2011年夏季の電力危機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 14:52 UTC 版)
「東日本大震災による電力危機」の記事における「2011年夏季の電力危機」の解説
例年夏場には冷房需要急増に伴って需要が年間のピークを迎える。東北電力では8月最大供給1,230万kW(東京電力からの融通見込みを含めると1,370万kW)に対して8月最大需要1,300 - 1,380万kW(5月13日発表値)、東京電力では7月末最大供給5,520万kW(東北電力への融通見込みを含めると5,380万kW)に対して7月末最大需要5,500万kW、8月末最大供給5,620万kW(同5,480万kW)に対して5,500万kWと、それぞれ再び供給不足に陥ることが予想された。 経済産業省は5月13日、東北電力・東京電力管内において需要の一律15%削減(ピークカット)を目指すことを発表した。そのうち、契約電力500kW以上の大口需要家に対しては、需要がピークに達する下記時間帯において、前年同期の最大電力量から15%削減した電力量を上限とし、(1時間毎の電力量値が)これを超過した場合は罰則を伴う「電力使用制限令」(電気事業法第27条に基づく)を7月1日から発動した。電力使用制限令の発動は、1973年のオイルショック以来、38年ぶり。 この制限令では、今回の地震による被災地域・福島第一原発事故の被災地域の需要家は対象外となっているほか、医療、介護福祉、交通、物流、インフラ供給のほか、使用量変動が少なく削減が困難な半導体工場、稼働時間が限定される新聞印刷工場などで、削減幅を緩和したり、削減時間帯を調整したりする緩和措置がとられている。 さらに、関西電力でも6月10日に法的強制力の無い15%の節電要請を行っている。6月15日に北陸電力も節電要請を行った。 節電措置としては、まず単純に削減可能な電力を削減した上で、必要な電力については使用時間を規制時間帯以外の夜間・早朝あるいは土日祝にずらす方法がある。また、複数の工場・事業所を持つ企業内で、電力量の合算値で削減することを認める「共同使用制限スキーム」が導入され、企業内での調整が可能となっている。 電力会社 要請日 実施期間 実施時間 削減目標値 法的強制力 備考 東北電力 5月13日 7月1日 - 9月9日(土・日・祝日除く) 9:00 - 20:00 15% 有 東京電力 5月13日 7月1日 - 9月22日(土・日・祝日除く)※9月9日に前倒し終了。これ以降は強制力なし 9:00 - 20:00 15% 有 関西電力 6月10日 7月1日 - 9月22日(土・日・祝日除く) 9:00 - 20:00 15% 無 北陸電力 6月15日 設定無し 設定無し 設定無し 無 このほかの中部電力・中国電力・九州電力でも原子力の点検等停止や火力のトラブル停止等により供給が低下したことで、融通範囲に入る四国電力も含めて西日本でも「国民生活及び経済活動に支障を生じない範囲での節電」を呼び掛けた。 こうして実施された節電措置等により、2011年の7月・8月中に電力が危機を迎える事態は回避された。東京電力では8月18日15:00台の4,922万kWが最大でピーク時昨年比1,077万kW(-18%)低減され、使用電力量も7〜8月通期昨年比-14%低減された。東北電力管内では8月9日14:00台の1,246万kWが最大でピーク時昨年比311万kW(-20%)低減され、使用電力量も7月通期昨年比-11%、8月通期昨年比-17%低減された。経済産業省は8月30日に、例年のピークの時期を過ぎ、今後は気温が次第に低下して需要も減少していくと考えられ、供給に余裕が出てきている事および被災地から早期終了を求める声が上がっている事などを理由に、東北・東京電力管内の地震と豪雨(平成23年7月新潟・福島豪雨)の被災地では9月2日、その他の東京電力管内では9月9日に電力使用制限令を解除し「努力目標」としての削減要請に切り替えることを発表し、早期解除を行った。
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