光年 光年の扱いに注意すべきこと

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光年

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 01:55 UTC 版)

光年の扱いに注意すべきこと

光年は、かならず時間の経過を考慮する必要がある[注釈 3]ことには注意すべきである。例えば地球からの距離が1光年の星を見る場合、見ている光はその星から1年前に発せられたものであるため、1年前に1光年の距離にあったその星をいま地球で見ていることになる。仮に、たった今その星が何らかの原因で消滅したとしても、地球からはその星の1年前の光しか見ることができないため、見かけ上は今後1年間は星がまだ存在しているように“見え”、1年後にやっと星が消滅したように“見える”。

大きな赤方偏移が観測されるような非常に遠方の天体の場合、例えば2014年現在最も遠い天体であるMACS0647-JDは赤方偏移 z = 10.7 の値を持ち、距離は 133 億 9200 万光年、ハッブルの法則により地球からは光速の 98.5% にあたる 295,444 km/s で後退しているように“見える”と計算される[注釈 4]。しかし、これはこの天体から133 億 9200 万年前に発せられた光を元に計算されたみかけ上の値(このような距離を光行距離英語版: Light-travel distance という)であり、実際はいま時点では 319 億 3900 万光年の距離(このような距離を共動距離と固有距離: Comoving Distance という)[注釈 5]にあり、後退速度は実光速の2倍以上にもなる 695,115 km/s である。このようなスケールでの後退速度は実際は計量自体の拡大速度であり、光年は光が自由空間かつ重力場及び磁場の影響を受けない空間の定義であるので光速不変の原理とは矛盾しない。


注釈

  1. ^ 国際単位系国際文書より。パーセクは1970年(第1版)、1973年(第2版)、1977年(第3版)でSI併用単位(実験的に得られるもの)
  2. ^ ユリウス暦では1か月は平均30.4375日であり、ユリウス年(365.25日)を12で割った値に等しい。ただグレゴリオ暦では30.436875日となるので、どちらの暦由来の値を使うかを指定しないかぎり「光月」は定義できない
  3. ^ これは光年に限ったことではなく、距離を測る尺度に有限である光速を使うには、時間との積をとったスケールが必要となることによる要請である。
  4. ^ この「後退しているように見える」を多くの書籍やメディアで「後退している」「遠ざかっている」と断定的に書かれていることがあり、すると「“そのような運動”をしている」と誤解される懸念がある。実際はこの速度で「運動」しているわけではなく「運動しているように見える」のである。
  5. ^ 例えば、走っている車の位置を測るのに、先に車の後尾の位置を測り、時間を置いてから車の先頭の位置を測って車の長さを割り出すのと同じである。車の速度や時刻を考慮せずに位置だけで測ると、車は進んでしまっているので車の長さは実際より長いと結論してしまう。
  6. ^ 宇宙原理に従えば、宇宙はどこまでも果てしなく広がっている。ただし完全に等方的であるとはまだ証明されていない。宇宙の曲率を参照。
  7. ^ 例えば宇宙ニュートリノ背景(CνB、: Cosmic neutrino background)を考慮した理論計算では、観測可能な宇宙は半径 466 億光年、14.3 ギガパーセクとさらに 2% ほど大きくなる。重力波を用いる理論でさらに過去を見ようとする試みもある。宇宙の年齢のすべてを見通せるとすれば、無限遠の宇宙も観測可能となる。
  8. ^ これはその事象が我々をすでに通りすぎてしまったから観測できないのではない。宇宙原理により、過去の事象はその後の光円錐内の全宇宙で観測できるはずだが、まだ我々は CMB より以前の光を捉える手段がないのである。
  9. ^ 日常生活では光速が有限であることさえも感じとれる場面がほとんどないが、近年では放送衛星中継惑星探査の映像の中継、GPS計測などでこれは徐々に認識されつつある。
  10. ^ 一部の観測できる超光速の事象についても同様のことが言える。詳細は光速を参照。
  11. ^ 漫画では新声社刊『ゲーメストワールドVol5』66頁から70頁に掲載された漫画のキャラクターにこれを用いて頭の悪さを表現している。ゲームボーイソフト『ポケットモンスター 赤・緑』のポケモントレーナーにこれを台詞に用いたキャラクターがいる。アニメ『ドキドキ!プリキュア』のエンディングテーマ「この空の向こう」には誤用だと理解しているという趣旨の歌詞が存在する。

出典

  1. ^ 理科年表、平成28年版、p. 371、丸善、2015年11月30日発行、ISBN 978-4-621-08966-8
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  5. ^ Measuring the Universe: The IAU and astronomical units International Astronomical Union 本文の第3段落
  6. ^ [1] p.728 p.734
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  13. ^ Nick Strobel, Astronomical Constants
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  27. ^ Planck collaboration (2013). "Planck 2013 results. XVI. Cosmological parameters". arXiv:1303.5076 [astro-ph.CO]。


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