記憶・責任・未来
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「第二次世界大戦後におけるドイツの戦後補償」の記事における「記憶・責任・未来」の解説
詳細は「財団「記憶・責任・未来」(ドイツ語版)」を参照 ナチス時代のドイツ企業はユダヤ人や戦争捕虜に強いられた強制労働(英語版)によって大きな収益を上げていた。ドイツ連邦共和国政府はこの被害者に対する支払が「補償」の範囲内ではなく「国家間賠償」で対応されるべきとし、一切の支払に応じていなかった。分断時代からもダイムラー・ベンツなどの一部の企業は個別に出資して補償を行ってきたが、ドイツ統一後には、東側社会に住む人々にほとんど補償が行われていないことが社会問題化しはじめた。またアメリカでは、外国人不法行為請求権法に基づき、ドイツ企業に対する補償要求が高まった。1996年からはドイツ企業やスイスの銀行に対する訴訟が相次ぎ、裁判とそれに伴う悪評に疲弊したドイツ企業は、一定の金額を支払うことで訴訟リスクを回避する道を求めるようになった。また補償に積極的な左派のゲアハルト・シュレーダー政権の成立も追い風となった。 2000年7月17日にアメリカとドイツは協定を結び、ドイツ企業に対する訴訟を取り扱う財団設立で合意した。この協定には多数の訴訟代理人が同意し、訴訟権却下に応じた。8月12日に『財団「記憶・責任・未来」(ドイツ語版)』の創設が国会決議され、以降の支払いはドイツおよびドイツ企業の道義的・政治的責任に基づいて拠出された100億ドイツマルクから支払われることとなった。財団は7つの協力組織の請求に基づいて協力組織に金銭を支払い、2001年末までに請求を行った者に対し、協力組織が支払うという形式で処理を行っている。ドイツ側としては道義的・政治的責任は認めつつも法的義務は認めておらず、公式には賠償とはされていない。また、この強制労働はナチ不正の一環であって、戦争犯罪としては取り扱われていない。ドイツ経済界はこれ以上賠償や補償請求が行われない「法的安定性」を求めており、アメリカ政府がこれに応じたことで交渉は決着した。アメリカ政府は交渉の過程で「今後アメリカとしては、ドイツに賠償請求を行わない」ことを表明している。 「記憶・責任・未来」による支払は2001年より開始され、2007年6月に終結した。支払い対象はおよそ百カ国にまたがる166万人であり、支払総額は43.7億ユーロに達する。支払い対象となる強制労働被害者は強制収容所での労務者、移住させられ強制労働に従事させられた者、およびそれに準じると見られた者である。戦争捕虜、イタリアの降伏時に発生したイタリア王国軍人捕虜、西ヨーロッパ出身者のうち強制収容所収容や移住を強制されなかった者は対象外である。 「記憶・責任・未来」のプロセス開始後もアメリカではドイツ企業に対して支払を求める動きはあるが、支払は認められていない。
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