系 (自然科学)
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自然科学における系(けい、英語: system)とは、自然界のうちで考察の対象として注目している部分をいう[1][2]。分野や考察の内容に応じて力学系、生態系、太陽系、実験系などというように用いられる。考察の対象とされない部分は外界として区別される。これは外界が系に比べて非常に大きく、外界が系に影響を及ぼして系の状態の変化を引き起こすことがあっても、系が外界に及ぼす影響は無視できるとする仮定の下に考察の対象から外される。外界の状態は、常に一定であるとしたり、単純な変化をしたりと、考察の前提として仮定される。また、観測者は外界にいるものとして通常は考察の対象とされない。
物理学では、系を古典論で記述するとき、その系を古典系と呼ぶ。一方で系を量子論で記述するとき、その系を量子系とよぶ[3]。
熱力学的な分類
熱力学の観点では、系は外界との間で許されるエネルギーの移動の形態から分類される。 熱力学において考察されるエネルギーの移動の形態は、仕事と熱、および物質(質量)の移動に伴うエネルギーの移動である。ここでいう仕事とは、ピストン-シリンダ系のような力と変位の積として表される機械的な仕事だけではなく、電気的なエネルギーの移動など、熱力学に依らずに考察が可能なエネルギーの移動である。質量の移動とは、例えばガソリンエンジンであれば、燃焼室へのガソリンと空気の吸入や、燃焼後の排気などである。ガソリンなどの燃料は、化学的なエネルギーを内在しており、燃焼に伴ってそれが放出される。すなわちガソリンの吸入はエネルギーの流入である。 燃焼という急激な化学反応を伴う状況に限らず、部屋の換気でも室内外の温度や湿度の異なる空気の交換に伴いエネルギーが移動する。
外界との間で物質の移動を許す系は開放系(開いた系、open system)、物質の移動を許さない系は閉鎖系(閉じた系、closed system)と呼ばれる。閉鎖系のうち物質の移動に加えて熱によるエネルギーの移動も許さない系は断熱系(adiabatic system)と呼ばれる。さらに断熱系のうち、物質の移動や熱に加えて、仕事によるエネルギーの移動も許さない系、つまり、あらゆるエネルギーの移動を許さない系は孤立系(isolated system)と呼ばれる。 外界とのエネルギーの移動に制限がある系では、その制限に応じた法則が成り立ち、孤立系ではエネルギー保存則、断熱系ではエントロピー増大則、閉鎖系では質量保存則[注 1]が成り立つ。
系が熱を交換する外界は熱浴(heat bath)と呼ばれ、質量を交換する外界は粒子浴(particle bath)と呼ばれる。
例
容器につめられた気体の集合の場合もあれば、特定の溶液、力を受けた・与えた物体または細胞内、機関内などの場合もある。
- 開放系
- 閉鎖系
- 断熱系
- 断熱材で覆われたフラスコ
脚注
注釈
出典
- ^ Peter Atkins; Julio de Paula 著、千原秀昭, 稲葉章 訳『アトキンス物理化学要論』(4版)東京化学同人、2007年、37頁。ISBN 978-4-8079-0649-9。
- ^ 土井勝『物理学入門』日科技連、2005年、46頁。 ISBN 4-8171-9068-X。
- ^ 清水明『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』サイエンス社、2004年。ISBN 4-7819-1062-9。
- ^ 生物学辞典(岩波書店)
関連項目
量子系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 14:29 UTC 版)
量子系においては、系の状態はヒルベルト空間上の状態ベクトル | ψ ⟩ {\displaystyle \vert \psi \rangle } で表される。ある状態における物理量は量子論的な演算子で与えられ、特にエネルギーはハミルトン演算子 H ^ {\displaystyle {\hat {\mathcal {H}}}} で与えられる。したがって、分配関数は Z ( β ) = ∑ ψ ⟨ ψ | exp { − β H ^ } | ψ ⟩ {\displaystyle Z(\beta )=\sum _{\psi }\langle \psi \vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert \psi \rangle } となる。状態ベクトルはパラメータ n で指定される正規直交完全系 | n ⟩ {\displaystyle \vert n\rangle } により | ψ ⟩ = ∑ n c n | n ⟩ , ⟨ ψ | = ∑ n c ¯ n ⟨ n | {\displaystyle \vert \psi \rangle =\sum _{n}c_{n}\vert n\rangle ,~\langle \psi \vert =\sum _{n}{\bar {c}}_{n}\langle n\vert } と展開される。状態ベクトルに対する和は展開係数に関する積分に置き換えられるので Z ( β ) = ∏ l ∫ d c l d c ¯ l ∑ m , n c n c ¯ m ⟨ m | exp { − β H ^ } | n ⟩ = ∑ m , n ∏ l ∫ d c l d c ¯ l c n c ¯ m ⟨ m | exp { − β H ^ } | n ⟩ = C ∑ m , n δ m , n ⟨ m | exp { − β H ^ } | n ⟩ = C ∑ n ⟨ n | exp { − β H ^ } | n ⟩ {\displaystyle {\begin{aligned}Z(\beta )&=\prod _{l}\int dc_{l}d{\bar {c}}_{l}\sum _{m,n}c_{n}{\bar {c}}_{m}\langle m\vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert n\rangle \\&=\sum _{m,n}\prod _{l}\int dc_{l}d{\bar {c}}_{l}c_{n}{\bar {c}}_{m}\langle m\vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert n\rangle \\&=C\sum _{m,n}\delta _{m,n}\langle m\vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert n\rangle \\&=C\sum _{n}\langle n\vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert n\rangle \\\end{aligned}}} となる。分配関数の大きさそのものには意味がないので係数 C を除くことができて、最終的には Z ( β ) = ∑ n ⟨ n | exp { − β H ^ } | n ⟩ {\displaystyle Z(\beta )=\sum _{n}\langle n\vert \exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}\vert n\rangle } となる。トレースを用いれば Z ( β ) = t r [ exp { − β H ^ } ] {\displaystyle Z(\beta )=\mathrm {tr} [\exp\{-\beta {\hat {\mathcal {H}}}\}]} と表現できる。 量子系では通常はハミルトン演算子を対角化するエネルギー固有状態を用いて表現される。エネルギー量子数 i と対応するエネルギー固有値 Ei により Z ( β ) = ∑ i e − β E i {\displaystyle Z(\beta )=\sum _{i}\mathrm {e} ^{-\beta E_{i}}} となる。ここで ∑i は全てのエネルギー固有状態についての和であり、縮退などがある場合には注意を要する。
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