のロードスターやFD3S型マツダ・RX-7、マツダ・RX-8にも採用されている。ボンネット、シリンダーヘッドカバー、PPFなどをアルミ製にするなど軽量化も徹底され、車重は940kg - 950kgに収められている(AT車は980kg)。
ソフトトップは手動式である。オープン時には畳んだ幌の見栄えを考慮し、幌収納部を覆うトップブーツが標準装備。オプションでデタッチャブルハードトップが用意された。左右サンバイザーはオープン時に飛び出さないように2分割式のものを採用。オープンで車を離れるときのために、鍵付きのセンターコンソールボックスと助手席前グローブボックスを備える。センターコンソールボックス内部にはフューエルリッドオープナーがあり、1991年8月にはトランクオープナーも併設された。ラジオアンテナはネジ形状による差込脱着式であったがその後、電動式に変更された。
グレードは当初標準車に加え、モモ製本革巻きステアリングやアルミホイール、パワーステアリング、パワーウインドウを装備するスペシャルパッケージのほぼ単一グレードの展開であった。後に標準車にパワーステアリングとパワーウインドウだけを装備するMタイプが追加された。1990年7月にはナルディ製ウッドステアリング、ウッドシフトノブ、ウッドサイドブレーキやタンカラーの内装などを装備したVスペシャル、1992年7月にはナルディ製本革ステアリング、本革シフトノブ、本革サイドブレーキやビルシュタイン製ダンパー、BBS製アルミホイール、リアスポイラーなどを装備したSスペシャルが追加された。当初のボディカラーは「クラシックレッド」、「シルバーストーンメタリック」、「クリスタルホワイト」、「マリナーブルー」の4種類。その後追加されたVスペシャルが「ネオグリーン」と「ブリリアントブラック」(ブラックは1991年8月に追加)、Sスペシャルが「クラシックレッド」と「ブリリアントブラック」である。また限定車「Jリミテッド」専用色として「サンバーストイエロー」も設定(Aピラーも同色のイエロー)幌はブラックのみ。オプションのデタッチャブルハードトップは当初、熱線なしのブラックとレッドの2種類が用意され、1990年8月にブルー、シルバー、ホワイト、グリーンを追加。価格は標準車で170万円、スペシャルパッケージで180.5万円、VスペシャルやSスペシャルは200万円以上の設定であった。
NA8C(1993年 - 1998年)
1993年7月に実施されたマイナーチェンジにより、エンジンがBP型 1.8 Lに変更され、型式もNA8Cとなる。排気量の拡大は国内外からの1.6 Lエンジンのパワー不足を指摘する声を反映したもので、ボア83.0×ストローク85.0mmに拡大され、バルブタイミングのさらなる高速化などにより、最高出力は10ps、最大トルクは2kgf・mアップしている。同時にファイナルギアは4.3から4.1に変更。また、ボディの補強やブレーキローターの大型化、LSDのビスカス式からトルセンへの変更、ホイールのリム幅の拡大などが行われた。これらの改良により車重も増加し、ノーマル車で980kg、それ以外で990kg、AT車で1,020kgとなった。
グレード構成は従来の4種類に加え、Vスペシャルにタイプ2を追加。Vスペシャルタイプ2にはVスペシャルの装備に加え、タンカラーの幌が装備された。また、Vスペシャルのタイプ1、タイプ2ともにオープンカー用に開発されたセンソリーサウンドシステムを標準装備する。さらにノーマルグレード以外には電動アンテナを採用(ノーマルグレードは従来の着脱式アンテナ)。スペシャルパッケージとVスペシャルに電動格納式のドアミラーを採用。ボディカラーはノーマルとスペシャルパッケージが「クラシックレッド」「シルバーストーンメタリック」「シャストホワイト」の3色、Sスペシャルが「ブリリアントブラック」とシリーズ1専用となるオートザム車から転用の「ラグナブルーメタリック」の2色、Vスペシャルが「ブリリアントブラック」「ネオグリーン」の2色が初期のラインナップで、1994年12月にノーマルに「ブリリアントブラック」、VスペシャルとSスペシャルに「シャストホワイト」が追加された。価格はNA6CE型から5万円程度上昇。Vスペシャルのみセンソリーサウンドシステムの装備などの影響で大幅に価格が上昇して230 - 240万円(約20万円増)となっている。
1995年8月のマイナーチェンジでは、ECUを8bitから16bitに変更することで高回転域での燃焼を最適化してトルクを向上するとともに、軽量フライホイールの採用、ファイナルギアのローギヤード化(MT車のみ4.1から4.3)などの改良が施された[注釈 5]。その他、変更点としてはバックミラーをウィンドウ接着タイプに変更。それに伴いインストゥルメントパネル内に収められていたルームランプをフロントトリムヘッダー中央へと変更。2分割式だったサンバイザーを一枚タイプに変更、メーターのメタル調リング、ヘッドレストスピーカーを廃止(センソリーサウンドシステム装着車を除く)、ドアトリムのグリップアシストをNA6CEと同形状のアームレストタイプへと変更、標準装備だったトップブーツをオプションに変更、衝撃吸収ステアリングの採用などがある。また、1996年12月に一部改良され、全グレードにモモ製エアバッグ内蔵ステアリングが装備される。
グレード構成はさらにMパッケージとSスペシャルにタイプ2が追加された。Mパッケージはノーマルとスペシャルパッケージの中間的なグレードでスペシャルパッケージからアルミホイールやLSDが除かれる。Sスペシャルタイプ2にはSスペシャルの装備に加え、15インチのホイールなどを装備する(標準は14インチ)。価格はシリーズ1より下回るか、ほぼ同程度となる。ノーマルは169万円とNA6CE型よりも安くなっているが、これはトップブーツなどの標準装備を減らしたことなどが影響している。
-
MX-5 フロント
-
MX-5 リア
年表
- 1989年
- 1990年
- 3月 - AT仕様を追加。
- 8月 - 「Vスペシャル」発売。
- 1991年
- 7月 - 特別仕様車「J LIMITED」発売。ボディカラーを専用色サンバーストイエローとしたモデル。「J」はフランス語で黄色を表すjaune(ジョーヌ)から。 限定800台。発売当日に予約受付完了、抽選での販売となった。
- 8月 - 「Vスペシャル」にブラックカラーを追加。
- 12月 - 特別仕様車「M2 1001」発売[31]。限定300台。価格は340万円。1990年代前半にマツダが東京・世田谷の環状八号線沿いに置いていたM2でカスタムされた。ブルーブラック(HQ)に塗られた外観はシビエ製フォグランプが埋め込まれたフロントノーズに変更され、タイヤも195/50R15と15インチ化。ホイールはパナスポーツ製。内装もアルミ製4点式ロールバー、機械式メーター、センターコンソールレス、専用バケットシートなどでカスタマイズ。エンジンは専用のカムシャフトとピストンが組み込まれノーマル比から10馬力向上となった。購入希望者はM2本社ビルに来訪の上手続きし、抽選、当選した場合の納車も本社でしか行なわなかった。
- 1992年
- 8月 - 安全装備を追加。
- 9月 - 「Sスペシャル」発売
- 11月 - 特別仕様車「M2 1002」発売。300台生産の予定とされたが、100台目の受注で生産を終了した。M2第2弾。前回の1001とは異なり、動力関連には手を入れず、内外装を非常にエレガントに仕上げた「大人のためのスポーツカー」をコンセプトとした。外装色ブレイブブルーマイカ。15インチタイヤにパナスポーツ製ホイールは1001と同じだがタイヤサイズが185/55R15となる。専用のフロントノーズを装備するのは1001と同じだが、形状は異なる。内装が豪華でアイボリーの専用本革シートは風合いを重視しトップコートを従来品に比べて薄くしており、スピーカー穴が開くことを嫌いヘッドレストスピーカーは廃止された。クラッシュパッドから下部分の色はアイボリーになっており、シートベルトもアイボリー、ベルベットブルー起毛地張りのダッシュボード、本木目張りのセンターパネルなどが装着されている。ソフトトップ自体は「Vスペシャル」と同様のタン色でソフトトップカバーはアイボリー。
- 12月 - 特別仕様車「S LIMITED」発売。Sスペシャルベース。限定1,000台。イギリスやアメリカの古典的スポーツカーに多く見られる赤の内装をロードスターで初採用した。外板色はブリリアントブラック。シートは赤の本皮シート。さらに専用の14インチBBSアルミホイール(メッシュ部分がゴールドペイントになっている)を装備。内装は前記のとおりやや濃い目の赤となっており、ダッシュボードのトップ部分以外はすべて赤である(シートベルトやソフトトップカバーも赤)。
- 1993年
- 6月- プロダクトデザインを手がけた田中俊治が社団法人発明協会から「ライトウェイトスポーツカーの意匠」にて発明賞を受賞。
- 7月 - 商品改良を実施。1.8リットルDOHCエンジンを採用。「VスペシャルタイプII」を発表。
- 11月 - 特別仕様車「TOKYO LIMITED」名前のとおり東京地区ディーラーのみで発売。限定40台。前述のM2 1002用に作られ在庫として残っていたアイボリーの内装を、通常販売モデル(ブリリアントブラックのスペシャルパッケージ)に装着したモデル。
- 12月 - 特別仕様車「J LIMITED II」発売。限定800台。2年前に出たJ LIMITEDと同じくサンバーストイエローの外板色。ただしAピラーはブラックアウトされており、アルミホイールのデザインも異なる。
- 1994年
- 2月 - 生産累計台数30万台達成。特別仕様車「M2 1028」発売。M2第3弾で最後のM2モデル。限定300台。1001、1002と異なり全国のディーラーで販売される。再び走りを重視した変更が行なわれた。外装色はシャストホワイト(PT)とブルーブラック(HQ)の2色。外装はドアミラーがヴィタローニ製セブリングを採用(ミラーの台座部に「M2 INCOPORATED」と刻印のあるもの)、右前のトーイングフックをアルミ製のレッドアルマイト仕上げの物へ変更され、NA型に装備されている右前以外のトーイングフックは徹底した軽量化の為に取り外され、別添付の箱に入れられデリバリーされた。ホイールはNA8C純正アルミホイールと同形状の14インチだが、スポーク部分を肉抜きして軽量化し、ガングレーに塗られている。トランクリッドもアルミ製で、形状もノーマルと異なる後端中央が盛り上がったダックテール状となっている。またNA型全モデル中唯一のハードトップ標準装備モデル。そのハードトップは従来品に比べFRPの比重が軽く、またリアウインドウはガラス製ではなくポリカーボネイト製とするなどして軽量化されていた。幌は装着されておらず、簡易式の幌を緊急用としてオプションで設定していた。内装はアルミ製10点式ロールバー、センターコンソールレス、左右ともエスケレート製フルバケットシート、専用メーターフェイスなど。エンジンも手が入り、専用のカムシャフト、ピストン、エキゾーストマニホールド、エアクリーナーへ変更され10馬力向上。
- 7月 - 特別仕様車「RS LIMITED」発売。限定500台。Sスペシャルベース。専用色モンテゴブルーマイカ。専用レカロシート2脚、15インチBBSホイールを純正装備。最終減速比4.3のデフを搭載する。
- 12月 - 特別仕様車「G LIMITED」発売。限定1,500台。7つの特別装備が追加されたモデル。専用色サテライトブルーマイカに紺色の幌。
- 1995年
- 2月 - 特別仕様車「R LIMITED」発売。限定1,000台。Sスペシャルベース。専用色サテライトブルーマイカに紺の幌。内装は赤。BBS製15インチホイール装着。この内最終ロットの106台はシャストホワイトになった。
- 8月 - 商品改良を実施。軽量フライホイールを採用し、エンジンの応答性を向上させた。
- 12月 - 特別仕様車「VR LIMITED コンビネーションA / B」発売。限定700台。Sスペシャルベース。コンビネーションAは外板色アールヴァンレッドマイカにタンの幌、トープの革シート(センティアと同じ革素材)。コンビネーションBは外板色エクセレントグリーンマイカに緑の幌、黒の革シートで限定800台。双方とも純正オプションで設定のあった15インチアルミホイールを装備。内装はシフトノブ、パーキングブレーキレバーがアルミの専用品となり、カーボン模様のメーターカバー(VR Limitedロゴ入り)が付いた。またシフトブーツの周りには純正オプションのアルミプレートが付いている。
- 1996年12月 - 特別仕様車「R2 LIMITED」と「B2 LIMITED」発売。R2は限定500台。Sスペシャルベース。外板色シャストホワイト。純正オプションの15インチアルミホイール装着。内装はシートのみ赤。シフトノブ、パーキングブレーキレバー、シフトプレートはVR LIMITEDと同じくアルミ製。B2は限定1,000台。Mパッケージベース。専用色トワイライトブルーマイカに紺の幌。14インチのアルミホイールはVスペシャルタイプIIと同じバフ仕上げのメッキホイール。他にドアミラーもメッキされている。
- 1997年
- 1998年1月 - 車名ブランドをユーノスからマツダに変更した2代目と入れ替わる形で販売終了。
- 2017年12月 - 初代ロードスターのレストアサービスを開始[33]。指揮を執るのは、後述する4代目の開発主査を務め、「ロードスターアンバサダー」の肩書を持つ山本修弘である。実作業はマツダの関連会社マツダE&Tで行われる。レストアサービスの開始と共に再生産が可能な純正部品の再供給も開始され、NA6CE用アルミホイール、ブリヂストンタイヤSF325、フロアマット、ビニールソフトトップ等が再販売された。その中でもビニールソフトトップについては生地原反のEU圏での製造が出来なかったため、特許等の権利問題も含めて製造をアメリカに移管し、問題を解決した。
- 2019年11月 - 2019年の「日本自動車殿堂 歴史遺産車」に初代モデルが選定されたことが発表された。マツダ車が「日本自動車殿堂 歴史遺産車」に選定されたのは、2003年のコスモスポーツに続いて2回目となった[34]。
注釈
- ^ スーパー耐久は当時、4人乗りの車両での参戦が原則とされていたため、2人乗りのロードスターの参戦には特認が必要となった。
- ^ この呼称は、本社の傍らを流れる猿猴川沿いに立つ、見かけは粗末なプロジェクト室ではあったが、せめて名前だけは立派にしようと名付けられたものである[12]
- ^ 当初は人車一体。
- ^ その後デザインコンセプトは「ひびき」、「語らい」と続いていく)[17]
- ^ 日本市場のみで、海外では従来のギア比で販売。
- ^ MT車トランスミッションの製造は山口県にある防府工場の中関地区で行われている。
- ^ JAF公認で行われるナンバー付車両を使用したワンメイクレース。
- ^ 他のグレード同様、ナンバーを取得して公道走行が可能。
出典
- ^ “【MAZDA】開発ストーリー|ロードスター物語”. 2014年6月21日閲覧。
- ^ ロードスター/MX-5が累計生産90万台で再度ギネスに、AUTO SPORT web 2011年4月14日
- ^ “ロードスターのネーミングの由来は?”. 2014年6月21日閲覧。
- ^ “マツダ 福原常務「『ロードスター』だけは残す」…国内車名を海外名と統一”. レスポンス (2019年7月4日). 2019年7月4日閲覧。
- ^ 『「マツダロードスター」誕生20周年を記念してイベントを開催』(プレスリリース)マツダ 2009年09月30日 。
- ^ “Car Watch マツダ、「ロードスター20周年ミーティング」を開催”. 2014年6月21日閲覧。
- ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第8号3ページの訂正ステッカーより。
- ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第8号3ページより。
- ^ 『ル・ボラン別冊 ユーノス・ロードスター』36ページ
- ^ a b “【連載】カーデザイナー・トム俣野とロードスター Vol.1”. TD編集部. 2023年3月10日閲覧。
- ^ 『ル・ボラン別冊 ユーノス・ロードスター』p.70-75
- ^ 『マツダ/ユーノスロードスター 日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語』三樹書房、2009年、16頁。ISBN 978-4-89522-072-9。
- ^ “リバーサイドホテル物語”. マツダミュージアム土曜特別開館トークセッション. (2022年12月3日)
- ^ a b c “『ユーノス/マツダロードスターの歴代デザイナーそろい踏みによる一大トークショー開催!!』”. ERFC清里ミーティング. (2017-10-22)
- ^ 『マツダ技報 1990 第8号』マツダ株式会社、4月1日、74頁。
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- ^ a b 「リバーサイドホテル物語」”マツダミュージアム土曜特別開館トークセッション(2022-12-3)
- ^ 『『マツダ技報 1990 第8号』』マツダ株式会社、4月1日 1990、80-82頁。
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