2016年熊本地震での被災
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「第一白川橋梁」の記事における「2016年熊本地震での被災」の解説
2016年(平成28年)4月14日の夜に熊本地方を最大震度7の地震が襲い、多くの被害をもたらした。この時点では阿蘇地区の被害は比較的少なく、地震以来全線で運転を見合わせていた南阿蘇鉄道も、4月16日の始発から運転を再開する予定となっていた。しかし4月16日未明にはさらに大きな地震が発生し、阿蘇地方にも多大な被害をもたらした(2016年熊本地震)。 地震以来、国土交通省が南阿蘇鉄道の復旧についてほぼ1年をかけて調査を実施し、報告書を発表した。それによれば、第一白川橋梁は立野側の橋台が下流側に404 mm、橋の中央へ337 mm移動して、鉛直方向に304 - 418 mm沈下し、また第1橋脚が下流側に258 mm、橋の中央へ307 mm移動して、鉛直方向に81 mm沈下していた。これらの橋台-橋脚間の部材には破断や座屈が発生し、第1橋台と第3橋脚のローラー支承も逸脱が発生していた。橋の中央部は最大190 mmの隆起が生じていた。この結果上部構造の部材に大きな応力が発生して、広範囲で耐力が低下している恐れがあるとされた。 部材の補強・交換には、いったん応力を解放してから残存耐力を調べなければならず時間がかかるとされ、早期の復旧のためには上部構造の架け替えが避けられないと結論付けられた。一方、下部構造については補強で対応できるものとされた。このための総工費は約40億円と見積もられ、工期は約5年とされた。 第一白川橋梁と並んで大きな被害を受けた犀角山トンネルは、高森側の約40メートルの区間に最大490 mmのずれが生じ、内壁のコンクリートに多くの剥落や浮きが発生していた。このため横ずれが生じた高森側約40メートルの区間については地山を丸ごと撤去してトンネルの坑門を約40メートル後退させ、これによって生じたスペースを第一白川橋梁の架け替え工事用ヤードとする構想が示された。しかしその後の検討の結果、斜面全体の防護や河川管理用道路の必要性から、犀角山トンネルについては山全体を除去してトンネルを撤去する方向とされた。 2017年(平成29年)12月22日に全線復旧費用の一部を盛り込んだ予算案が閣議決定された。赤字の鉄道事業者が大規模な災害で被災した場合に、実質的に国が復旧費のほとんどを負担して、鉄道事業者の負担をなくす新制度が導入され、南阿蘇鉄道がその適用第1号となった。2018年(平成30年)3月3日に復旧工事に着手されている。 その後、2019年(平成31年)2月1日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が南阿蘇鉄道の支援要請を受け、設計照査及び施工計画の照査を行うことを発表した。2020年(令和2年)6月10日には鉄道建設・運輸施設整備支援機構が上部工の工場製作などに係る指導業務を行うことを発表した。 橋そのものの復旧工事が本格化することに伴い、2021年(令和3年)2月16日には工事関係者が出席しての安全祈願祭が開かれるとともに、旧橋の撤去工事が開始された。橋へは下からのアクセスが困難で、地震により部品に負荷がかかっていることも考慮し、両岸に高さ35メートルの塔を建て、張り渡したケーブルから部品を吊り上げるケーブルクレーンを用いて橋を解体する(ケーブルクレーン直吊工法)。また解体作業中の橋も、ワイヤを用いて支える。なお、本体が撤去されたため、2021年に土木学会選奨土木遺産の指定が解除された。 旧橋の解体工事は同年4月末に完了し、2023年(令和5年)夏の全線再開を目指し、2022年(令和4年)1月下旬以降新橋の建設工事に着手する予定となっている。
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