録音とミキシング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 21:45 UTC 版)
「カーニヴァル・オブ・ライト」の記事における「録音とミキシング」の解説
ビートルズ研究家として知られるマーク・ルイソン(英語版)は、1987年にこの楽曲を聴き、著書『ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版(英語版)』の中で次のように述べている。「ディストーションを効かせた単調なドラムスとオルガン、やはりディストーションを効かせたリードギター、教会のオルガン、数種のエフェクト(水でうがいをする音など)と声、大量のテープ・エコーをかけた言語に絶するさまざまなサウンド・エフェクトと騒々しいタンバリンが録音されている。しかし、中でも強烈なのは、トラック3で聞かれるものすごい声だ。ジョンとポールが狂ったようにわめき、「Are you alright? (大丈夫かい?)」とか「Barcelona!(バルセロナ!)」といった文句を思いつくままに怒鳴る。」 ポール・マッカートニーの公式伝記の執筆者バリー・マイルズ(英語版)は、その著書『ポール・マッカートニー メニー・イヤーズ・フロム・ナウ(英語版)』の中で、楽曲には、ときどきパーカッションやリズミカルなピアノの叩きつけるような音によって数小節間、安定した拍子が続くところがある以外にリズムはなく、たまに旋律の断片が目立ちそうになるところ以外にメロディーもない、と述べている。 マッカートニー自身は2008年11月のインタビューで、「この曲で必要なのはとりとめなくさまよって、バンと音を出したり、楽器を弾いたりすることで、意味なんか必要ない。ドラムを叩いて、それからピアノのところにふらふらたどり着いて、ちょっと音を出して、またさまよう、という具合だ」と語っている。 バス音を奏でるオルガンとドラムスは速度を落として録音されたため、より奥行きの深い音になっており、楽器の音やレノンとマッカートニーの声には大量のリバーブがかけられている。2人はさらにネイティブ・アメリカンの戦での雄叫びや、口笛、近距離で盗聴したようなあえぎ声、咳、スタジオでの会話の断片などを録音した。他にこの曲にかぶせられているのは、ギターのフィードバックによる破裂音、感傷的なオルガン、騒々しいピアノ音の断片、レノンが「Electricity!(電気!)」と叫んでいる声の電気的フィードバック音などである。トラックはマッカートニーの「Can we hear it back now?(今の再生して聴かせてもらえるかい?)」というエコーのかかった声で終わっている。 また、前出のバリー・マイルズによれば、音楽的には「フランク・ザッパのアルバム『フリーク・アウト!』に収録の「ザ・リターン・オブ・ザ・サン・オブ・モンスター・マグネット(英語版)」に似ているが、「カーニヴァル・オブ・ライト」の方にはリズムやメロディーがなく、より断片的で、抽象的かつ真面目」とのことである。 ダドリー・エドワーズ(英語版)は、この楽曲の中にアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録の「フィクシング・ア・ホール」の初期のテイク が使用されていると語っているが、「フィクシング・ア・ホール」のレコーディングが開始されたのは『The Million Volt Light and Sound Rave』の終わった5日後であり、初期のテイクが使用されたというのは考えにくい。しかし、マッカートニーがこの楽曲中で「フィクシング・ア・ホール」を実際に数小節演奏したという可能性はある。 様々な報告から、楽曲の長さは14分程であることが分かっている 。ポール・マッカートニー自身は15分位と述べており、マーク・ルイソンによる『ビートルズ全記録 Vol.2 (1965 - 1970)』(英語: The Complete Beatles Chronicle)では13分48秒とされている。 ルイソンの著書の中ではこの楽曲のモノ・ミックスがヴォーンに渡されたとあるが、マイルズは完全にステレオとしてミキシングされ、音の層や質を組み立てていく作業であったと主張している。イベントの後に2つ目のミックスが製作されたのか、あるいはヴォーンに渡されたのは実際にはステレオ・ミックスで、ただ作業の記録がアビー・ロード・スタジオの録音日誌に残っていなかったのかは不明である。
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