選択圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 07:34 UTC 版)
自然環境は急激に変化することはまれであるため、特定の方向に選択を偏らせることがある。例えば砂漠では砂色の体が保護色となる、発汗が抑えられわずかな水分を有効利用する、あるいは夜行性となるなどが生存に有利に働く。このように実際に生存率に差をもたらす自然環境の力を選択圧と言う。生息する環境が異なれば、生物は異なる選択圧を受ける。生物は常に様々な選択圧に晒されており、また一つの性質に対して複数の選択圧が働くと考えるのが普通である。 例えばホタルやカエルは音や光などの信号を発して配偶者を求める。配偶者の密度が薄ければ、強い信号を発する個体が有利である、つまり配偶者密度は一つの選択圧であるといえる。同時に、強い信号は捕食者を呼び寄せるリスクを伴う。つまり捕食者密度は、「信号の強さ」という性質に対してそれとは逆方向に働くもう一つの選択圧である。どの程度の信号の強さが最適かは、捕食者・配偶者の密度の他に、信号を発する時間帯(日中か、夕暮れか、夜か)、食料の量(信号を発するのに多大なエネルギーが必要)など、様々な要因に左右される。
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選択圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 13:56 UTC 版)
集団免疫はそれ自身が特定のウイルスに対する選択圧(英語版)として働き、ウイルスの進化に影響を与える。このケースでは、エスケープ変異株(escape mutant)と呼ばれる、集団免疫を回避してより容易に拡大できる新たな株の出現が促進される。分子レベルでは、ウイルスの表面抗原(一般的にはウイルスのカプシドタンパク質)をコードするウイルスゲノム領域に変異が蓄積してエピトープが変化する、抗原ドリフトと呼ばれる変化が生じる。その他にも、別々のウイルスゲノム断片の再集合による変化が生じて新たな血清型が生み出されることもあり、抗原シフトと呼ばれる。こちらは複数の株が出回っているときに起こりやすくなる。このような変化が生じるとメモリーT細胞はもはやウイルスを認識できず、そのため人々は優勢株に対して免疫がない状態となる。インフルエンザとノロウイルスのいずれの場合も、流行することで新たな優勢株が出現するまで一時的に集団免疫が誘導されるため、流行は連続的な波となる。このウイルスの進化は集団免疫に対する課題となっており、特定の血清型に対する効果にとどまらない、広域中和抗体(broadly neutralizing antibody)や「ユニバーサルワクチン」(universal vaccine、万能ワクチン)の開発が現在行われている。
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