製作状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:59 UTC 版)
「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」の記事における「製作状況」の解説
本作はストーリー作りも野沢が行っており、彼自身も作家だったために独自のコナンワールドを作ろうと意図し、当初は『オリエント急行殺人事件』のような全編列車内で進行するものを構想していた。しかし、流れる背景を描き続ける作画コストや空間描写などの映像面での技術的困難から生まれた「(2000年初頭当時の)アニメーションでは、列車のシーンは三分の一しかできない」という制約から、別案として子供達がRPGゲームに熱中する姿にヒントを得て舞台をVR空間に決定。コナン達が活躍できる世界設定を考え、最終的に江戸川コナンが愛するシャーロック・ホームズの世界に白羽の矢を立てた。野沢は「たとえ別の次元に離れていても、父と子は繋がっている」というメッセージと「親子の絆」をテーマとして切り替え、世襲や家庭環境など大なり小なり親子関係にしがらみを抱えている子供達が、困難に自分の力で立ち向かい、自立していくジュブナイルストーリーを作り上げた。クライマックスの展開には当初の案であった列車内でのサスペンスとアクションが取り入れられている。 コナン・ドイルのルーツである19世紀末のロンドンに歴史の光と闇として存在した、シャーロック・ホームズと切り裂きジャックを大きなテーマとした物語を制作するため、「コナン海外へ」というキャンペーンができたと諏訪は語っている。 仮想体感ゲーム機「コクーン」は、コナンたちを海外に行かせるために考案された。それゆえ、阿笠の発明品が使えず、他の参加者と協力し合って危機を潜り抜ける展開となった。その反面、ゲーム空間を舞台に選択したことで、コナンは正体を悟られないまま徒手空拳で事件を解決しなければならない制約を負った。この条件下で脚本制作を進める中で「いっそのこと”もう駄目だ”と言わせるまでコナンを追い詰めて、再び立ち上がらせてみたらどうか」と考えたと野沢は語っている。 それ以外の特徴として、『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』のように最初から犯人が明らかになっており、犯行の過程が描かれている倒叙形式が劇場版シリーズで初採用された。また、前作『天国へのカウントダウン』まではコナンと蘭のラブロマンスが重視されていたが、『ベイカー』では元脚本の尺の都合上、中盤に省略やカットされたシーンが存在している事もあってか、初期劇場版作品では珍しく、コナンと蘭の恋愛要素がフィーチャーされない内容になっている。本作の完成後野沢は、コナンと蘭のラブストーリーにしてほしいという原作者からの強い要望を実現できなかったのが心残りだと劇場版パンフレットにて語り、次に脚本を書かせて頂くことがあれば新一、蘭、灰原の三角関係をテーマに描きたいと話していたが、2年後の2004年6月28日に急逝した事により、本作が最初で最後のアニメ映画となった。
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