反ド・ジッター空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 09:16 UTC 版)
数学と物理学において、反ド・ジッター空間(はんどじったーくうかん、英: Anti-de Sitter space)とは、最大の対称性を持ち、負の定スカラー曲率を持つローレンツ多様体である。n次元の反ド・ジッター空間は AdSn と表記される。
名称
反ド・ジッター空間とド・ジッター空間は、ライデン大学の天文学の教授で、ライデン天文台の天文台長であったウィレム・ド・ジッター (1872–1934) の名前に因んでいる。
ウィレム・ド・ジッターとアルベルト・アインシュタインは、1920年代にライデンで、宇宙の時空の構造について研究を共にした。
概要
定曲率の多様体は、正の定曲率の表面である、2次元の球体の表面の場合とほぼ同じである。平らな(ユークリッドの)平面は、零の定曲率の表面であり、双曲平面は負の定曲率の表面である。
アインシュタインの一般相対性理論は、時空間を対等な立場に置いているので、空間と時間をバラバラであるとみなす代わりに、統一された時空の幾何学とみなしている。定曲率の時空の事例は、ド・ジッター空間(正)とミンコフスキー空間(零)と反ド・ジッター空間(負)である。それ自体は、それらは、それぞれが正、零または負の宇宙定数の空宇宙におけるアインシュタイン方程式の厳密解である。
反ド・ジッター空間はどんな次元の宇宙にも一般化する。より高次元では、AdS/CFT対応における役割として知られている。そして、AdS/CFT対応は、弦が1次元を追加した反ド・ジッター空間に存在している弦理論における、ある次元数(例えば4次元)における(電磁気学や弱い力、強い力のような)量子力学の力を記述することが可能だと示唆している。
専門的ではない説明
この解説ではまず、この記事の冒頭で使われている用語の定義について、専門用語を使わずに説明する。次に、一般相対論的な時空というものの基本的な考え方を簡単に説明する。そして、ド・ジッター空間が一般相対性理論の通常の時空(ミンコフスキー空間)の宇宙定数に関する異なる変種を記述していること、反ド・ジッター空間がド・ジッター空間とどう異なるかを論じる。また、一般相対性理論に適用されるミンコフスキー空間、ド・ジッター空間、反ド・ジッター空間は、いずれも平坦な5次元時空に埋め込まれていると考えることができることを説明する。最後に、この非専門的な説明では、数学的概念の詳細を完全に把握できないことを一般論として説明し、いくつかの注意点を挙げている。
翻訳された専門用語
最大の対称性を持つローレンツ多様体とは、どんな時間・空間上の一点も他の点と区別できない(特別な点を持たない)様な時空間である。(ローレンツのように)方向(または、時空間の一点での経路の接線)を区別する唯一の方法は、それが空間的であるか、光的であるか、時間的であるかである。特殊相対性理論の空間(ミンコフスキー空間)が1つの事例である。
定スカラー曲率とは、一般相対性理論の重力のような時空の歪みであり、時空に物質やエネルギーが存在していない場合、どこでも同じである様な1つの数字で記述される曲率を持っている時空間を表す。
負の曲率とは、双曲的に、すなわち鞍の表面やガブリエルのラッパの表面のように曲がっていることを意味し、トランペットのベルの表面とも似ている。正の曲率を持っている球面とはある意味「反対」とも言える。
一般相対性理論における時空
一般相対性理論は、時間、空間そして重力の性質の理論である。重力は、物質とエネルギーの存在から引き起こされる、空間と時間の曲率である。(等式
符号 (p, q) の反ド・ジッター空間は、座標が (x1, ..., xp, t1, ..., tq+1) であり、準球面
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反ド・ジッター空間の「半空間」領域とその境界面 ほかの一般的に用いられる全空間を被覆する座標系は、座標 t,
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