2014年:プロポフォール過量投与
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「東京女子医大事件」の記事における「2014年:プロポフォール過量投与」の解説
2014年2月、頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた男児が、3日後の2月21日に急性循環不全で死亡した。術後投与されたプロポフォール(商品名ディプリバン)が原因だった可能性があり、東京都は病院への立ち入り調査を実施、警視庁は業務上過失致死容疑で捜査し、証言により男児には成人用量の2.7倍もの過量で投与されていたことが判明した。 プロポフォールは全身麻酔剤であり、人工呼吸器を使う際の鎮静剤としても使用されるが、過量においては呼吸や心拍が著しく低下する恐れもあり、また中毒になった際の解毒剤がなく救出手段がないため、製薬会社による添付文書では集中治療中の小児への投与を禁忌と明記している。また投与に対する事前説明はなく、必要とされる家族同意書も得られていなかった。 同年6月、大学の医学部長や理事長が会見を開いて謝罪した。 同大学医学部の非公式会見(大学側のトップの承認によるものではなく、むしろ内部対立が背景)、および捜査結果からは、過去5年間にわたり14歳未満の55人に63回ほど投与しており、過量投与も常態化していたと発表された。さらには同大学理事長の会見により、詳しい死因は不明ながら、同様の小児投与事例のうち12人が最短で数日後、最長3年以内に死亡していたことも公表された。 なお、報道でもよく混同されているが、こうした投与そのものが法律上で禁止されているわけではなく、あくまで製薬会社と臨床現場の共同で、世界各国統計調査により死亡例報告が相次いだ使用ケースにおいては、説明書において使用禁忌が明記されるのに留まるのが現状である。同大学においても医師個人の判断でこうした使用ができるものではなく、個別症例により他の薬剤では代用が効かない際に学内倫理委員会に審査に出して承認される必要があり、家族の同意書も必須である。 翌2015年2月6日、第三者委員会は事故調査報告書をまとめ、病院の過失を認定した。病院側は、安全対策について改善を実施している。 この事故により、厚生労働省は再度特定機能病院承認取り消しを含めた処分を検討し、同年4月14日、厚生労働省社会保障審議会(医療分科会)において、特定機能病院の取り消しに相当する意見書をまとめることが決まった。 またこの件を受け、日本私立学校振興・共済事業団は同大学の運営に問題があるとして、同大学への補助金を4億円減額した。 死亡した男児の両親が、約1億8,000万円の損害賠償を求めて提訴した民事裁判が、東京地方裁判所で2021年1月19日開かれ、結審した。判決言い渡しは、2021年6月24日の予定。 2021年1月26日、東京地方検察庁は麻酔科医2人を業務上過失致死罪で在宅起訴した。警視庁は2020年10月、今回在宅起訴された2人を含む麻酔科医6人を書類送検したが、東京地方検察庁は残りの4人について「過失の度合いが低い」とし、1月26日付で不起訴(起訴猶予)とした。 2021年6月24日、東京地方裁判所は麻酔科医ら5人に6000万円の賠償義務があるが、病院側が弁済したことを理由に賠償義務を事実上取り消す判決を下し、判決は確定した。
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