軸箱守のないもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/02 01:42 UTC 版)
円筒案内式(ウイングばね):上下の案内に、縦にした二重の円筒(内筒と外筒)を用いて相互に滑らせるもの。これには、乾式円筒案内方式と湿式円筒案内方式があり、前者は内筒と外筒との間に、耐磨耗性の良好な耐磨レジンの摺動筒を挿入した構造としており、後者は外筒の中に油を入れて、内筒の底部に複数の小穴を空けた密閉構造とし、油の粘性抵抗を利用したオイルダンパの役割と摺動する内筒と外筒の間の潤滑の役割を持っている。両者とも、内筒と外筒の外側を保護の円筒で覆うことで塵埃の進入を防いでいる。軸ばねの内部に取付けられており、製造会社の技術導入先によりさまざまな呼称がある。鉄道車両の台車史も参照。シュリーレン式(近畿車輛) シンドラー式(汽車製造→川崎重工) SIG式(日本車輌製造) 円筒案内式ウイングばね(シュリーレン式)軸箱支持の例(近畿車輛KD76形近鉄8600系) シンドラー式の例(汽車製造KS58形京阪2600系) 国鉄の円筒案内式ウイングばね軸箱支持の例(国鉄DT44A形キハ40系気動車) 板ばね支持式(ミンデン式)ミンデンドイツ式:前後一枚ずつの板ばねで軸箱の位置を定めるもの。ただし水平支持が固すぎると板ばねが上下にたわむこともできないので、台車の中心から遠い側を垂直の板ばねで支持し剛性を下げている。具体例は東武8000系電車#前期形(ミンデンドイツ台車)を参照。 Sミンデン式:台車中心側から伸びた上下二枚の板ばねで軸箱の位置を定めるものであり、軸箱支持装置のサイズをコンパクトにすることができる。S形ミンデン式または片板ばね式とも呼ぶ。具体例は東武8000系電車#後期形(S形ミンデン台車)を参照。 IS式:ミンデンドイツ式と類似するが、板ばねの支持部分にゴムブッシュを介して水平方向の剛性を下げ、板ばねのたわみを許容する。ミンデン式より台車の前後方向のサイズを小さくできる。 SUミンデン式:Sミンデン式にU字形ゴムをいれて剛性を下げたもの。 ミンデンドイツ式の例(住友金属FS-356形東武8000系電車) S形ミンデン台車の例(住友金属FS370A形東武200系電車) SU形ミンデン台車の例(住友金属SS027形南海1000系電車) IS式軸箱支持の例(国鉄DT200形0系新幹線電車) 軸梁式:下記モノリンク式とも似ているが、軸箱と一体となった軸梁(スイングアーム)を、台車枠の側梁の近くの1か所でゴムブッシュを介して支持する。ゴムブッシュは緩衝用であり、簡素な構造で部品点数が少ないため、コストダウンが図れる。車軸は軸梁の支点を中心に回転運動するため、車軸の上下に伴い軸距が変化する。OK形台車 MD形台車(MD1 - MD7) リンク式アルストム式:軸箱前後に高さの異なる2つの支点があり、それと台車枠側の支点とを繋ぐ、水平で同じ長さの2本のリンクで位置決めを行う。高さの異なる2本のリンクと軸箱とで「ワッツリンク」が構成され、輪軸の上下動に伴って軸箱が回転するものの、ほぼ直線運動となるため軸距の変化は無視できる。各支点には緩衝用のゴムブッシュが嵌入されている。 モノリンク式:1本リンク式とも言う。軸梁式とは異なり、台車枠の側梁と軸箱の間を可動の1本のリンクでゴムブッシュを介して支持する。ゴムブッシュは緩衝用であり、ゴムブッシュ部の2か所が可動するため、リンクだけでは軸箱の前後位置が固定できないので、軸ばねの周囲の部分が円筒状になって受ける。 軸梁式軸箱支持の例(JR東日本DT71形E531系電車 ) アルストムリンク式軸箱支持の例(住友金属FS-008形小田急7000形電車) モノリンク式軸箱支持の例(住友金属FS-564形京成3000形電車 (2代)北総鉄道7500形電車) 積層ゴム式:鉄板を挟むなどして積層したゴムが、圧縮方向には固く、剪断(斜めにずれる)方向には柔らかいという特性を利用したもの。軸箱の案内だけでなく、軸ばねの代替も(程度の差はあるが)ゴムが行なう。下記はそれぞれゴムの取り付け方向が異なる。シェブロン式:山形断面の鉄板とゴム板を交互に重ねたばねを、前後やや上からハの字形に挟み込むことで、上下に柔らかく支持する。この積層ばねは、左右(車軸・枕木)方向の復元力を得る(ずれを防止する)ため「山形」(ゆるい Λ 形)になっていることから、「シェブロン」ばねと呼ばれる。下記FT2形のように上から別のゴムで荷重を支持する場合もある。 円錐積層ゴム式:ゴムと鋼板を円錐状に重ねた円錐積層ゴムを、ウイングばねと類似の位置で軸箱の両側に設置する。円錐積層ゴムは、縦(上下)に柔らかく、横(水平方向)に固い特性があり、円筒案内式と構造が似ているが、案内と軸ばねの両者を兼ねるため、メンテナンスフリー化を図ることができる。 シェブロン式(山形積層ゴム)(川崎重工 KW59札幌市電8520形) 積層ゴム式軸箱支持の例(JR貨物 FT2コキ106形貨車) 円錐積層ゴム式軸箱支持の例(国鉄415系電車 DT50) 側梁緩衝ゴム式:単に緩衝ゴム式とも言う。鉄道車両の台車史#側梁緩衝ゴム式も参照。住友金属工業FS337系:台車枠と軸箱両側の間のゴムで前後左右方向の支持を行なう。新造時のFS337Aは軸箱の上にもゴムを用いて上下方向を支持し、軸箱梁式に近い構造であったが乗り心地が思わしくなく、これは後に軸ばねをコイルばねに交換している。 軸箱梁式:軸箱と側梁が一体化されたもの。軸箱は円筒状の緩衝ゴム(ゴムブッシュ)で囲まれて支持されており、それが軸ばねの働きも兼ねている。梁に着目して軸箱梁式と呼ばれることが多い。エコノミカル台車:鉄道車両の台車史#エコノミカルトラックも参照。 パイオニアIII形台車:鉄道車両の台車史#パイオニアIIIも参照。 側梁緩衝ゴム式の例(京阪2600系 FS337A) 軸箱梁式(エコノミカル台車)の例(汽車製造KS76A形京阪5000系 ) 軸箱梁式(パイオニアIII形台車)の例(東急車輛製造TS-701東急7000系(初代)現・水間鉄道1000形) 軸箱一体式:貨車に多く用いられる。軸箱と台車枠が一体で、特に軸箱支持装置と呼べるものは持たないが、ここに含める。 軸箱直結式:貨車に多く用いられる。下記FT1のように台車枠との間に防振ゴムをはさむものも軸箱直結式とされる。 ベッテンドルフ(軸箱一体)式の例(タキ42750形 TR41) 軸箱直結式の例(コキ50000 TR223F) 軸箱直結式の例(コキ104 FT1)
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