顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
a.病因、病態、病理
第4染色体長腕の端(テロメア側)に遺伝子座があります。遺伝子はまだクローニングされていませんが、遺伝子内に3.3kbのくり返し配列があり、患者さんではその繰り返し配列が短いのです(正常では50kb 以上ですが、患者さんでは28kb以下)。そのくり返し配列の長さは、調べることができますので、それが診断に役立っています。
筋病理は症状の多様性を反映して多彩です。病初期にはほとんど変化がないこともあります。進行すると、筋ジストロフィーに共通な所見(壊死、再生、結合組織の増加)をみますが、反応性の細胞浸潤が多いのが特異的で、筋炎との鑑別が難しいことがあります。
b.臨床症状
まず顔面筋罹患(表情が少なくなる)で気付かれるか、手が上がらないことで気付かれます。発症年齢は幼児期から壮年期までと幅があります。軽い顔面筋罹患のみで、本人も一生涯、気付かぬ程軽い人もいます。
典型例は顔面筋罹患と、上肢挙上困難がみられます(高いところに物を持ち上げられなくなったとの訴えが多いです)。診察の時、両手を水平に伸展して、バンザイするように依頼することで、最もよく評価できます。肩甲帯筋の筋萎縮が著明なので、肩甲骨が目立ちます。それを翼状肩甲(wing scapulae)といいます(図25)。
初期症状として顔面の筋力低下(表情がなくなる)が主な人もいるが、多くは上肢の挙上困難がある。 バンザイをするように依頼しても出来ず、肩甲骨の突出が顕著となる。 写真は肩甲骨の突出(翼状肩甲)を示している。 | |
図25:顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー |
検査所見では血清クレアチンキナーゼ(CK)値は症状の程度を反映して、正常−高度上昇と幅があります。筋電図では筋原性に加えて、しばしば神経原性の所見をみるといわれています。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 16:06 UTC 版)
「筋ジストロフィー」の記事における「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー」の解説
常染色体優性遺伝。第4番染色体長腕に遺伝子座。原則として両親のどちらかが病気であるが、両親が全く正常で突然変異による発症と考えられる例が30%ある。病名のように顔面、肩甲部、肩、上腕を中心に障害される。進行すると腰や下肢の障害も生じ歩行困難となることもある。顔面筋の障害により閉眼力低下、口輪筋障害(口笛が吹けない)などを来たし、独特の顔貌(ミオパチー顔貌)を呈する。肩や上腕の筋萎縮が高度なのに比し前腕部は比較的保たれるため、ポパイの腕と形容される。下肢の障害は、下腿に強いもの、腰帯・大腿に強いものなどいろいろである。CK上昇は軽度である。比較的良性の経過をたどり、進行すると腰や下肢の障害も生じ歩行できなくなることもあるが、生命に関しては良好な経過をとる。筋症状以外では、感音性難聴、網膜血管異常の合併が高率であり、まれに精神遅滞やてんかんの合併がある。
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