HTHS粘度の必要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/13 07:29 UTC 版)
「HTHS粘度」の記事における「HTHS粘度の必要性」の解説
通常、日本の法定速度で巡航するにおいてはHTHS粘度はさほど重要でない。公道で法定速度の下で走行時の油温は安定時で80℃前後であるのに対し、いわゆる熱ダレが生じるような条件は油温120℃を超えてからといわれるからである。しかし、HTHS粘度が問題になる程の高負荷な条件の下で使用しないとしても、HTHS粘度が高いオイルは耐熱、耐せん断性だけでなく総合的に優れた潤滑性能を持つオイルであるといえ、耐磨耗の安全マージン、ロングライフなオイルを選ぶ上での判断基準になる。オイルの負荷と粘度の影響はストライベック曲線(英語版)に表せられるが、オイルは高温になるにつれ粘度が低く(軟らかく)なり、油膜が破断して金属表面が直接擦れる境界・混合潤滑状態の領域が増え摩耗が進みやすい。一般的に潤滑油は粘度が高く(硬く)なるほど油膜は破断し難くなる。それ故耐摩耗性では粘度を高くした方が有利であるが、粘度が高くなるとフリクションロス(摺動抵抗)が大きくなり、省燃費・レスポンスが悪くなる。仮に同じような素性のベースオイルで5W-30と10W-40のオイルがあれば、当然10W-40のオイルの方が油膜が強い反面、燃費の面では不利になる。しかし、優れたベースオイル・添加剤でフォーミュレーション(ブレンド)されたオイルでは、5W-30であっても10W-40より優れた耐熱性・耐せん断性を持たせることが可能である。それをHTHS粘度の値で判断することができる。また同じような素性のベースオイルの5W-50と15W-50のオイルを比較すれば、大抵15W-50の方が40℃、100℃動粘度、HTHS粘度も高い傾向にある。しかし、エンジン始動直後(コールドスタートまたはドライスタート)は5W-50の方がオイル回りが早いので単純にどちらがエンジン摩耗対策で有利かは決められない。 例えば、粘度指数が低い鉱物基油にポリマーを多量に添加して処方した10W-40のオイルと、高粘度指数の合成基油に少量のポリマーを加えて5W-30に処方したオイルを比較すると、SAEの高温側(100℃)粘度では10W-40の鉱物油の方が高い粘度を示すが、150℃下においては5W-30の合成基油を用いたオイルの方が、高い粘度を維持できる場合がある。これは10W-40の鉱物油のオイルはポリマーがせん断され、粘度低下を起こしたことによる。 (必要以上にHTHS粘度を上げると燃費の面で不利になることから、用途に応じての見極めが必要になる) HTHS粘度は容器に表示されることは少ないが、情報公開が進むアメリカおいてはホームページにのプロダクトシートにて公表している。日本では前のレッドラインの正規輸入代理店(旧レッドライン西東京・現 NEOの輸入元であるアドバンテージ。現在のレッドラインの輸入元である日本レッドラインは、HPの問い合わせフォームで対応している)やFET(エフイーティー 現 エンジンオイル事業から撤退)など、ごく一部の業者がカタログ・パンフレットの代表性状の覧にHTHS粘度を記載していたが、一般的には非公表が多い。キグナス石油のエンジンオイル、バーンシリーズ(日本サンオイル製・SUNOCO)は、サイトの商品紹介ページの比較表にてHTHS粘度を公表している数少ない例である。エクソンモービルも一部グローバルに販売しているオイルに限り、サイトのプロダクトシートをPDFにて公表しているが、容器やカタログ、サイトの製品紹介のページには記載されていない。HTHS粘度の認知度が低いからであるといえる。一般的にドーナツマークを取得したAPI(Eolcs)正式認証オイルやACEA規格の認証、メーカーアプルーバル規格の表記があれば、最低でもその粘度や規格のHTHS粘度基準を満たしているといえる。
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