山岳波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/10 17:21 UTC 版)
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山岳波(さんがくは)とは、重力を復元力とする波(重力波)の一種で、気流が山を越えた際に励起される。山の風下側で上下に振動し波打つように伝播するため、波状の雲として観測されることもある。山岳波は強大なエネルギーを持ち、航空機が巻き込まれると空中分解する危険があるため、航空業界では山から十分な距離を取って飛行する対策が取られている(動力を持たないグライダーでは逆に山岳波を利用して航続距離を伸ばすことがある)。
概要
安定成層した大気中で風が山に当たり上昇すると、気塊が膨張して断熱冷却する。このため、気塊の気温は周囲の大気の気温よりも低くなり(密度が高くなり)、擾乱のポテンシャルエネルギーを得る。山の下流側では、周囲よりも密度の高い気塊は下降し、擾乱のポテンシャルエネルギーは擾乱の運動エネルギーへと変換される。その後、ある程度下降すると今度は断熱昇温のために周囲よりも気温が高くなり再び上昇を始める。これの繰り返しにより山の風下側で気流の上下振動が現れる。
関連項目
- 乱気流
- 山谷風
- 大気波
- 内部重力波
- 英国海外航空機空中分解事故 - 富士山周辺を飛行中に山岳波の剥離現象から空中分解を起こして墜落した航空事故。
- 日本航空46E便エンジン脱落事故 - アンカレッジを離陸直後のボーイング747が山岳波に遭遇しエンジンが脱落した事故。
- コンチネンタル航空1404便離陸失敗事故 - ロッキー山脈からの山岳波を起因とする強い突風が、離陸滑走中だったボーイング737を滑走路から逸脱させた航空事故。幸いにも死者はなかった。
山岳波(定常波)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/10 07:52 UTC 版)
山岳地帯で飛行する場合に、山岳地帯特有の風によって機体が大きく揺れることがある(山岳波)。厳密には前記の積乱雲による乱気流とは区別される。 山間や谷間に風が通ることによって特有の風の通り道ができたり、山の斜面に太陽があたり加熱されることによって上昇気流が発生したりすることによって、山岳波とよばれる波状乱流が発生し、そこを通過する航空機に大きな揺れや急激な上・下降といった影響を与えることがある。 適度な湿度の場合には、この波状乱流の上昇気流部分で雲が発生し下降気流部分で雲が消滅するため、山岳波は山岳の風下側に等間隔に並ぶ筋状の雲として観察される。 動力を持たないグライダーは、山岳波による上昇風帯を利用して、長距離飛行や高高度飛行を行う。日本国内では奥羽山脈に発生する山岳波を利用して 1,000 キロメートル以上の飛行記録があり、日本国外ではアンデス山脈に発生する山岳波を利用して、3,000 キロメートル以上の長距離飛行記録と、高度 15,000 メートル超に達する高高度飛行記録が作られた。 1966年3月に富士山上空で英国海外航空(BOAC)ボーイング707 型機が空中分解するという事故が発生した(英国海外航空機空中分解事故)。事故当日は、雲一つない快晴だった。そこで、事故機の機長の判断で飛行コースを変更し、日本の名物である富士山を乗客に間近で見せようという機長のサービス精神、あるいは飛行距離を短くして目的地までの所要時間を短縮しようという機長の判断が仇となったのではないかと言われている。3月は上空の空気は冷たいが、太陽の熱で富士山の斜面が加熱されることによって上昇気流が発生し上空で冷やされるという形で、その空域では大気が上下に渦巻くという状態が形成されていたと考えられる。喩えるなら、寒い部屋でストーブを焚いてその上に紙を持っていくと紙が舞い上がる現象と同じである。そこに事故機が通過した際に、機体が急激な上昇をした後に、今度は急激な下降をして機体の耐久限界をこえて空中分解につながったのではないかとされる。 日本のパイロットの間では、その事故前から「晴れた日には富士山に近づくな」と言われており、危険度の認識はあった。しかし、外国機である事故機の機長は、その言葉を知らなかったと推測される。また、ある程度、山岳波の知識はあり富士山で発生することは認識があったとしても、その度合いを甘く考えていた可能性がある。
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