SF史上における意義
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「ニューロマンサー」の記事における「SF史上における意義」の解説
『ニューロマンサー』はサイバーパンクSFの代表的タイトルとして認知されている。同じSF小説家であり、サイバーパンク小説のもう一方の代表者でもあるブルース・スターリングからは「おなじみの、古くさい未来とはおさらばだ」と評価された。 「サイバーパンク」と呼ばれるSFジャンル自体は、1981年のヴァーナー・ヴィンジの『マイクロチップの魔術師』によって拓かれたとされるが、従来の侵略・遭遇テーマ、米ソ冷戦時代を背景にした人類滅亡テーマが盛んに用いられたSF界では反主流であり、いわばキワモノ扱いされていた感が強く「サイバー」と「パンク」の2つの単語は、まだ奇妙な新語のレベルにとどまる時代であった。 その背景には、1981年当時のコンピュータ技術のレベルが、『マイクロチップの魔術師』で初めて披露された、世界のすみずみまでコンピュータネットワークと電子情報がめぐる世界を想像させるには、あまりに幼かったからと言える(ちなみに現在インターネットと呼ばれる電脳網が民間にも広がり始めたのは1986年)。 しかし、1982年に公開された映画『ブレードランナー』が、はからずも未開拓だったサイバーパンクの地盤を大きく押し広げる下地となる。同作で描かれた、環境汚染が進み、車が空を飛び、アジアの文化と最先端の機械文明が猥雑に混合した、暗く美しいアンダーグラウンド的未来世界のビジュアルは、それまで人々が持っていた『2001年宇宙の旅』に代表されるクリーンな未来世界のビジュアルや、『スター・ウォーズ』などのような明快なストーリーのSFのイメージを根底から覆すインパクトを持っており、カルト的と見られていたSFファンの中の、さらにカルトな人々を激しく魅了した。 そして1984年に本作が出版されると、SF界はこの作品に惜しみない称賛の声を送った。『ニューロマンサー』には、『ブレードランナー』で示された猥雑な未来世界のガジェットと、電子世界に人体を「接続」し、意識ごとダイブするというアイデアが結合されており、文句なく新しく「サイバー」であり「パンク」であった。 その一例として『ニューロマンサー』へのオマージュは数多くの作品で見られることがあげられる。『ハイペリオン』(著者ダン・シモンズ)に収録された小説の一編では「ギブスン」という名の伝説的カウボーイが強大なAIへのハッキングに成功した都市伝説がある、と語られている。 映画化企画も何度も上がったものの、全て幻となっている。ただし1995年に短編『記憶屋ジョニイ』をギブスン自身の脚本で映画化した『JM』には本作の要素も多く挿入されており、『マトリックス』も元は本作の映画化企画からスタートした作品である。
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