認知バイアス 分類

認知バイアス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 15:47 UTC 版)

分類

認知バイアスは様々な観点から分類される。例えば、集団状況に固有なバイアスもあれば(例えば、リスキーシフト)、個人レベルのバイアスもある。認知バイアスは、が知覚し、感情を伴い、記憶を形成し、判断を行う方法に起因する。

一部の認知バイアスは、選択肢の好ましさを考慮した意思決定に影響を与える(コンコルド効果など)。錯誤相関[2]などは、事象の発生しやすさや因果関係の判断に影響を与える。ある種のバイアスは記憶に影響を与える[3]。例えば、一貫性バイアスは、ある人物の過去の態度や行動が現在の態度により近いものだったと記憶させる。

一部の認知バイアスは主体の「動機づけ」を反映している[4]。例えばポジティブな自己像に対する欲求が自己中心性バイアス[5]を生み、当人にとって不快な認知的不協和を防ぐ。動機づけられた認知と覚醒の状態を関係づける。

感情バイアスは感情的要因による認知と意思決定の歪み。都合のいい情報を好み逆を嫌う傾向などを含む。

感情的成分が認知を強力に規定しているが、認知機能と感情機能とが融合する領域で起こる現象を「熱い認知英語版」といい、「冷たい認知」と区分した(Sorrentino, R.M.)。認知と感情は、メビウスの輪のように、分離不能なもの、共生的なものと考えるべきであり、「知性と感性を結ぶ活動」は「温かい認知」と密接に関わるものである。冷たい認知は1950年代後半から始まった情報処理論的アプローチに基づく認知研究が明らかにした認知現象を指す。[6]

「冷たい」バイアスはさらに次のように分類される。

  • 「適切な情報を無視する」ことに起因するもの。例えば、事前確率無視。
  • 「不適切な情報に影響される」ことに起因するもの。例えばフレーミング効果(: framing)では、全く同じ問題でも記述の仕方によって受け取られ方が異なる。
  • 問題の中でも重要ではないが突出した部分に「過大な重み付け」を与えることに起因するもの。例えば、アンカリング

一部の認知バイアスが動機づけを反映しているという事実と、特にその動機づけが自身に対するポジティブな態度を持つためであるという事実[5]から、多くの認知バイアスが利己的で自発的であるという事実が説明できる(例えば、非対称な洞察の錯覚英語版自己奉仕バイアス投影バイアス)。認知バイアスは、主体が内集団または外集団を評価する方法によっても分類される。すなわち、ある集団を恣意的に定義して、その集団が多くの点で他の集団より多様で「良い」と評価する(内集団バイアス英語版外集団同質性バイアス)。

他にも、以下などがある。

過去の事象を全て予測可能であったかのように見る傾向。
個人の先入観に基づいて他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強するという傾向。いったんある決断をおこなってしまうと、その後に得られた情報を決断した内容に有利に解釈する傾向をさす。
状況の影響を過小評価し、個人特性を過大評価して人間の行動を説明する傾向。
自然災害や火事(山火事、放火など)、事故・事件(テロリズム等の犯罪、ほか)などといった何らかの被害が予想される状況下にあっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」などと過小評価したりしてしまう人の心の特性[7]。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
何らかの選択過程を通過した人・物・事にのみを基準として判断を行い、そうでない人・物・事は見えなくなるため、それを見逃してしまうこと。
ある事象の評価が、ヒントとして与えられた情報に引きずられてしまうこと。

  1. ^ 日常を取りまく様々な認知バイアス”. 医療法人社団 平成医会. 2022年12月11日閲覧。
  2. ^ : illusory correlation
  3. ^ Schacter (1999)
  4. ^ Kunda (1990)
  5. ^ a b Hoorens (1993)
  6. ^ 認知心理学の人格教育への応用可能性についての一考察 皆川直凡
  7. ^ 日経BP
  8. ^ Sutherland, Stuart (2007) Irrationality: The Enemy Within Second Edition (First Edition 1994) Pinter & Martin. ISBN 978-1-905177-07-3
  9. ^ Ariely, Dan (2008). Predictably Irrational: The Hidden Forces That Shape Our Decisions. New York, NY: HarperCollins. ISBN 978-0-06-135323-9 
  10. ^ (Clavien 2010)
  11. ^ (Gigerenzer 1999)
  12. ^ (Gigerenzer 2000)






認知バイアスと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「認知バイアス」の関連用語

認知バイアスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



認知バイアスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの認知バイアス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS