じんどう‐しえん〔ジンダウシヱン〕【人道支援】
人道援助
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/03 20:30 UTC 版)
人道援助(じんどうえんじょ)、あるいは人道支援(じんどうしえん)は人道上の目的で行われるあらゆる手段、または資金的・世論的・法律的な援助を提供すること。
一般には人道問題に対して行われ、主な対象は生命を維持し、苦しみを和らげ、個人の尊厳を守ることにある。従って開発援助とは区別されるかもしれないし、そのことは危機や緊急事態に導かれかねない社会経済的要因を和らげることが求められている。
人道援助
人道援助は国際連合総会決議46/182[1]や災害軽減における国際赤十字及び国際赤新月社並びにNGOに関する運営規約によると政府当局者や非政府組織、その他の非政府人道当局者により行われている。
資金
資金は個人、企業、政府などの組織から寄付で賄われている。人道援助の資金と配分は、益々多くの人に影響を及ぼす大緊急事態に迅速で効果的な援助を容易にする国際的な段階で組織されている(例:中央緊急援助基金参照)。国際連合人道問題調整事務所(OCHA)は国際連合総会決議46/182に従って危機や緊急事態に対する国際人道援助の調整を行っている。
また、大規模な国ベースの人道援助としては、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)による支援があり、世界中の非政府組織、援助団体、非営利団体に年間数百億ドルの援助が配分されてきたが、2025年に発足した第2次トランプ政権では、慈善ベースの支援モデルが廃止されるなど転換期を迎えた[2][3]。
基準作り
ジュネーブに本部を置く米豪系「NPO」HAPインターナショナル(人道援助の説明責任のための国際提携 (Humanitarian Accountability Partnership International) 、あるいは「人道援助の説明責任プロジェクト」[4])は協力者や被災者などの協力のもとで人道援助における説明責任や品質管理に関する基準 HAP2007 を作った。この認証計画は認定された団体がHAPの基準に従って人道活動の質を管理していることを保証することを目的にしている[5]。実際にはHAPの認定は(3年間有効)、組織の使命宣言、資金、管理体制に接することができる外部監査人がいて、運営と全体の責任に関する透明性を確保できることを意味している[6][7]。
HAPインターナショナルの説明としては、人道援助の説明責任と品質管理に関するHAP2007基準は、人道組織に向けた品質を保証する手段である。6つの基準に対する組織のプロセスや政策、成果を比較することで組織がその人道活動における品質と説明責任を保証する度合いを測ることができる。基準に則った団体は次の通りである。
- HAPの人道上の活動原則と人道上の責任体制に対する約束を宣言すること
- 人道上の品質管理体制を発展させ実行すること
- 主要な管理者に品質管理に関する主な情報を提供すること
- 受益者と代表がプログラム決定に参画できるようにし、インフォームド・コンセントを行うこと
- 能力を測定し、職員の需要を発展させること
- 不満処理の手続きを創設し実行すること
- 改良が続けられる過程を創設すること[8]
スフェア・プロジェクト便覧災害援助に関する人道憲章と最低限の基準は、主導的な非政府人道団体が共同で製作したもので、人道上の活動に関する次の原則を掲げている。
- 尊厳ある生命権
- 戦闘員と非戦闘員の区別
- ノン・ルフールマンの原則
品質範囲に基づく品質計画は、地球に対する多面的な計画であり、品質の追求よりも「最低限のもの」に基づく標準化の副作用と近付ける副作用を根拠に取り入れている。この計画はグループURDが先導している。
安全
人道援助活動に参加するあらゆる組織は、可能な限り援助活動家を安全にできるように独自の決まり、規定、予防計画がある。それにもかかわらずこうした活動につきものの危険と脅威が、常に存在し、それぞれに活動分野が独自のもののために活動を最小のものにし辛くなっている。比較的平穏で落ち着きのある地域でさえ暴力は突然起こり得る[9]。
このことから、人道援助活動主体として軍隊が選ばれることも増えている。軍隊の戦闘教義においては、戦争以外の軍事作戦(MOOTW)の一環として定義されており、軍隊が備える自己完結能力と自衛能力が活用される。ただし特に他国の軍隊については、その存在そのものが地元の住民や武装勢力を刺激する恐れがあるため、暴力に遭遇する頻度が増加し、軍隊自身、およびその近傍で活動する民間団体が危険にさらされる恐れも指摘されている。
脚注
- ^ A/RES/46/182
- ^ “米、対外援助組織の事業を正式停止”. ニューズウィーク (2025年7月2日). 2025年7月3日閲覧。
- ^ “5年間で1400万人に死亡リスク、トランプ政権の国際援助削減で 最新研究”. BBC (2025年6月30日). 2025年7月3日閲覧。
- ^ 国際赤十字・赤新月社連盟 監訳 日本赤十字社 世界災害報告 2002 p.162.
- ^ Capacity.org - 最大開発に向けた入口
- ^ エコノミスト誌 - 認定された援助組織、2007年5月24日
- ^ ロイター・アラートネット・サイト - 認定制度は援助組織を聞き上手にできるか。2008年6月6日
- ^ HAPインターナショナルサイト - HAP2007基準
- ^ Roberts, David Lloyd (1999). Staying Alive. 国際赤十字委員会. pp. 16. ISBN 2-88145-099-7
参考文献
- Larry Minear (2002). The Humanitarian Enterprise: Dilemmas and Discoveries. West Hartford, CT: Kumarian Press. ISBN 1-56549-149-1
- Waters, Tony (2001). Bureaucratizing the Good Samaritan: The Limitations of Humanitarian Relief Operations. Boulder: Westview Press.
関連項目
組織
組織の種類
外部リンク
- Active Learning Network for Accountability and Performance
- UN ReliefWeb
- AlertNet
- IRIN
- The ODI Humanitarian Policy Group
- The Center for Disaster and Humanitarian Assistance Medicine (CDHAM)
- Centre for Safety and Development
- EM-DAT: The International Disaster Database
- CE-DAT: The Complex Emergency Database
人道援助に関する評論
- A Bed for the Night: Humanitarianism in Crisis デヴィッド・リーフやジョアン・マイヤーとのインタヴュー
- Journal of Humanitarian Assistance ショーン・グリーナウェイ:ポストモダンの騒乱と人道活動:パラダイムへの疑問
人道支援
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:51 UTC 版)
国連(UN)によると現在、約230万人の子供たちが援助を受けられずにいる。開戦以来エチオピア政府はティグレ州への移動を厳しく制限しており、国連は食料の支援を巡るエチオピア政府との協議が進まないことについて非難した。ユニセフは「子供の栄養失調、薬、水、燃料、その他多くの必需品が不足している」と述べた。また、国連のWTP(国際連合世界食糧計画)は、ティグレ州では、人口の約4割が「極度の食糧不足」になっているとする報告書を発表した。2021年3月13日までに、国連と現地法人は約90万人分の食糧と、70万人分の水を供給した。しかし依然として支援は不足しており、約450万人が現在も支援を受けられずにいる。さらにそのうち約100万人は戦闘地域に居住しており、国連職員は現地に到達できていない。 開戦以来ティグレ州全域で衛生環境が悪化しており、清潔な水へのアクセスが困難になっている。州内における水の供給状況を調査したティグレ州の機関は、調査を行った36の村のうち、機能している水源を持っていたのは4つだけだと報告した。さらに推定250台の電動揚水システムが故障しており、農村部における井戸11,000台の状況は不明であった。このため、水系感染症や新型コロナウイルス感染症の発生リスクが大きく上昇している。 2021年2月、GOALエチオピア、国際救助委員会(IRC)、MCMDO、MSF-Spain、ワールド・ビジョンらは、ティグレ州の16の地区では、子供の7人に1人が深刻な栄養失調に陥っていると報告した。 さらにGOALとIRCによると、Enderta、Abi Adi、Shireでは調査を行った子供の16.6%が急性栄養失調であり、さらに3.5%は重度の急性栄養失調に苦しんでいた。緊急調整センターによると[誰?] 、ティグレ州の260以上の保健センターのうち、完全に機能しているのは31のみで、7つは活動を大きく制限され、残りは機能停止に陥っている。 WHOによれば、ティグレ州ではすべての病院と保健センターで医薬品や医療設備が不足していた。現地法人は医療施設の略奪が続いていると報告した。予防接種を行っているのは医療施設の16%のみであり、妊婦に対するケア(出産前ケア、出産など)を行っているのは17%のみであった。 2021年8月31日、現地におけるUSAIDのトップであるショーン・ジョーンズは、アディスアベバの放送局EBCによるインタビューにおいて、次のように語った。「TPLFはアムハラ州で我々の診療所を略奪した。彼らにとっては、医療物資を手に入れる絶好の機会だったのだろう。」
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