WPW症候群とは? わかりやすく解説

ダブリューピーダブリュー‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【WPW症候群】

読み方:だぶりゅーぴーだぶりゅーしょうこうぐん

Wolff-Parkinson-White syndrome発作性上室性頻拍一種心房心室の間で電気刺激伝え房室結節とは別にもう一つ伝導路ケント束)が存在するため、房室結節ケント束の中で電気刺激旋回することにより、頻拍発生する治療は、カテーテルアブレーションによって副伝導路焼灼する房室回帰性頻拍

[補説] 心筋を動かす電気刺激は、通常房室結節通って心房から心室へ伝わるが、この正常な伝導路以外にもう一つ伝導路がある場合房室結節電気刺激心房から心室へ伝わると同時に、副伝導路心室から心房電気刺激が戻る状態になると、2本の伝導路内を電気刺激旋回することになり、頻拍原因となる。


ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群

(WPW症候群 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/17 15:36 UTC 版)

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
本症患者の心電図。δ波が矢印で示されている。
概要
診療科 循環器学
分類および外部参照情報
ICD-10 I45.6
ICD-9-CM 426.7
OMIM 194200
DiseasesDB 14186
eMedicine emerg/644 med/2417
Patient UK ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群英語: Wolff-Parkinson-White syndrome、WPW症候群)とは、上室性の頻脈性不整脈の一つ。心臓自体には器質的疾患がないにもかかわらず特有の心電図所見を示し、しばしば偽性心室頻拍[1]を起こし[2]、またこれらの心電図異常が突然正常化する例が1915年頃から存在が知られ始め、1930年に多くの症例(12例)についての詳しい報告がなされた。症例を研究・発表したルイス・ウォルフ英語版ジョン・パーキンソン英語版ポール・ダドリー・ホワイト英語版の3人の名前から症状が名付けられたのが由来である。

機序

左側が通常の刺激伝導系、右側がウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群

原因として多くあげられるのは、Kent束(Bundle of Kent)と呼ばれる副伝導路の存在によるリエントリー回路の形成である。通常は洞房結節から発した電気信号は房室結節His束英語版プルキンエ線維を経て心室へ伝達される(刺激伝導系)が、この疾患では信号が刺激伝導系に加えてKent束を経由するルートにも伝わるため、発作が起きると拍動リズムが乱れる。発作時の脈拍は240回(bpm)以上に達することがある。また、あまりに心拍数が早すぎるために、脈を半分にとってしまう場合も多い。多くは放置しても自然に収まるが、長時間続く場合は投薬により抑える。失神などの症状もある。

また、Kent束は心房筋と同じ電気生理学的性質を有するため、心房細動時に心室への過度の伝導が生じ、とくに心房細動時にQRS間隔が0.2秒以内の例では心室細動に移行することもある。Kent束は、右房-右室(B type)あるいは左房-左室(A type)に存在するものがあり、稀に心室中隔に向かう症例もある。右房-右室(B type)では、右室が早期に興奮するために、興奮の伝わり方としては、右室が先で左室が後となるため心電図波形は左脚ブロック型となる。左房-左室(A type)ではその逆の右脚ブロック型となる[3]

心電図

正常な心電図の波形

心電図上の特徴としては、下記の3点が挙げられる。

  1. δ波の出現: P波の後に続くQRS波形にδ波(デルタは)が生じてくる。これは心室が早期に興奮することによる。δ波はQRS波の立ち上がり部分が斜めにゆっくり上昇し、三角形状の波が本来急角度で立ち上がるべきQRS波の前に追加されたような形状(Δ形)を示すことから名づけられた[2]
  2. PQ短縮: Kent束経由の興奮が、正常伝導路経由のそれより先に心室に伝導することによる。
  3. QRS延長: Kent束経由の興奮と正常伝導路経由のそれとが心室で合流し、幅広いQRS波を形成する。

また、心電図のV1の波形からA型、B型、C型と分類する方法も存在する。

臨床像

上室性頻拍、心房細動(Af)等を生じることが問題となるが、何も生じなければ自覚症状はない。

従来は高血圧脂質異常症(高脂血症)、肥満喫煙等の生活習慣をコントロールすることで改善されるとされてきたが、1980年代からの研究により、Afから心室細動(Vf)に移行するケースがあることが判明し、危険な不整脈であると位置づけられた。このため、発作が見られた場合は即座に専門医に診察してもらう必要がある。ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群に合併した発作性心房細動(PAF)は偽性心室頻拍と呼ばれ、通常のAfとは異なり、心房の興奮がKent束を介してそのまま心室に伝わるため、高度の頻脈、また心室細動から突然死に至る場合がある。特に心房細動の最短RR時間が250ms以下のものはハイリスクである[4]

治療

自覚症状が無ければ経過観察を行う。根治治療には血管カテーテルを用いたカテーテルアブレーションが極めて有効であり、90%以上で根治に至る。

房室回帰性頻拍の治療は迷走神経刺激、無効である場合にはアデノシン三リン酸(ATP)、シベンゾリン、またはカルシウム拮抗剤を静注する[5]

一方、発作性心房細動を合併した場合、ジギタリス、ATP製剤、カルシウム拮抗剤交感神経β受容体遮断薬(βブロッカー)などは禁忌である[要出典]。とくにジギタリスは、Kent束の不応期を短縮させる一方、正常伝導路をさらに抑制することとなりVfを誘発する可能性がある。 ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群に伴うAfの場合、治療薬としては、プロカインアミドが推奨される。

参考文献

脚注

  1. ^ 偽性心室頻拍は日本独自の名称で、欧米では「preecxited AF(早期興奮を伴う心房細動)」と呼ばれる。
  2. ^ a b WPW症候群(森博愛 心臓病と卯建のホームページ)
  3. ^ ハート先生の心電図教室(医学博士市田聡 心臓病看護教育研究会)
  4. ^ 永田恭敏 「1枚の心電図から最新の治療へ (PDF) 」 No.25 『日医雑誌』 2016;145(7):1448-1449.
  5. ^ WPW症候群の心電図と治療のポイント” (PDF). トーアエイヨー. 2024年1月18日閲覧。

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