漢江の奇跡 漢江の奇跡の概要

漢江の奇跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/21 21:48 UTC 版)

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漢江の奇跡
韓国のGDP(1911年-2002年)
各種表記
ハングル 한강의 기적
漢字 漢江의 奇蹟
発音 ハンガンエ キジョク
日本語読み: はんがんのきせき
2000年式
MR式
英語
Hangangui gijeok
Hankangŭi kichŏk
Miracle on the Han River
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1960年代前半まで世界の最貧困国だった韓国は、国内総生産 (GDP) が北朝鮮を下回っていた。しかし、韓国は日韓基本条約の日韓請求権協定で個別に国民に支給すると日本側に説明して請求権資金として支払われた3億ドルの無償提供資金を、韓国経済発展のための国内投資資金に回したことで半世紀で世界10位圏の経済大国に発展し、その恩恵を受けた韓国企業は巨大な財閥に成長した。

当時、日韓交渉を担当した金鍾泌元首相(国務総理)も2017年に「1961年に誕生した政府が国家安保や経済再建を掲げて発足したが、国庫が底を突き、財源づくりのためには韓日会談の再開を通じた日本の請求権資金しかなかった」と認めている。国交を回復した後に約25年に渡る円借款などを国内投資資金の元手にして、日本からの資金・技術援助を利用することで社会インフラを構築して経済発展を遂げた[2][3][4][5]

概要

1961年5・16軍事クーデターを起こし政権を得た朴正煕は経済開発を掲げ大衆の支持を求めた。当時、国内総生産はソ連を真似て計画経済を押し進めていた北朝鮮が上回っていて、朴政権の韓国も五カ年計画方式の計画経済を導入することとなる。朝鮮戦争により壊滅的打撃を受け、1人当たりの国民所得は世界最貧国グループであった韓国経済は、その後、ベトナム戦争参戦によって得られたドル資金と、1965年日韓基本条約を契機とした日本からの1960年代半ばから1990年までの約25年に渡る円借款およびその後も続いた技術援助により、社会インフラを構築して経済発展を遂げた[2][3][6]。これが漢江の奇跡と呼ばれる。

その後、ベトナム戦争で培った施設設営のノウハウと中東に影響力を持っていたアメリカとの良好な関係をバネに[7]1970年代の中東の建設ブームに乗る[8]。1979年の朴正煕大統領暗殺後の1980年、一時的にマイナス成長に転じるが、1981年以降急回復し[9]、1988年のソウルオリンピックを成功させ、1997年のアジア通貨危機国際通貨基金に介入されるまで高い経済成長を続けた。

急速な経済成長の要因としては内的な要因としては財閥をてこにした輸出志向型工業化政策、独裁政権期の開発独裁による労働組合の抑圧、外的な要因としては、冷戦下、西側諸国、特に日本アメリカによる膨大な経済および技術援助、欧米及び日本の市場へのアクセス、および経済成長初期の韓国の出稼ぎ労働者の受け入れによる外貨獲得などが挙げられている。

朴正煕の娘である朴槿恵が第18代韓国大統領に当選した際は、就任式で「第2の漢江の奇跡」の創造を掲げて注目された[10]

軍需

朝鮮戦争後の韓国は農産物、原料・半製品などの原資材をアメリカ合衆国からの援助に頼っており、これらを原材料とした消費財の加工産業を育成していた。しかし、アメリカによる援助政策の転換により、1957年を境として対韓援助は減少を始め、脆弱であった韓国経済に深刻な影響を与えた。李承晩政権は援助に依存する経済からの脱却を企図して「経済開発三カ年計画」(1960~62年)を作成したが、政権自体が1960年の四月革命で崩壊してしまう。続く張勉政権も経済再建第一主義を標榜して「経済開発五カ年計画」(1962~66年)を策定したが、これも朴正煕による1961年の5・16軍事クーデターにより実施されなかった。

朴正煕は民生苦の解決と、自立経済基盤の確立を目標とし、新たに「第一次経済開発五カ年計画」(1962年‐66年)を推進した。財閥の不正蓄財の摘発を進め、定期預金金利の引き上げや貯蓄運動を推進して国内資本の動員を図った。しかし期待したほどの成果は得られず、1964年には計画の修正という行き詰まり状態に陥った。この状況を打開するために、外資導入による経済建設の道を選ばざるを得なかったと言われる。当時、国際信用力を欠いていた韓国が外資を求める先に選んだのが、同盟国であるアメリカであった。その窓口としては日本が選ばれ、日韓基本条約により国交を正常化した。1966年の朴・ジョンソン首脳会談では、韓国軍のベトナム派兵の見返りとして、巨額の経済・軍事援助が約束された。その額は派兵後5年間で17億ドル近くになる。同年のブラウン覚書では、追加派兵時にベトナムで実施される各種救護と建設事業に韓国企業を参加させ、韓国に追加で開発庁借款(AID loans)を提供させた。ベトナム戦争中の十年間を通じて、韓国経済の成長率は年平均10%前後だった。

こうして韓進グループ現代財閥大宇財閥など新興の財閥を形成した[11]。これら韓国財閥には韓国政府が独占取引権を付与するなどした。その後、国内に強権的な体制が残ることになり、セマウル運動などを通じて農村の活性化を行ったが、都市部への人口集中や産業構造においても経済成長から農村や中小企業が取り残されるなどの歪んだ形成をすることになった。また、日本からの個人補償を流用した事を国民に公開しなかったため[12]、後に賠償請求の見解の違いなどで日韓関係に禍根を残した(詳細)。

ともかく基幹インフラは整備された。大韓国民航空社が民営化され、昭陽江ダム京釜高速道路浦項製鉄所が建設された[13]。韓国経済は急成長を遂げ、国力で北朝鮮を逆転し、国民所得を10倍にするという公約を目標より3年早く達成した。そして、この政策によりソウル大都市圏への人口・産業の集積が進み、プライメイトシティとなった。


  1. ^ 名称は第二次世界大戦後の西ドイツの復興と成長をさした「ライン川の奇跡」をもじり、韓国の首都ソウル特別市を横切る漢江にちなむ。
  2. ^ a b 韓国の経済成長に果たした円借款の役割, 2004年度円借款事業評価報告書, 国際協力機構, 2004年7月.
  3. ^ a b 岩田勝雄, 韓国の経済発展の軌跡, 立命館大学コラム「あすへの話題」2006年7月(第44回).
  4. ^ 韓国政府に無償提供資金返還と補償求め提訴朝鮮日報、2017年8月14日
  5. ^ 元徴用工ら韓国政府に賠償請求、無償提供金をめぐり産経新聞、2017年8月14日
  6. ^ 大韓民国民団群馬県地方本部発行「オスンドスンvol9」
  7. ^ 朴根好 『韓国の経済発展とベトナム戦争』, 御茶の水書房, 1993年 ISBN 978-4275015211.
  8. ^ 韓国、世界7大強国に向けて創造的指導力が必要, 中央日報, 2007.04.11.
  9. ^ a b 韓国の経済成長に果たした円借款の役割, 2004年度円借款事業評価報告書, The Institute for Industrial Policy Studies(IPS)/国際協力機構, 2004年7月. 報告書全文 (英語) 산업정책연구원 (The Institute for Industrial Policy Studies (IPS)), 韓国の経済成長に果たした円借款の役割, 2004年度円借款事業評価報告書, 国際協力機構, 2004年7月.
  10. ^ “朴槿恵「第2の漢江の奇跡作る」…韓国第18代大統領に就任” (日本語). 中央日報. (2013年2月26日). http://japanese.joins.com/article/776/168776.html 2017年10月29日閲覧。 
  11. ^ a b c d e f 韓国 軍も企業もベトナム参戦”. 朝日新聞 (2008年1月28日). 2010年12月23日閲覧。
  12. ^ 大月、野村、黄、中宮、宮島ほか 2005 p.61
  13. ^ 大月、野村、黄、中宮、宮島ほか 2005 p.60
  14. ^ a b c “ベトナム戦争に従軍した韓国兵への弔辞に抗議。ベトナム政府「国民感情を傷つけかねない」”. ハフポスト. (2017年6月16日). オリジナルの2017年6月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170616113541/https://www.huffingtonpost.jp/2017/06/15/korea-memorialday_n_17139954.html 
  15. ^ a b “베트남 정부, 文대통령 '베트남전 참전용사 경의'에 반발”. 聯合ニュース. (2017年6月13日). オリジナルの2017年6月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170616023834/http://www.yonhapnews.co.kr/international/2017/06/13/0601060000AKR20170613064800084.HTML 
  16. ^ “베트남, 문 대통령의 '베트남 참전용사 경의' 추념사 내용에 항의”. 朝鮮日報. (2017年6月13日). オリジナルの2021年7月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210710032027/https://www.chosun.com/site/data/html_dir/2017/06/13/2017061301857.html 
  17. ^ 森廣正 『ドイツで働いた日本人炭鉱労働者―歴史と現実』 法律文化社, 2005年6月. ISBN 4-589-02850-6 韓国人炭鉱労働者については「終章 ドイツの外国人炭鉱労働者 2 韓国人炭鉱労働者の受け入れ」に記載
  18. ^ "【コラム】南北の労働力輸出の相違点(下)", 朝鮮日報, 2010/05/11. ミラー
  19. ^ "ドイツ派遣鉱夫の汗や涙、博物館で永遠に残る", 東亜日報, NOVEMBER 24, 2011.
  20. ^ "[オピニオン]ハシナ首相と朴正熙", 東亜日報, MAY 18, 2010.
  21. ^ "焦土化から60年 韓国経済の軌跡", 民団新聞, 2010-06-23.[リンク切れ]
  22. ^ "60年代「派独」鉱山労働者たの望郷の悲哀 MBCドキュメンタリー", 東亜日報, JUNE 09, 2004.
  23. ^ 国際協力銀行情報誌「jbic today」2004年8月号
  24. ^ a b 『日本の請求権資金、韓国が最も効率的に使用』, 東亜日報, 2005年1月19日.
  25. ^ 韓国の経済成長に果たした円借款の役割国際協力銀行
  26. ^ 姜先姫 「韓国における日本の経済協力-浦項総合製鉄所建設をめぐる日韓経済協力-」、『現代社会文化研究』No.21、新潟大学大学院現代社会文化研究科、2001年8月. ISSN 1345-8485、NCID:AN1046766X
  27. ^ 大月、野村、黄、中宮、宮島ほか 2005 p.60
  28. ^ 呉善花朴槿惠大統領「親日幻想」に騙されるな―呉善花(拓殖大学教授) 2/3」『Voice』2013年5月号、BLOGOS、2013年4月18日、2013年8月21日閲覧。
  29. ^ 『マンガ嫌韓流』 晋遊舎〈晋遊舎ムック〉[要ページ番号]
  30. ^ <韓日協定文書公開>朴正煕元大統領「独島問題融通性まったくない」, 中央日報, 2005.08.27.
  31. ^ 4兆円国際協力基金、金融専門家の反応は?, 朝鮮日報, 2008/01/05.
  32. ^ 【韓国ブログ】統一費用韓国国民1人当り4万ドル、日本も出す?, サーチナ, 2010/01/06.
  33. ^ (朝鮮語) 김정식 『對日 청구권자금의 활용사례 연구』, 対外経済政策研究院 (KIEP), 2000-12-30.
  34. ^ 神谷毅 (2021年6月8日). “国際法考慮の判決、韓国世論を二分 元徴用工訴訟に賛否”. 朝日新聞. オリジナルの2021年6月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210608100406/https://www.asahi.com/articles/ASP685TWWP68UHBI010.html 
  35. ^ a b 建石剛 (2021年6月9日). “元徴用工訴訟の却下判決、韓国で波紋…「漢江の奇跡」日本の寄与言及”. 読売新聞. オリジナルの2021年6月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210625151552/https://www.yomiuri.co.jp/world/20210609-OYT1T50040/ 
  36. ^ 韓国「漢江の奇跡」は「なかったこと」に、政権の意向反映か”. NEWSポストセブン. 小学館 (2019年5月7日). 2019年6月29日閲覧。
  37. ^ 「韓国勝利」の証しを消し去る 中国にへつらう文政権に国民は… (3/5)”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2019年6月11日). 2019年6月11日閲覧。


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