電気通信における通信の秘密
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 10:23 UTC 版)
「通信の秘密」の記事における「電気通信における通信の秘密」の解説
憲法第21条の通信の秘密は、公権力による積極的知得行為の禁止と、通信業務従事者による漏洩行為の禁止という、二つの面を定めたものである。ただ、通信の内容や存在、相手方といった事実を知られることなく、秘密のうちに通信を行うことができることは、個人の私生活の自由を保障する上でも、自由なコミュニケーションの手段を保障する上でも大変重要である。 このことから、日本国憲法第21条第2項の趣旨を受けて、電気通信事業法などでは、これらの事項について広く通信当事者以外の第三者が正当な理由なく故意に知ったり、自己又は他人のために利用したり、第三者に漏えいすることに対して刑事罰を定めている。具体的には、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密については、電気通信事業法(第4条・第179条)、有線電気通信における通信の秘密は有線電気通信法(第9条・第14条)、無線通信における通信の秘密は電波法(第59条・第109条)により、通信の秘密はそれぞれ罰則をもって保護されている。 インターネットを利用して行われる通信についても、インターネット接続事業者のサービスを利用して行われるような場合、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密に該当するため、電気通信事業法に定める保護が与えられ、それ以外の場合にも、必要に応じて有線電気通信法や電波法などの保護が与えられている。 なお機械的な処理により、人の手による監視がない場合であっても、通信の秘密を侵害したことには変わりはない。そのため、インターネットサービスプロバイダのルーティングや電子メール配送などの行為は、すべて通信の秘密を侵害しているとされている。ただし、当事者の同意がある場合、そもそも通信の秘密の侵害とされないことから、オプションで提供するウイルスチェックサービスや、迷惑メールフィルタリングサービスは、通信当事者の片方である受信者の同意が取れていることから、通信の秘密の侵害にはあたらないとされている。また、特定のソフトウェア(P2Pなど)による通信をインターネットサービスプロバイダが遮断する場合のように、通信の秘密の侵害が行なわれた場合などは、違法性阻却事由が存在し、違法とはされないと解されている。 2006年5月、ぷららネットワークスがWinnyの遮断を発表したことに対し、総務省が「通信の秘密の侵害に該当し、違法である」という指摘を行なった。これについては、その後デフォルト・オンでWinnyやShareなど、違法性の高いP2Pの遮断サービスを提供するものの、その後利用者の希望に応じて、通信遮断が解除できるなどの幾つかの条件を付して総務省が容認した。その条件については基本的に「電気通信事業者が行う電子メールのフィルタリングと電気通信事業法第4条(通信の秘密の保護)の関係について」の考え方が踏襲されていると思われる。また、迷惑メール(スパムメール)対策としてのOutbound Port 25 Blocking (OP25B)が、通信の秘密を侵害し、違法であるかについては2006年11月に総務省が「通信の秘密を侵害するが、正当業務行為であるとして違法ではない」という判断を下している。 インターネットサービスプロバイダが行なう、各種の行為が通信の秘密の侵害として違法であるかどうかについては、電気通信事業関連の4団体(社団法人日本インターネットプロバイダー協会、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟)が、2007年5月に「電気通信事業者における大量通信等への対処と通信の秘密に関するガイドライン(第1版)」を策定した。 若年層によるソーシャル・ネットワーキング・サイトの利用が拡大したことを契機に、ウェブサイトでの個人情報のやり取りを禁止し、直接会うことを未然に防ぐ方策について議論がなされている。しかしながら、電気通信事業者であるサイト運営者が、ユーザー間のメッセージを監視し、削除などの措置を取ることは、通信の秘密を害するとの指摘がされている。
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