量子重力との予想される関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 08:40 UTC 版)
「モンストラス・ムーンシャイン」の記事における「量子重力との予想される関係」の解説
2007年、エドワード・ウィッテン(Edward Witten)は、AdS/CFT対応が (2+1)-次元の反ド・ジッター空間の純粋量子重力と、臨界で正則CFTの間の双対性を主張していると示唆した。(2+1)-次元の純粋重力は自由度を持たないが、しかし宇宙定数が負のときにBTZブラックホール解が存在するために非自明なことが起きる。ハーン(G. Höhn)により導入された臨界CFTは、低エネルギーではヴィラソロプライマリー場を持たないということにより特徴づけられ、ムーシャイン加群が一つの例となっている。 ウィッテンの提案(Witten (2007))に従うと、AdS空間内の最大の負の宇宙定数を持つ重力は、中心電荷 c = 24 {\displaystyle c=24} でCFTの分配函数がちょうど j − 744 {\displaystyle j-744} となる正則CFTのAdS/CFT双対である。この正則CFTは、ムーンシャイン加群の次数付き指標(character)である。フレンケル・レポウスキー・ミュールマンの予想であるムーンシャイン加群は、中心電荷が 24 で指標が j − 744 {\displaystyle j-744} である唯一の正則頂点作用素代数(VOA)であるという予想を前提として、ウィッテンは最大の負の宇宙定数を持つ純粋重力は、モンスターCFTの双対であると結論づけた。ウィッテンの提案の一部として、ヴィラソロプライマリー場はブラックホールを生成する作用素の双対であり、整合性チェックとして、彼は大きな質量境界で与えられたブラックホールのベッケンシュタイン・ホーキングの準古典エントロピーの見積もりと、対応するムーンシャイン加群のヴィラソロプライマリーの多重度の対数が一致することを発見した。小さな質量領域では、エントロピーに対して小さな量子補正が存在し、最も小さなエネルギーのプライマリー場は、 log ( 196883 ) ∼ 12.19 {\displaystyle \log(196883)\sim 12.19} である。一方、ベッケンシュタイン・ホーキングの見積もりは 4 π ∼ 12.57 {\displaystyle 4\pi \sim 12.57} である。 後日、ウィッテンは提案を精査した。ウィッテンは大きな宇宙定数をもつ臨界CFTは、ミニマルな場合のようなモンスター対称性を持つかもしれないとの見通しを与えた。しかし、ガイオット(Gaiotto)とハーン(Höhn)の独立した仕事によりすぐにこの提案は棄却された。マロニーとウィッテンの論文(Maloney & Witten (2007))は、複雑な鞍点が微妙な性質があるうまい条件を満たすという微妙な性質を持たない限り、純粋重力は分配函数に関係する整合性チェックを満たさないかもしれないと示唆した。しかしながら、リ、ソン、ストロミンジャー(Li, Song & Strominger (2008))は、モンスターCFTのカイラル部分の双対であること、つまり、モンスター頂点代数であるとき、マスコット(Maschot)により2007年に提案されたカイラル重力がより安定な性質をもつかもしれないことを示唆した。ダンカンとフレンケル(Duncan & Frenkel (2009))は、ラーデマッハーの和(英語版)を使い、この双対性の証拠をさらに加え、大域的トーラス同種(isogeny)幾何学上の正規化された和を使い、(2+1)-次元重力の分配函数としてマッカイ・トンプソン級数を再現した。さらに、彼らは、モンスターの元でパラメトライズされるツイストしたカイラル重力の族の存在を予想し、一般化されたムーンシャインや重力インスタントンとの関係を示唆した。現在のところ、これら全てのアイデアは、むしろ期待でしかなく、その理由の一つとしては、3-次元量子重力が厳密な数学的な基礎を持っていないことにある。
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