メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー
メロシン(ラミニンα2鎖)は筋肉の細胞膜の外側を覆う基底膜を構成する蛋白です。メロシンはαジストログリカンと結合しています(図6参照)。最近非福山型(古典型)先天性筋ジストロフィーの中に本症が見いだされ、注目を集めています。
a.病因、病態、病理
メロシンをコードする遺伝子(第6染色体長腕にあります)に変異をみます。その変異は点変異、欠失などがありますが、点変異が多く報告されています。筋病理は福山型とほぼ同じで、強い結合組織の増加をみます。メロシン抗体で筋細胞膜が染色されないので、診断は容易です。また電子顕微鏡でみても基底膜は不明瞭で断裂しています。皮膚の基底膜にもメロシンが欠損しているので、皮膚生検でも診断ができます。
b.臨床症状
欧米では非福山型(古典型)の約半数はメロシン欠損型ですが、本邦でのメロシン欠損型の報告は少なく、非福山型の10%以下と推定されています。
症状は福山型にとてもよく似ていますが、メロシン欠損型には中枢神経症状はみられないか、あっても軽度であることが異なっています(まれに福山型と同程度の重症型も報告されているます。そのときは福山型と区別しにくいと考えられています)。全身(顔面筋も含めて)の強い筋力、筋緊張低下、関節拘縮があります。座居までは獲得しても、歩行を獲得する例は少ないことも、福山型に似ています。
c.臨床検査所見
血清クレアチンキナーゼ(CK)値は福山型と同程度(10〜数十倍)に上昇します。中枢神経症状はないのに脳CT/MRI異常が必発で診断的です。白質の髄鞘化不全の所見をみ、それは白質ジストロフィー(leukodystrophy)の所見と一致します(図21)。
![]() | 正常(右)に比較すると、本症(左)では白質ジストロフィーのような強い変化をみる(熊本大学発達小児科 大谷助教授のご好意による)。 本症には診断的な重要な所見である。 |
図21:メロシン欠損型先天性筋ジストロフィーの脳MRI像 |
メロシン欠損型先天性筋ジストロフィーと同じ種類の言葉
ジストロフィーに関連する言葉 | 先天性筋強直性ジストロフィー 進行性筋ジストロフィー(しんこうせいきんジストロフィ) メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー リポジストロフィー ベッカー型筋ジストロフィー |
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