越前奉書
越前奉書
<えちぜんほうしょ>
区分
重要無形文化財
保持者
岩野市兵衛
<いわの いちべえ>
(雅号 九代岩野市兵衛)
(福井県)
解説
奉書とは,御教書,院宣など,主人の意志を奉じた従者の署名によって発給する文書の形式であるが,奉書を記す公文書用紙をも指す。この用途のため江戸時代には各藩で漉かれるが,越前の奉書は日本第一と高く評価された。明治時代以降,越前でも純楮の伝統的な生漉奉書は稀になったが,浮世絵木版画の復興の試みなどによる新たな需要に応じ,高度な製作技術が伝承されてきた。
伝統的な技法は,良質の原材料を選び,手打ちによる叩解や「紙出し」の工程に代表される入念な原料処理,伝統的な白土の添加,時間をかけたゆるやかな抄紙,板干しの乾燥法など,手間を惜しまない古来の手作業に特色がある。現在の主な用途は版画用紙であるが,書画用紙や日本刀の拭い紙,書簡用巻紙等にも使用されている。
越前奉書
名称: | 越前奉書 |
ふりがな: | えちぜんほうしょ |
芸能工芸区分: | 工芸技術 |
種別: | 手漉和紙(てすきわし) |
認定区分: | 各個認定 |
指定年月日: | 2000.06.06(平成12.06.06) |
解除年月日: | |
指定要件: | |
備考: | |
解説文: | 越前国では早くから紙の生産が行われ、中世には、越前の五箇【ごか】(現在の福井県今立町岡本地区)は、奉書紙【ほうしょがみ】など厚手の楮紙を特色とする産地として知られるようになる。奉書とは、主人の意志を奉じた従者の署名によって発給する文書の形式であり、御教書【みきょうじょ】、院宣【いんぜん】などがこれに当たるが、それを記す公文書用紙をも指す。この用途のため江戸時代には各藩で漉かれるが、越前の奉書は日本第一と高く評価された。明治時代以降、純楮の伝統的な越前奉書(生漉【きずき】奉書)は稀になったが、浮世絵木版画の復興の試みなどによる新たな需要に応じて、高度な製作技術が伝承されてきた。 伝統的な越前奉書の製作技術は、良質の原材料を選び手間を惜しまない古来の手作業に特色があり、手打ちによる叩解【こうかい】や「紙出【かみだ】し」の工程に代表される入念な原料処理、伝統的な白土【はくど】の添加、時間をかけたゆるやかな抄紙【しょうし】、板干しの乾燥法などが確実に伝承されている。現在の主な用途は版画用紙であるが、書画用紙や日本刀の拭【ぬぐ】い紙、書簡用巻紙等にも使用される。紙質は強靱で、かつて武家の公文書用紙として用いられた格調高く重厚な風合いを残している。 越前奉書は、芸術上価値が高く、工芸史上重要な地位を占め、かつ、地方的特色が顕著な工芸技術である。 |
越前奉書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/13 16:27 UTC 版)
福井県越前市大滝町で、和紙職人の九代目岩野市兵衛(人間国宝)の手漉きにより抄造される越前和紙。 300回に及ぶ版の摺り重ねにも摺り耐え、紙の伸縮によるズレも小さい強さがあるという。近年では浮世絵の復刻版を摺る際にも使用されている。 木版画の上質な版画用紙として現代美術作家に重宝されている。紙の裏表は、紙肌が滑らかな面が表側で、ザラつきのある面が裏側になる。 木版画で使用する場合には、版木に載せる前に湿らせたボール紙や新聞紙に紙を挟み込み、適度に湿らせることが必要。 人間国宝が漉く奉書紙ということもあり、1枚の値段が高価なのが若い美大生にはネックなのだが需要も多い。
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