靖国神社公式参拝の問題
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「政教分離原則」の記事における「靖国神社公式参拝の問題」の解説
「靖国神社問題」も参照 政治と靖国神社の関係について、「特権付与の禁止」と「国の宗教活動の禁止」の視点から議論がなされてきている。 1985年8月14日に、政府は「内閣総理大臣その他の国務大臣がその資格で参拝することは、憲法第二十条第三項との関係で問題がある。断定はしていないが違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」という従来の政府統一見解 を変更して、「正式な神式ではなく省略した拝礼によるものならば閣僚の公式参拝は政教分離には反しない」という見解を打ち出し、8月15日に中曽根康弘首相が靖国神社を公式参拝し供花代金として3万円の公費を支出した。この参拝について、仏教、キリスト教信者が中心となって、信教の自由、宗教的人格権、宗教的プライバシー権等の侵害を理由に損害賠償・慰謝料を求める訴訟を行った。福岡高裁(平成4年2月28日)判決は、靖国信仰を公認し押しつけたものとは言えず、信教の自由の侵害はない、としたが、傍論において公式参拝が制度的に継続的に行われれば違憲の疑いがあるとした。大阪高裁(平成4年7月30日)判決も、今回は具体的な権利侵害はないが、公式参拝自体は違憲の疑いが強いとした。小泉純一郎首相も靖国神社を参拝したが「私的参拝」であるとして公費の支出もしなかった。千葉地裁(平成16年11月25日)判決、東京高裁(平成17年9月29日)判決は憲法判断を避け、原告の請求を棄却した。他方、福岡地裁(平成16年4月7日)判決と大阪高裁(平成17年9月30日)判決は原告の控訴を棄却したが、傍論で違憲に言及している。 また、岩手県靖国神社訴訟では、1962年から毎年岩手県議会が行っていた靖国神社への玉串料公費支出と県議会が総理大臣の靖国公式参拝を求める決議をしたことをめぐって住民訴訟が争われた。一審の盛岡地裁(昭和62年3月5日)判決は、社交儀礼であって政教分離に反しないとしたが、二審の仙台高裁(平成3年1月10日)判決は、特定の宗教団体への関心を呼び起こし、かつ靖国神社の宗教的活動を援助するもの」で政教分離に反するとした。 さらに愛媛県靖国神社玉串料訴訟では、愛媛県知事が靖国神社・県護国神社に玉串料を22回計16万6000円を公費支出していた事実を争った住民訴訟で、一審の松山地裁(平成元年3月17日)判決では「同神社の宗教活動を援助、助長、促進する効果を有するので、違憲」とした。二審の高松高裁(平成4年5月12日)判決は、金額も少なく社会的な儀礼の程度で、神道の深い宗教心に基づく行為ではないから合憲としたが、最高裁(平成9年4月2日)判決は、玉串料の奉納は県が特定宗教団体と意識的に特別な関係を持ったことになり、一般人に対して靖国神社は特別な宗教団体であるという印象を与えるので、目的効果基準に照らして違憲であるとした。 次は政治家の参拝が違反であるという意見と合憲であるという意見の例である。 日本の政治家による靖国神社への参拝は、この政教分離原則に反するという説 この政治家への徹底は不可能であるとの論に対し、 政治家は国の機関であり、同条3項の国の機関による宗教的活動に該当するという説 政治家が参拝すること自体が、間接的な靖国神社への特権となるという説 靖国神社とは東京招魂社であり、元々が国家的権威の元で主導されたものである。同時期に建立された明治神宮のように最初から別格の存在である。 また、新年に首相以下の閣僚がこぞって参拝する伊勢神宮に対しては同様の批判の声は比較して少ないことから、靖国神社に対する政治的意図を持った批判であるとされる。(靖国神社問題参照)
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