ノストラダムス研究者
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「ノストラダムス関連人物の一覧」の記事における「ノストラダムス研究者」の解説
文学、歴史学、書誌学等の見地から研究書を刊行したことがある者。もしくは、ノストラダムス予言やその解釈者たちに対して懐疑的・批判的な著書を刊行したことがある者。なお、後出の参考文献欄にある書名については、原綴を省略した。 フランソワ・ビュジェ(François Buget) 書誌学者(生没年未詳)。1860 - 1863年に書誌学系の雑誌『愛書家・司書年報』に「ノストラダムスに関する研究」(初回のみ「ノストラダムス予言集に関する研究」)と題する論文を掲載した。 アンリ2世の死を予言したとされる有名な詩について、一語一語を丁寧に史実と対比し、彼の死とは結び付けられないことを指摘したことをはじめ、先行する論者の問題点を非難するなど、懐疑派の先駆としての側面を持つ。総ページ数は200ページを超える大部の論文だが、最初に示されていた構想からするとこれでもまだ序盤だったようである。何故中断してしまったのかについては分かっていない。 カール・ルートヴィヒ・フリードリヒ・オットー・フォン・クリンコフシュトレーム(Carl Ludwig Friedrich Otto von Klinckowström) ミュンヘンの伯爵だった人物。1884年 - 1969年。 技術史に関する著作もある。 ノストラダムスの『予言集』に関する調査のためにヨーロッパ中を回った。1913年の論文「ノストラダムス『予言集』の最古級の諸版」(“Die ältesten Ausgaben der ,Prophéties‘ des Nostradamus”, Zeitschrift für Bücherfreunde, Mars 1913)は、『予言集』の本格的書誌研究の礎となった重要なものとして高く評価されている。1951年と1963年にも『予言集』初期の版に関する短い論文を発表している。 ユージン・パーカー(Eugene Parker) 歴史学者。学位論文「ミシェル・ノストラダムス- 預言者」(Michel Nostradamus - Prophet)によって、1920年にハーバード大学で博士号を得た。博士論文自体は公刊されなかったが、その要約的なフランス語論文「ノストラダムス伝説と現実の生涯」は1923年に『16世紀研究誌』に掲載された(この時点の所属はミシガン大学)。 ジャック・ブーランジェ(Jacques Boulenger) フランソワ・ラブレーの研究で知られる文学者。彼の著書『ノストラダムス』(1933年)は、伝説的要素が排斥しきれていない憾みはあるものの、一定の評価はなされている。1943年に『ノストラダムスとその予言』(Nostradamus et Ses Prophéties)と改題して再版された。日本では最も早い段階に属する渡辺一夫によるノストラダムスの紹介では、このブーランジェの著書が参考文献の一つになった。 エドガー・レオニ(Edgar Leoni) 保険受給審査官や編集者などを務めていた在野のノストラダムス研究家。1925年生まれ。 大著『ノストラダムス・生涯と文献』(Nostradamus : Life and Literature, 1961)は、学術的なノストラダムス研究書として幅広く用いられている。1982年に『ノストラダムスとその予言』と改題されて再版された。 ウジェーヌ・レー(Eugène Lhez) 論文「ミシェル・ド・ノートルダムの父系の先祖」("L'ascendance paternelle de Michel de Nostredame", Provence Historique, T.18, 1968)は、ノストラダムスの実証的出自研究に対し貴重な貢献を行ったものであり、ルロワの伝記研究を補完するものとして評価されている。ほか、往復書簡に関する研究もものしている。 エドガール・ルロワ 郷土史家、精神科医。1883年-1965年。サン=レミ移住後、その地にゆかりのあった著名人であるノストラダムスやゴッホの研究に没頭した。 ノストラダムスの実証的な伝記研究に先鞭をつける数々の論文を発表し、そのエッセンスは死後『ノストラダムス その出自、生涯、作品』(1972年/1993年)としてまとめられた。 ミシェル・ショマラ 書誌学者、出版業者。1947年生まれ。リヨン市立図書館にはノストラダムス関連も含む膨大なミシェル・ショマラ文庫が収蔵されている。 『ローヌ川とソーヌ川の間のノストラダムス』(Nostradamus Rhône et Saône, Ger Editeur, 1971)でアカデミー・フランセーズのロシュロン賞を受賞した。ほかに『ノストラダムス書誌 16・17・18世紀』(1989年)など。 ダニエル・ルソ(Daniel Ruzo) ペルー出身の実業家、考古学博士。1900年 - 1991年。実業界からの引退後に神秘思想研究に没頭した。スペイン語圏で出版された主著『ノストラダムスの真正なる遺言書』(1975年)はフランス語版も出され(『ノストラダムスの遺言書』1982年)、日本でも大幅な抄訳版が出版された。その前半(日本語版ではほぼ全部)を占める信奉者的視点による予言解釈には見るべきものがないが、所蔵していた数多くの稀覯本(フォトコピーを含む)に裏打ちされた書誌研究は実証的な研究者からも評価されている。 リベルテ・ルヴェール(Liberté E. LeVert) 世界幻想文学大賞生涯功労賞部門受賞者のSF評論家 エヴリット・ブライラー(1920年生まれ)の筆名(Everette BleilerをアナグラムするとLiberté E. LeVertになる)。 『ノストラダムスの予言と謎』(The Prophecies and Enigmas of Nostradamus, Firebell Books, 1979)は、ジェームズ・ランディやブリューノ・プテ=ジラールから評価された。 ジャン・デュペーブ(Jean Dupèbe) フランス文学者、パリ第10大学教授(2008年)。 『ノストラダムス未公刊書簡集』(Nostradamus: Lettres inédites, Droz, 1983)で、往復書簡の校訂、要約的なフランス語訳、紹介などをおこなった。ほかに論文「人文主義者ノストラダムス」("Nostradamus Humaniste", Nostrdamus ou le savoir transmis,1997)など。 ジョルジュ・デュメジル 神話学者、アカデミー・フランセーズ会員。1898年 - 1986年。 『「灰色の僧がヴァレンヌへ」ノストラダムスの風刺劇』(«…Le Moyne noir en Gris dedans Varennes» sotie nostradamique, Gallimard,1984)で、予言詩のモチーフに古代ローマ史からの借用が含まれている可能性を実例と共に指摘し、以後の実証的研究の転機になった。 マリー=ウジェニー・ロート=ローズ(Marie-Eugénie Roth-Rose) 音楽家、フランス文学者。1913年1月2日生まれ。名前はマリニー・ローズ(Marynie Rose)とも。リヨンの国立高等音楽舞踏学院で首席を取った音楽の教授。 1987年にリヨン第3大学に提出された学位論文「ノストラダムスの予言文書」で言語学博士号を取得した。この論文は、三巻本として2002年に出版された(Les Ecrits Prophétiques de Nostradamus, 3 vols., L'Hermès)。 ロベール・ブナズラ(Robert Benazra) 『カバラ研究誌』(Cahiers Kabbalah)の創設者、編集者。 ノストラダムス関連の研究としては、記念碑的な書誌研究『ノストラダムス年譜総覧』(1990年)など。 ジェームズ・ランディ 奇術師。1928年生まれ。ジェームズ・ランディ教育財団の設立者。 現地調査まで行った著書『ノストラダムスの仮面』(The Mask of Nostradamus)は複数の言語に訳された。日本では皆神龍太郎の監修で『ノストラダムスの大誤解』という題で出版された。 ピエール・ブランダムール 西洋古典学者。1941年 - 1996年。オタワ大学教授として在職中に逝去した。『ローマ暦・年代学的研究』(オタワ大学出版局)ほか、古代ローマ関連の論文が複数ある。 ノストラダムス研究の分野では、多角的な実証分析を行った『愛星家ノストラダムス』、初の本格的な校訂版『ノストラダムス・初期の百詩篇すなわち(1555年マセ・ボノム版) 予言集』などを著し、その後の実証的な研究に大きな影響を与えた。 ベルナール・シュヴィニャール 歴史学者、ブルゴーニュ大学教授(2004年時点)。1947年8月2日生まれ。ブルゴーニュ史に関する著作がある。 『ノストラダムスの予兆集』(Présages de Nostradamus, Seuil, 1999)で、全154篇の予兆詩と1559年までの散文の予兆の校訂を初めて行った。ほかに、ノストラダムスの秘書シャヴィニーの実証的な分析に関する一連の論文を発表している。 ロジェ・プレヴォ(Roger Prévost) 古典学者。高等師範学校で学び、古典文学のアグレガシオンを取得した。 『ノストラダムス、神話と現実』(Nostradamus: mythe et réalité, Robert Laffont,1999)で、予言集の同時代的な読み方を展開した。 ジャック・アルブロン 歴史学者。1947年12月1日生まれ。パリ第10大学に提出した学位論文「フランスにおける占星術テクスト」で歴史学の博士号を取得。 『ノストラダムス現象に関する利用されてこなかった資料』(Documents inexploités sur le phénomène nostradamique, Feyzin)をはじめとする一連の著書・論文で、ノストラダムスの百詩篇集は彼の死後に捏造された偽書だとする仮説を展開し、大きな議論を巻き起こした。 パリで膨大な関連文献の図書館「ビブリオテカ・アストロロギカ」を管理・運営しており、そのコレクションの一部はインターネットで公開されている。 ブリューノ・プテ=ジラール(Bruno Petey-Girard) フランス文学者、パリ第12大学助教授(Maîtres de conférences, 2008年)。ルネサンス期からバロック期にかけての文学が専門で、ギヨーム・デュ・ヴェール(Guillaume du Vair)に関する著作などがある。 2003年に『ノストラダムス予言集』を出版した。これはブランダムールやプレヴォの研究を踏まえた百詩篇第7巻までの校訂版である。 エルヴェ・ドレヴィヨン(Hervé Drévillon) 歴史学者(博士)、パリ第1大学助教授(2004年)。近世の文化史に関する著作などがある。 「文化制度に関する人類学・歴史学研究所」準研究員(2004年)のピエール・ラグランジュと共に、『ノストラダムス・永遠の回帰』(邦題『ノストラダムス・予言の真実』)を執筆した。 ピーター・ラメジャラー(Peter Lemesurier) 著述家、翻訳家。1936年生まれ。20冊を超える著書を英語で発表しており、いくつかは外国語にも訳されている。 『ノストラダムス百科全書』(1997年。邦訳は2分冊)の時点では信奉者的な観点から予言解釈を展開していたが、その後同時代的な視点を重視するようになった。実証的な研究としては、ノストラダムス生誕500周年を期して2003年に刊行された2冊『未知のノストラダムス』(The unknown Nostradamus, O-Books)と『ノストラダムス・解説された予言集』(Nostradamus: The Illustrated Prophecies, O-Books)などがある。 アンナ・カールステット(Anna Carlstedt) フランス文学者。ストックホルム大学に提出した学位論文「ノストラダムスの神託的詩歌」で文学博士号を取得した。この文献は2005年に公刊されている。関連する論文として「『憂鬱質のノストラダムス』預言者に扮した詩人か?」(“«Nostradamus mélancolique»: un poète déguisé en prophète?”, Nouvelle revue du XVIe siècle, 22/2, 2004)など。 高木彬光 推理作家。1920年 - 1995年。五島勉『ノストラダムスの大予言』がブームになった際に、いち早く疑問を提起した。関連する著書に『ノストラダムス大予言の秘密』(日本文華社、1974年/角川文庫、1975年)がある。 志水一夫 科学解説家。1954年 - 2009年。執筆分野は多岐にわたる。単著に『トンデモ超常レポート傑作線』(楽工社)など。ノストラダムス関連では星雲賞ノミネート作の『大予言の嘘―占いからノストラダムスまで その手口と内幕』、『トンデモ・ノストラダムス解剖学』(ともにデータハウス刊)など。 竹下節子 比較文化史家、評論家。伝記『ノストラダムスの生涯』(朝日新聞社、1998年)、エッセイ集『さよならノストラダムス』(文藝春秋社、1999年)を上梓した。 山本弘 SF作家、と学会会長。代表作に『神は沈黙せず』(角川書店)など。『トンデモ ノストラダムス本の世界』(洋泉社、1998年/宝島社文庫、1999年)、『トンデモ大予言の後始末』(洋泉社、2000年)などにおいて、ノストラダムス解釈者たちについてユーモアを織り交ぜて紹介した。 高田勇 フランス文学者。1931年生まれ。元明治大学文学部教授。 伊藤進と共に『ノストラダムス予言集』(岩波書店)の編訳を行ったほか、樺山紘一、村上陽一郎と『ノストラダムスとルネサンス』(岩波書店)を共編した。後者には高田の2篇の論文(「フランス文学史の中のノストラダムス」、「ノストラダムス物語の生成」)が収められている。 伊藤進 フランス文学者。1949年生まれ。中京大学教養部教授。著書に『怪物のルネサンス』(河出書房新社)など。高田勇と共に『ノストラダムス予言集』(岩波書店)の編訳を行ったほか、ドレヴィヨン&ラグランジュ『ノストラダムス – 予言の真実』(創元社)の日本語版監修者を務めた。 田窪勇人 エンジニア(1999年)。サイト「ノストラダムス研究室」を運営する在野の研究者だが、その知識の深さやアプローチの堅実さは竹下節子や山本弘から高く評価されている。 公刊された論考としては「日本におけるノストラダムス受容史」(『ユリイカ』 1999年2月号 所載)、「ノストラダムスの世界にみるハーブ」(『アロマトピア』 第53号 所載)などがある。また、Laroche [2003]には、参考文献のひとつとして「ノストラダムス関連の日本語文献書誌(1969年-1995年)」(Takubo,Hayato. Bibliographie des livres sur Nostradamus en japonais (1969-1995), Hiroshima)という文献が挙げられている。
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