2010年3月からのデモ活動
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「反独裁民主戦線」の記事における「2010年3月からのデモ活動」の解説
反独裁民主戦線は2010年も前年と同じ要求をするため、反政府デモを繰り返した。 2010年(平成22年)3月14日、反独裁民主戦線はデモ参加者の動員を開始し、バンコクで約10万人規模の反政府集会を始め、首相のアピシットに退陣と選挙実施を改めて求めた。国外にいたタクシンは連日、集会でビデオ演説し政府を批判し続けた。また国内各地では小規模ではあるが擲弾による爆発事件が断続的に発生した。 3月16日、デモ参加者は議会解散要求に応じない政府に抗議し、デモ参加者から集めた血液を首相府前で撒き散らした。3月17日、デモ参加者はバンコク中心部にあるアピシットの自宅前にも血液を撒いた。 3月20日、約6万5千人のデモ参加者がバンコクの主要道路をバイクやトラックで行進し、一部道路の通行が規制され大渋滞となった。1週間後の27日にも約9万人のデモ参加者がバンコクで行進を行った。 4月7日、国会を包囲していた数百人のデモ参加者は建物内には進入しなかったが、国会の敷地内に乱入した。国会建物内に残っていた副首相のステープ・トゥアクスパンは軍のヘリコプターで脱出して避難した。これらの事態を受け、アピシットは夕方、テレビ演説を行い、バンコク都と他5県に非常事態宣言を発令した。 4月9日、デモ参加者はパトゥムターニー県にあるタイコム社の通信施設に乱入した。その際、治安部隊との衝突で共同通信社の日本人記者を含む10人以上の負傷者が出た。 4月10日、治安部隊は放水やガス弾を使用してバンコク都プラナコーン区にある民主記念塔付近にいたデモ参加者の強制排除を開始した。デモ参加者は激しく抵抗し、取材中だったロイター通信カメラマンの村本博之を含む25人の死者と800人以上の負傷者を出す事態となった。結果として、デモ参加者の強制排除は成功しなかった。 4月15日、反独裁民主戦線は、民主記念塔付近のパンファー橋とバンコク都パトゥムワン区にある商業地区中心部のラチャプラソン交差点の2ヵ所で行っていた反政府集会を、ラチャプラソン交差点を中心とした一帯に集結させることを決めた。 4月28日、デモ参加者約2000人と治安部隊約1000人がパトゥムターニー県の幹線道路で衝突し、治安部隊側1人の死者と18人の負傷者が出た。 4月29日、デモ参加者の一部は反独裁民主戦線が占拠している地域近くのチュラロンコン病院に「治安部隊が潜んでいる」として乱入した。ただ治安部隊の存在は確認できず、幹部は後に病院側に謝罪した。乱入騒動を受け、多数の患者が他の病院に転院した。 5月3日、アピシットは、事態収拾に向け和解案を表明し、5月4日、反独裁民主戦線も和解案受け入れを決定した。この合意を受け、デモは終結するかに思われた。 5月12日、首相秘書官長のコープサックは反独裁民主戦線が和解案受け入れを表明したにもかかわらず、反政府集会を続けたとして、アピシットが提案した解散総選挙案の白紙撤回を発表した。 5月13日、反独裁民主戦線強硬派の「セーデーン」ことカティヤ陸軍少将がルンピニー公園内で何者かに狙撃された。この狙撃事件をきっかけにデモ隊と治安部隊の衝突が始まった。なお、カティヤ陸軍少将は後日、5月17日に死亡した。 5月16日、政府は非常事態宣言の対象都県を拡大し、発令地域は22都県になった。 5月19日早朝、治安部隊はラチャプラソン交差点を中心としたデモ占拠地域の強制排除を開始し、ルンピニー公園付近のデモ参加者側バリケードを装甲車が破壊して突入した。銃撃戦も始まり、デモ参加者はタイヤに放火するなどして抵抗した。午後、反独裁民主戦線幹部のナタウット・サイクア、チャトゥポーン・プロムパンらは集会場で演説し、「これ以上仲間の命を失いないたくない」としてデモ活動停止を発表し、デモ参加者に帰途に就くようにうながした。その後、幹部の多くは警察に出頭したが、デモ参加者の残党がバンコク都内の映画館、タイ証券取引所、バンコク銀行、テレビ局などに放火してまわり、セントラルワールドの一部が炎上、一部倒壊するなどした。夜、政府は夜間外出禁止令を発令した。 5月20日、デモ占拠地域内の寺院に一時的に避難していた約5000人のデモ参加者は、政府が用意したバスで帰途に就いた。 5月末になると、デモ活動の混乱はある程度おさまった。なお、2010年3月からの反政府デモ活動の死者は91人、負傷者は1400人以上にのぼった。 12月22日、アピシットは「治安が回復した」と判断して非常事態宣言を全面的に解除した。
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