不安定量子系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/25 22:00 UTC 版)
当初、ミスラとスダルシャンが提唱した不安定量子系での量子ゼノン効果は、2001年にテキサス大学オースティン校のM. レイゼン(英語版)が率いる研究グループによって、初めて実証された。レイゼンらは、極低温で光学トラップに閉じ込められたナトリウム原子のトンネル現象を用いた不安定量子系で、量子ゼノン効果と量子アンチゼノン効果を実現させた。この実験では、まず約 7005300000000000000♠3×105 個のナトリウム原子がレーザー冷却による光モラサス効果と磁気光学トラップで極低温状態に置かれる。その後、ナトリウム原子は光学トラップでトラップされる。実験で用いられた光学トラップのポテンシャルは加速度 a で運動する余弦波 の周期ポテンシャル V0 cos(kLx − at2) である。トラップされたナトリウム原子は光学トラップとともに移動するため、一定時間後に冷却レーザー照射下の光モラサス状態で、ルミネッセンスをCCDカメラで空間分布を確認することでトラップされた量を判別できる。加速度運動する光学トラップの並進座標系からみるとこの原子は傾斜した定在波のポテンシャル(洗濯板ポテンシャル)V0 cos(kLx) − Max′ を受ける。但し、x′ は加速度座標系での位置座標、M は原子の質量である。この系では加速度を変えることで傾斜を調整することができる。このポテンシャルにより、原子のエネルギーバンドが形成される。エネルギーが最低次のバンドはナトリウム原子がポテンシャルに完全にトラップされた束縛状態にあり、2番目のバンドでは部分的にトラップされる。それよりエネルギーが上のバンドではナトリウム原子はほぼ自由状態となる。量子力学的なトンネル効果により、トラップされた束縛状態から自由な連続スペクトル状態に遷移でき、不安定量子系である。レイゼンらの実験では、まず最低次のバンドのみにナトリウム原子が捕獲された状態を準備し、この状態から加速度をトンネリングが可能な加速度 atunel に変化させた。トンネル効果でポテンシャルから脱出したナトリウム原子は、空間分布から確認することができる。
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