つら‐うち【面打ち】
めん‐うち【面打ち】
面打ち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 20:28 UTC 版)
能面は、ヒノキでできているものが一般的であり、キリでできているものもある。ヒノキは木目が比較的そろっていて彫りやすく、寿命も長いからだと考えられる。木曽檜が山で切り出され川で流されている間にヤニが抜けたものが最良であると言われるが、現在では入手が困難である。 能面を制作することを「打つ」という。 現在の能面の制作(面打ち)は、古面の模作面(写し)を作ることが主流である。写しを制作する場合、まず本面を傷つけないよう慎重に型紙を作った上、大まかには次のような工程を経るとされる。 木取りよく乾いたヒノキを、鑿と木槌で割る。木の中心側(木裏)が表側に、樹皮側(木表)が面裏になるような「板目」で木取りをする。これは、ヤニが表面に滲み出ることがあっても能面に損傷を与えないためであるという。もっとも、これに対し疑問を呈し、年輪に垂直に木取りをする「柾目」もあり得、古い面では板目も柾目もあり様々であるという意見もある。 荒彫り面の輪郭以外の部分を鋸で切り取り、表面の輪郭を削りながら整える。 中彫り徐々に細かい顔形を彫り進める。また、面裏を大まかに削る。型紙を当てながら、凹凸を削り出す。 木地の仕上げ彫刻刀で目鼻口の形を整え、目鼻口の穴を開け、紐穴を開ける。また、面裏の彫刻を整える。 面裏の漆塗り面裏には、漆を塗る場合が多い。これにより木地に耐水性・耐久性を持たせるが、漆を乾かすには、温度・湿度を微妙に調節する必要があり、時間もかかる。 彩色(さいしき)胡粉(牡蠣の貝殻から作られていることが多い)と膠で下地塗りをする。下地の表面は、磨く場合と、磨かない場合がある。古い面では、ヤニ止めのため、木地上に和紙を貼り、その上から胡粉下地を塗る紙彩色という手法がとられていることがある。 胡粉下地の上に、顔料を入れて色を調整した胡粉上地を塗り、肌合いを出す。その上に上塗りを施すこともある。落ち着いた色調を出すため、すすを用いた液で古色を施す。 口には朱、目には墨を入れ、眉、髪、毛描などの着色を行う。 金具・植毛面によっては、目や歯に、鍛金や鍍金によって成形した金具を入れる。また、翁面・尉面では、毛を木地に植え付けて髪・眉・髭などを作る。毛は、馬のたてがみや尾の白毛を用いる。尉面では髪を結う。 面打師の北澤三次郎は、「木の中には完成された面の姿を見ていて、それをいかに引き出すか、いかに余分なものを削り払っていくかということが実際の作業である。技術は表現しようとすることの手段であって、心理や思考が優先する。」と述べている。
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