適切な体温の維持
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 07:16 UTC 版)
体温異常は命にかかわる。着るものに配慮が必要である。また体温を上げるためにはエネルギー源が必要で、糖質・脂質が必要となる(非常用の携行食としてはたとえばキャンディーやチョコレートなどが選ばれる。)。逆に体温を下げるためには水が必要で、同時に発汗によって失われる塩分を始めとするミネラル分を補給しないと、体調を崩して体力を余計に消耗する。 低体温症を避ける 低体温症は体の内側(直腸温度)が35度以下になると発生する。体温が26度以下では意識を失い、生命が危機的な状況である。山岳遭難や海洋遭難ではまず低体温症に気をつけなければならない。 高山で気象が荒れた場合の山岳遭難では、たとえ夏山でも、簡単に低体温症に陥ってしまう。高山は、平地とは気温も風速も異なっている。高山は風も強い。気温が10度であっても風速10m/秒(時速36km。枝が揺れ、大きな旗がはためく程度)では、体感温度は0度に匹敵する(wind-chill。“風で萎縮”)。山岳遭難では、低体温症で命を落としてしまうこともある。特に体表面が濡れ状態で風に吹かれると、深刻な事態に陥る。 (※)なお「体温」は直腸温を指しており、体温計で測定した体表の温度ではない。衣類を着用した場合の体感温度は風速と比例していない。 なおここ数十年では「荒天時には山では雨具(レインスーツ)を装着する」というのは登山者にとってはセオリーになっている。それはそれで正しいのだが、(実は、多くの登山者にとって盲点になっていることがあり)近年ではゴアテックスなど、透湿・防水の機能性素材でできたレインスーツを持参することが一般的になっているのだが、レインスーツの経年劣化が原因で水漏れが起き、雨天時に下着までずぶ濡れになる、という体験を実は多くの登山者が経験している。トムラウシ山遭難事故では、それも要因となって死者が増えてしまった。登山者はときどきレインスーツに防水スプレーをかけて防水性能を保とうとするものだが、地球温暖化対策のためにフロン系の防水スプレーが販売されなくなってしまい、防水スプレーの性能が落ちたことも、登山者のレインスーツの防水性能が低下する原因になっている。(登山者は普段から「もし遭難したら」という想定は、ある程度はしているものだが、レインスーツの水漏れが起きたら新しいものに買い替えておく、ということも必要だ、ということになる。もし山に入ってしまってから自分のレインスーツの傷みに気づいた場合にできることはほとんど残されておらず、たとえば、もし大きなビニール袋を持参していれば、それを補助的にレインスーツの下に入れたり、あるいはレインスーツの上からそれをかぶる、という程度のことしかできない。) 「イマージェンシー・ブランケット(emergency blanket)」や「レスキューシート」などと呼ばれるシートをリュックに入れておき、もし震えるくらい寒く感じたらそれで身を包めば低体温症を防げる。シートは百均でも売っている。 テントを持っていない場合でも、周囲の枝を使い簡易的なシェルターを作ることができる。ブッシュクラフトの方法。 ブルーシート1枚あるいはタープ1枚で屋根を作り夜間の体温低下を防げる。 海洋遭難の場合も、たとえば海水温が1桁台の時に海水に飛び込んだりすると、わずか数分ほどで「震えが止まらない」状態に陥り、10分もすれば気を失い命を失う。決して海水に落ちないようにして、着衣を濡らさないようにして救命いかだに乗り移らなければならない。そして救命いかだに乗り移ったら、互いに身体を寄せて体温を保つようにする。 熱中症を避ける 暑い時期は熱中症のほうも注意が必要で、たとえば気温が高すぎて体温が上がりすぎてしまった時や、水の補給が足りず体内の水分が減りすぎてしまった時や、ミネラル分を失った時などに起こる。たとえば湿度が高い状況(日本の梅雨時や夏は特に湿度が高い)、気温が比較的高い夏の低山での遭難で避難行動をしている時などでは熱中症にも注意が必要である。熱中症を防止策としては、気温が高い日ならこまめに水分・塩分・ミネラル分を補給することであり、できるだけ日差しを避け日陰に入ることである。なお熱中症になってしまった場合の応急処置は「衣服を緩めて楽な状態にして、水分を補給し、もし体を冷やす方法があるなら冷やす」であるが、実際には、意識がもうろうとし状態では当人は判断も応急処置もとれないので往々にしてそのまま死にいたる。グループで遭難した状況下でメンバーの誰かが熱中症に陥った場合は、木陰など比較的涼しい場所で休ませ、衣服をゆるめさせ、もしも水があれば水を飲ませ、もしもタオルもあれば濡れタオルを作ってやりそれで体表面を濡らし、団扇の代用に使えるものが何かあればそれで風を送り気化熱で体温を下げてやる。
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