ひょうほんか‐ていり〔ヘウホンクワ‐〕【標本化定理】
標本化定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/26 15:34 UTC 版)
標本化定理(ひょうほんかていり、英: sampling theorem)またはサンプリング定理は、連続的な信号(アナログ信号)を離散的な信号(デジタル信号)へと変換する際に元の信号に忠実であるにはどの程度の間隔で標本化(サンプリング)すればよいかを示す、情報理論の定理である。
概要
標本化定理は、元の信号をその最大周波数の2倍を超えた周波数で標本化すれば完全に元の波形に再構成されることを示す。
標本化とは、数学的には連続関数の値からある点の値だけを標本として取り出して離散関数に変換する操作であり、与えられた連続関数 g と標本化関数 δ の積を求めることと等しい。標本化関数 δ とは、ある離散値(連続でない、飛び飛びの値)x に対してのみ δ(x) = 1 となり、その他の x に対しては δ(x) = 0 となるような関数である。対象となる原関数 g(x) と標本化関数 δ(x) の積を取ると、関数
なお、アナログ信号からデジタル信号への変換については、標本化のほかに量子化が必要である。
標本化定理の証明
標本化定理は、フーリエ級数を用いると簡単に証明することができる。
理想的な標本化パルス列s(t)は、Tをサンプリング周期とし、デルタ関数を用いて、
と表される。標本化入力信号をg(t)とすると、出力信号p(t)は
であるから、
となり、明らかにg(nT)の系列となる。
ここで、出力信号p(t)の周波数成分を計算するためにs(t)をフーリエ級数展開すると、
となる。ただし、である。
扱いを容易にするために入力信号g(t)は振幅A、周波数の単一正弦波として次のように置く。
これに対する出力信号p(t)は、上の式より
となる。この式から周波数スペクトルの図を描き検討すると証明ができる。
抵抗と電圧のゆらぎについてのナイキストの定理
抵抗と電圧のゆらぎとの比例関係。導体が温度にあるとき、その両端には電位差が生じる。このとき
の関係をナイキストの定理という。この関係式は、角振動数に対する電気伝導度がによらずに等しい領域で成立する。これは一般の線形応答理論から基礎づけられる。これも歴史的には1つの揺動散逸定理の発見の例になっている[1]。
歴史的背景
標本化定理はハリー・ナイキストが1928年に予想しており、これに対して1949年のクロード・シャノンの証明が有名である。そのため、シャノンの標本化定理やナイキスト=シャノンの標本化定理と呼ばれることが多い。
しかし、その後の研究で、シャノンとは独立に標本化定理を証明していた人物が次々と見つかった。ソビエト連邦のウラジーミル・コテルニコフ(1935年)、ドイツのH.P.ラーベ(1938年)、日本の染谷勲(1949年)の論文が発見され[要出典]、それぞれ標本化定理を証明した数学者として取り上げられた。このうちコテルニコフは1999年にドイツのエドゥアルト・ライン財団から「標本化定理を最初に証明した」として基礎研究賞を受賞している。
また、標本化定理の展開式と同じものを補間法の公式として、イギリスのエドマンド・テイラー・ホイッテーカーが1915年に証明している。そのため、ホイッテーカーも標本化定理の証明者としてみなされる場合がある。またホイッテーカーの証明方法からの日本の小倉金之助の論文(1920年)が、世界で最初の標本化定理の証明であると、2011年にブッツァーらによって発表されている[要出典]。
脚注
出典
- ^ 『物理学辞典』 培風館、1984年
関連項目
- ウラジーミル・コテルニコフ - 1933年に標本化定理に関する論文を執筆していたソ連の無線工学者。
- 音響信号処理
- シャノン=ハートレーの定理
- サンプリング周波数
- ナイキスト周波数 - ナイキストレートとも呼ばれる。
- 折り返し雑音 - 折り返しひずみとも呼ばれる。
標本化定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/01 07:42 UTC 版)
ナイキスト・シャノンの標本化定理により、エイリアスを生じさせないために必要な標本点の数は、信号の時間周波数分布の面積と等しいことが言える(これは実際には近似である。任意の信号の時間周波数面積は実際には無限大である)。標本化定理を時間周波数分布と組み合わせる前と後についての例を以下に示す。 時間周波数分布を適用すると標本点の数が減ることは特筆に価する。 ウィグナー分布関数を用いた場合、交叉項(干渉とも)の問題がありうる。一方、ガボール変換を用いた場合表現の鮮明さと可読性が向上し、したがって信号の解釈および実践的問題への応用可能性も向上する。 結果として、単一成分から成る信号を標本化する場合にはウィグナー分布関数が用いられ、複数の成分から成る信号に対してはガボール変換やガボール・ウィグナー分布関数などの干渉が抑えられる時間周波数分布が用いられる。 バリアン・ロウの定理(英語版)はこのことを定式化しており、必要最低限の時間周波数標本数を与える。
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