ユーザーエクスペリエンス 評価

ユーザーエクスペリエンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/03 19:39 UTC 版)

評価

ユーザーエクスペリエンスは人間の内部に発生する心理的現象である。どのようなUXが発生したかを知る(評価・計測する)様々な方法がある。

状況

システムが与えるUXの評価では文脈・ユーザを考慮した方法が求められる。

UXはシステムの品質特性だけでなくユーザー特性や利用状況にも左右される。したがって、実際の利用状況とは異なり実験室等で実施されるユーザビリティテストは、UXの評価手法にならない[24]。例えば、あるユーザーが自身で代金を負担して購入したうえで製品を利用する場合と、テストモニターとして実験室に招聘されて無料で試用する場合とでは「うれしさ」「好ましさ」「反復利用への意欲」などのUXが異なると考えられる。

また「自宅の不用品を片付けるアプリ」のUXを評価するには、実験室にいながら自宅の様子を想像しながらアプリを利用するという経験を評価するよりも、実際に自宅で不用品を探しながらアプリを利用する経験を評価するほうが、より実際の利用状況におけるUXを評価していることになる。

実環境下での評価手法として民族誌(エスノグラフィー)や文化人類学におけるフィールドワークの手法が利用される。例えば以下の観察手法がある。

  • フライ・オン・ザ・ウォール:調査対象者の行動に関与せず極力客観的に観察する手法
  • シャドウイング:調査対象者の「影」のように寄り添い追跡することで、調査対象者の体験を追体験しようとする手法
  • 参与観察:調査者もその場に参加し、調査対象者と一緒に事物を経験する

期間

UX評価にはその期間という視点が重要である。例えばエピソード的UX・累積的UXは長期にわたる利用や回顧を通じてユーザーの内面において形成された印象も含むため、短時間のUX評価では検証できない事項がある[25]

この長期的な(累積的な)ユーザーエクスペリエンスを、ユーザー本人ではない専門家が推察して評価することには、ほとんど何の正当性もない。長期的なユーザーエクスペリエンスの評価においては、実際のユーザーを対象とした評価の実施が不可欠である[26]

長期的なUXの評価手法には以下が挙げられる。

  • 回顧的評価: ユーザーに購入前から現在に至るまでの出来事と、それについての印象を語ってもらい、それを分析する手法
  • ロギング: ユーザーに対して侵襲的にならないよう行動データを収集し、それを分析する手法
  • ネット・プロモーター・スコア(NPS): 「この会社(あるいは製品、サービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問への11段階尺度の回答を用いる定量的評価手法

注釈

  1. ^ 2010年には研究者・実務家30名による議論でも同様に、広く合意される定義は提示されていない: ユーザーエクスペリエンス白書

出典

  1. ^ "ux は...システムと出会うことに由来する経験を明確に示しています。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  2. ^ "経験という概念は、人間としての存在に伴っています。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  3. ^ "ux は...システムと出会うことに由来する経験を明確に示しています。...「システム」は、 個人がユーザインターフェースを通して対話する、 独立したまたは組み合わされた形態の製品・サービスおよび人工物を指す。…ux は一般的な概念としての経験の一部です。ux はシステムを通じた経験であるため、より限定的です" ロト, et al. (2010). UX白書.
  4. ^ コトバンク、デジタル大辞泉、ユーザー‐エクスペリエンス(user experience)の頁
  5. ^ C. ラレマンドらが2015年に35カ国758人を対象として行った研究
  6. ^ a b c d e f Lallemand 2014.
  7. ^ a b Roto 2011.
  8. ^ hcdvalue 2011.
  9. ^ 「UX白書カンファレンス」で講演しました|安藤研究室ノート
  10. ^ User experience definitions
  11. ^ Terms and definitions (ISO 9241-210:2010) "person's perceptions and responses resulting from the use and/or anticipated use of product, system or service"
  12. ^ 黒須正明 2013, p. 56.
  13. ^ 安藤昌也 2016.
  14. ^ 黒須正明、experienceは「体験」か「経験」か – U-Site、2014年9月8日
  15. ^ "対象とする期間を明確にすることが重要で、それらは一時的 ux、エピソード的 ux、累積的 uxの3種類に分けられます。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  16. ^ "例えば、利用中に起こった強い否定的な反応の重要性は、成功体験の後にはとても小さくなっていて、 否定的だった反応は最終的には違ったものとして記憶されるかもしれません。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  17. ^ "対象とする期間を明確にすることが重要で ... uxデザインとその評価を行う際に必要となる条件は、一時的uxに着目する場合と、エピソード的uxやさらに長い期間のuxに着目する場合とでは異なってきます。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  18. ^ "Anticipated UX may relate to the period before first use, or any of the three other time spans of UX, since a person may imagine a specific moment during interaction, a usage episode, or life after taking a system into use." ロト, et al. (2010). USER EXPERIENCE WHITE PAPER.
  19. ^ "人がシステムと対話することによって生じるuxには、幅広くさまざまな要素(factor)が影響しています。それらは3つの主なカテゴリに分類されます。 ユーザーとシステムを取り巻く文脈、ユ ーザーの状態、システムの特性です。" ロト, et al. (2010). UX白書.
  20. ^ "さまざまなシステム…を利用するという体験は、きわめて多岐に渡る精神的/肉体的活動を伴う。まず精神的には、本能的・感情的な反応から、高度な知的理解に至るまでの、幅広いレベルでの認知(Cognition)が生じる。一方、肉体的には、指一本で行うタップ入力や全身を使ったアクションによる操作、さらには誰かと一緒に行う共同作業までを含むような、多彩なインタラクション(Interaction)を伴うことになる。ユーザエクスペリエンス…とは、このような認知とインタラクションから成る総合的な利用体験である" 深見, et al. (2012). スキル向上のためのHTML5テクニカルレビュー.
  21. ^ "I found the need for a new diagram to illustrate the facets of user experience" Peter Morville. (2004). User Experience Design.
  22. ^ "with a little help from my friends developed the user experience honeycomb." Peter Morville. (2004). User Experience Design.
  23. ^ "For each of the 58 selected studies ... Altogether 42 unique UX constructs were measured ... Table 1 shows the 12 constructs with frequency higher than two." Law, et al. (2014). Attitudes towards user experience (UX) measurement. Int. J. Human-Computer Studies.
  24. ^ 国内UX第一人者 黒須正明先生による連載コラム第一回「UXへの大いなる誤解」 | KUSANAGI MAGAZINE
  25. ^ 黒須正明、UXと言えるのは長期的モニタリングをしてから後の話だ – U-Site、2010年6月17日
  26. ^ 黒須正明、UXの、3つのキーポイント – U-Site、2015年6月10日
  27. ^ UX界隈(何処)におけるアクセシビリティの耐えられない軽さ | 覚え書き | @kazuhito
  28. ^ ユーザビリティとアクセシビリティの統合:UXのプロなら誰でも知っておくべきこと User Experience Magazin
  29. ^ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 - 内閣府
  30. ^ 『障害者差別解消法の認知率は36%、9割の企業がWebアクセシビリティに課題、「Webアクセシビリティ 取組み状況 調査」』2016年3月8日開催 サイトマネジメント委員会セミナー 第2部|公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会
  31. ^ 黒須正明 2013, pp. 55–56.
  32. ^ 安藤昌也 2016, p. 2.
  33. ^ 黒須正明 2013, pp. 22–27, 38–50, 52–56.
  34. ^ Garrett 2002.
  35. ^ Garrett 2005.
  36. ^ 黒須正明、設計品質と利用品質(前編) – U-Siteおよび後編
  37. ^ "3.1.14 満足(satisfaction) システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方。"
  38. ^ "満足は,実際の利用に起因するユーザエクスペリエンスがユーザのニーズ及び期待を満たしている程度を含む。" JIS Z 8521:2020





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