生活様式 生活様式の研究史

生活様式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/11 17:35 UTC 版)

生活様式の研究史

生活様式の研究は、主として3つの区分に分けることができる[12]

生活様式と社会的地位

生活様式に関する初期の研究は、社会構造とその中での個人の相対的地位の分析に重きをおいていた。ソースティン・ヴェブレンは、人々が自分より下位とみなす社会階層との差別化、上位とみなす階層との競争への欲求にしたがって、特定の「生活の枠組み」とりわけ決まったパターンの「衒示的消費」を受け入れるのだと主張し、「競争」の概念とともにこの視座を提唱した。

マックス・ヴェーバーは生活様式を、威信の認識の弁証法と密接に結びついた階層集団の特徴的要素とみなした。すなわち生活様式は(同一の社会階級の中でさえ)社会的差異の最も目立つしるしであり、またそれは特に、個人が自ら享受していると思っているないしは欲しているところの威信を示すものである。

ゲオルク・ジンメルは、生活様式の形態的な分析を行っているが、その核心には、個人化・自己同定・差異化・認識のプロセスが見受けられる。これは「垂直的」「水平的」にはたらくような、生活様式を創り出すプロセスであると同時に、生活様式によって創出された効果であると理解することができる。

最後にピエール・ブルデューは、このアプローチをより複雑なモデルの中で刷新した。ここでは生活様式は主として社会的実践の中で作り上げられ、個人の嗜好に密接に結びついたものであって、場の構造とハビトゥスに関連したプロセスとの間の相互関係の基本的な点を示すものである。

思考様式としての生活様式

生活様式を第一義に思考様式として理解するアプローチは、精神分析の領域にその起源をもつ。まずアルフレッド・アドラーによれば、人生の早い時期に発達する、個人の価値観や行動原理を導く枠組みが、生涯にわたってその人の行動に影響するような判断システムを規定することになる、という意味において、生活様式は人格の様式として理解されるものである。

のちに、とりわけミルトン・ロキーチやアーノルド・ミッチェル、リン・カールの研究において、価値観の解析(プロフィール)という形での生活様式の分析が発展した。その結果、相異なる人々の群がそこに対応するような、階層的に組織されたさまざまな価値観のスケールのモデルを見出すことが可能である、との仮説に至った。

つづいてダニエル・ヤンケロヴィッチとウィリアム・ウェルズが登場し、共時的・通時的両方の観点からの分析と、与えられた社会的文脈における社会文化的潮流(トレンド)に基づく解釈から、態度(attitudes)・興味(interests)・意見(opinions)を生活様式の基礎的な構成要素であるとみなす、いわゆるAIOアプローチに移行した。

最後に、さらなる研究によっていわゆるプロフィール・トレンドアプローチが出てきたが、その核心は、精神的変数と行動的変数の間の関係を分析することにある。これは、人々の様々な生活様式の普及と、様々な様態の思考・行動間の相互作用の出現の両方に対して、社会文化的潮流が影響力を持っていることを念頭に置いたものである。

行動様式としての生活様式

行動の概形としての生活様式の分析は、行動のレベルを単なる生活様式の派生物、あるいは少なくとも副次的な構成要素として考えるのではなく、本質的な要素として捉えるところに特徴を持つ。

はじめに、このアプローチではアンソニー・ギデンズらが主に消費者行動に注目し、獲得される商品を、個人の自己イメージや彼らの社会における自己の地位の見方を物質的次元に表現した物体とみなした。

その後この視座が拡張され、より総合的に日々の生活のレベルに着目し、時間とりわけ余暇の利用に注意を置いて、選択の積極的側面と日課的な側面との間の相互作用と、行動のレベルを特徴づける構造の組織過程を研究しようとするようになった。

最後に、リチャード・ジェンキンスやA・J・ヴィールなどの研究者は、毎日の行動ではなく、特に意味があり特徴的な行動だとその受容主体が考えるような行動に分析の次元を設ける、という生活様式へのアプローチを提案した。




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