開発再開の動きと保全運動
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URは政府がほぼ全額出資しているが、2012年、会計検査院の調査を受け、大量の未利用地を抱える状況を改善するよう求められた。同時に、UR(都市再生機構)の開発事業の終了期限が2014年3月末に迫り、未開発のまま土地を抱えておくことができなくなった事情を抱えた。 工事の本格的な再開が見込まれたことをうけ、日本自然保護協会と亀成川を愛する会では、地元の37の団体の賛同も得て、この場所の生態系の保全と土地利用計画の見直しを求める要望書をURと千葉県に提出した。 しかし会計検査院の調査直後の2012年11月、URは40年ぶりに宅地造成を再開し、まずは草地の南側の樹林(森)を伐採した。その森は、フクロウやキンランといった希少種が見られた場所であった。このURの開発再開について、地元からは「売れるあてがないのに、なぜ造成をごり押しするのか」との批判が上がった。亀成川を愛する会と日本自然保護協会は、この事態をうけて2013年2月に緊急シンポジウムを開催し、また3月に保全をもとめる要望書を宍塚大岩田線の整備促進提出した。 その際、専門家から寄せられた評価(抄)は以下である。 「日本の草原特有の生物が多く生息している、極めて高い学術的価値を持つ草原」 - 西脇亜也(宮崎大学教授)「関東平野一帯を見渡しても、これほど生物相の豊かな里山環境はほとんど残されていない」 - 小柳知代(早稲田大学助教)「今後の都市域における生物多様性保全のモデルにもなるのではないか」 - 井上雅仁(島根県立三瓶自然館) 2013年6月13日には、日本の研究者で組織する日本生態学会や日本植物分類学会、及び千葉県生物学会の 3学会が、造成の一時中断や草原の保全などの要望を UR理事長、千葉県知事森田健作、千葉県企業庁長、印西市長宛に申し入れた。以下は日本生態学会の要望書(妙)である。 要望1.都市再生機構は、造成工事をいったん中止し、地域の自然環境の価値を活かした土地利用を再検討してください。2.千葉県は、印西市とともに、この地の総合自然環境調査を行ない、その自然科学的価値と文化的価値を正しく評価し、その保全と維持管理にむけた計画を立案してください。 3.事業者である県・都市再生機構は、研究者等専門家からの自然環境・生態系サービスに関する学術的調査が行われる際に、立入りを認めるなど、協力してください。 — 日本生態学会自然保護専門委員会 この際に、東邦大学理学部准教授の西廣淳(にしひろじゅん、保全生態学)は「関東地方で保全すべき草地を1カ所あげるとすれば、この地域だ」との見解を示した。ほかに、日本自然保護協会と地元の市民団体も要望書を提出した。一方、UR千葉ニュータウン事業本部は「事業終了期限の2014年3月までに造成を終えたい」とした。 このため、地元の市民団体が草深原の環境保全を目指す署名活動を行い、2013年8月までに、およそ8000筆を集めた。また、東京農業大学元学長の進士五十八は、解決策として、狭山丘陵のトトロの森で行われた、市民が寄付を集めて土地を買い取るナショナル・トラスト(国民環境基金)方式もあり得ると語った。しかし当地は都市開発が進められる予定である市街化区域ということもあり、土地の値段が極めて高く、トラスト費用は数十億円必要となることからも実施されていない。なお一部では市民によるトラストが行われているという報道もあるが、これは誤りである。 2012年6月から8月にかけて、全国の新聞やテレビで関連報道が続いた。URは番組上で「2014年3月までは工事を行わない」との回答を行ったと報道されている。
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