不完全なベイツ型擬態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 23:30 UTC 版)
「ベイツ型擬態」の記事における「不完全なベイツ型擬態」の解説
擬態者がモデルを正確に模倣しているわけではない、不完全なベイツ型擬態もみられる。その例の一つとしてハナアブの仲間のSpilomyia longicornis を挙げる。このハナアブはスズメバチの仲間に擬態しているが、詳しく見ると両者には相違点がある。例えば、ハチの触角は長いが、このハナアブではそれほど長い触角は見られない。代わりにこのハナアブは前脚を頭上で振って、触角に見せかけている。不完全な擬態が見られる理由については、様々なものが提唱されている。例えば、不完全な擬態は単に完全な擬態への進化の途上の状態だと言えるかもしれない。あるいは不完全な擬態は、複数のモデルに同時に似せることができるという意味で利点があるかもしれない。またそもそも人間が判断する擬態の精度は、実際の捕食者による判断とは異なる可能性もある。血縁選択によって擬態の質の低下が促進される場合もある。良質な擬態をすることへの選択圧が、他の側面での選択圧(例えば体色を目立たなくする方向への選択圧など)より弱い場合にも、不完全な擬態が進化する可能性がある。捕食者を騙すのに、ある一つの形質だけで十分な場合もある。例えばサンゴヘビ属のハーレクインサンゴヘビMicrurus fulvius が、モデルであるキングヘビ属のスカーレットキングヘビLampropeltis elapsoides の体色に擬態する系の場合、それぞれの色の配置よりも、各色が体に占める割合の方が捕食者を騙すのに重要であることが示唆されている。
※この「不完全なベイツ型擬態」の解説は、「ベイツ型擬態」の解説の一部です。
「不完全なベイツ型擬態」を含む「ベイツ型擬態」の記事については、「ベイツ型擬態」の概要を参照ください。
- 不完全なベイツ型擬態のページへのリンク