オフレールステーション
オフレールステーション(Off-rail station、略:ORS)は、日本貨物鉄道(JR貨物)の貨物駅の一形態。当初からオフレールステーションとして設立されたものと、自動車代行駅・コンテナセンター(後述)からの改称で発足したものとがある。なお、2010年代後半からはオフレールステーションの一部について業態規模を見直し、「新営業所」へ名称変更された例がある。本稿では新営業所についても合わせて記載する。
名前が示す通り、輸送経路としての線路を伴わない鉄道コンテナ取扱基地(コンテナヤード)であり、貨物列車の発着も当然ない。ただし、自動車代行駅から切り替えられたオフレールステーションには、線路が残っているものもある。他の貨物駅とは最寄りの拠点駅を介して結ばれるため、拠点駅との間にトラック便が1日数往復設定されている。
発着貨物の運賃料金は、自動車代行駅・コンテナセンターを前身に持つオフレールステーションであれば、廃止前・移転前の貨物駅に設定されていた営業キロを使用して算出される。前身の駅がない羽生オフレールステーションでは、トラックの走行距離に応じた料金を別途収受する。
歴史

2000年(平成12年)10月10日に、付近に貨物駅の無かった場所に設置された羽生オフレールステーションがその始まりである[1][2]。2005年(平成17年)9月14日には刈谷コンテナセンターが移転により刈谷オフレールステーションに改称、2番目の例となった[3]。この両ORSは、周辺に貨物駅が無い地域での荷主の利便性向上や鉄道コンテナの利用促進を目的として開設されたものである。
過去に小規模を含めて全国に散在していた、元々のコンテナ取り扱い駅が合理化で次々と廃止された。これにより、地域によっては細々と続く地場産業(例えば、農業や野菜 ・ 葉タバコ栽培 ・ 陶器やレンガ等の窯業)の出荷困難などの弊害もあり、その代わりの打開策として同じ方式を採用していた自動車代行駅とコンテナセンターの名称を2006年(平成18年)4月1日に、オフレールステーションに統一することになり、33か所になった。その後3か所追加され、2009年5月時点でオフレールステーションは36か所存在していた。
しかし、2010年代に入るとそのトラック便の設定が廃止され、オフレールステーションとしても営業終了する例も発生している。結果的に2010年以降5か所の追加と8か所の営業終了が行われ、2025年3月時点では33か所となっている。また、その一部は前述のように2010年代後半に「新営業所」へと転換されている。
- 自動車代行駅
- 最寄の拠点貨物駅との間を列車輸送に代えてトラック輸送を行う駅の通称[4]。1996年(平成8年)から利用の減少した、または拠点駅に近接していた一部の貨物駅が指定され、トラック輸送に切り替えられた[4]。一部はJR貨物の第二種鉄道事業廃止で駅としては廃止になり、コンテナセンターに切り替えられたものもあった。設定時は11駅が指定されたが、名称統一時には18駅になっていた。
- コンテナセンター
- 利用の減少した貨物駅を廃止し、その代替として設置した施設。自動車代行駅と同様、最寄の貨物列車発着駅との間でトラック輸送を行っていた。1986年11月1日国鉄ダイヤ改正で13か所に設置された。名称統一時には15か所あったが、北見・富良野のコンテナセンターは駅に統合されORSにはならなかった。
なお、国鉄時代にも自動車専用の貨物駅は存在していた。当時は自動車局の事業であり、バス路線に沿ってトラックを運行しており、国鉄で運行している場合もあれば日本通運に委託しているケースもあった。その中でも長野県の北山線(茅野駅 - 泉野・糸萱・蓼科)は自動車貨物線として、4箇所(信濃玉川、信濃山寺、蓼科、泉野)の貨物専用自動車駅が存在しており、特に信濃玉川は駅名表記こそ消されたものの、現在でも建物が残っている。
年表
- 1986年(昭和61年)11月1日 - 日本国有鉄道(国鉄)により、コンテナセンター開設。当時は、北見・富良野・小樽築港・羽後本荘・岡谷・刈谷・福知山・和歌山・広・徳島・高知・都城・宮崎の合計13か所。
- 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により、JR貨物が継承。
- 1991年(平成3年)7月31日 - 佐土原駅貨物取扱再開に伴い、宮崎コンテナセンター廃止。
- 1996年(平成8年)
- 1997年(平成9年)
- 1998年(平成10年)
- 1999年(平成11年)
- 2000年(平成12年)10月10日 - 羽生オフレールステーション開設[1][2]。
- 2002年(平成14年)
- 4月1日 - 第二種鉄道事業廃止に伴い中斜里・山形・古川の3駅を廃止、コンテナセンターに切り替え。
- 11月1日 - 西湘貨物駅の自動車代行輸送を廃止。
- 2004年(平成16年)4月1日 - 第二種鉄道事業廃止に伴い湖山駅を廃止、コンテナセンターに切り替え。
- 2005年(平成17年)
- 2006年(平成18年)4月1日 - 13か所のコンテナセンターがオフレールステーションに改称、18の自動車代行駅がオフレールステーションとなる。
- 2007年(平成19年)3月18日 - 矢板オフレールステーション開設。
- 2008年(平成20年)3月15日 - 青海オフレールステーション開設。
- 2009年(平成21年)4月1日 - 敦賀港オフレールステーション開設。
- 2010年(平成22年)4月1日 - 防府貨物駅が鉄道駅としては廃駅となり、防府貨物オフレールステーションはかつてのコンテナセンターと同じ扱いとなる[5]。
- 2012年(平成24年)
- 2013年(平成25年)3月16日 - 東能代オフレールステーションの営業を終了(東能代駅は車扱臨時取扱駅として存続)。
- 2014年(平成26年)5月7日 - 羽前水沢オフレールステーション開設[7]。
- 2015年(平成27年)4月1日 - 第二種鉄道事業廃止に伴い東松江駅が貨物駅としては廃止扱いとなり、東松江オフレールステーションはかつてのコンテナセンターと同じ扱いとなる。
- 2016年(平成28年)10月1日 - 名取オフレールステーションの営業を終了[8][9](名取駅は定期便なしのコンテナ取扱駅として存続)。敦賀港・東松江の2ヶ所のオフレールステーションを新営業所に業態変更[10]。
- 2017年(平成29年)
- 2018年(平成30年)4月1日 - 横手・岡谷・和歌山・糸崎の4ヶ所のオフレールステーションを新営業所に業態変更[12]。
- 2019年(平成31年)4月1日 - 敦賀港線廃線に伴い敦賀港駅が鉄道駅としては廃駅となり、敦賀港新営業所はかつてのコンテナセンターと同じ扱いとなる[13]。
- 2019年(令和元年)10月1日 - 弘前新営業所開設[14]。
- 2021年(令和3年)5月1日 - 糸崎新営業所の営業を終了(糸崎駅は車扱臨時取扱駅として存続)[15]。
- 2022年(令和4年)9月23日 - 第二種鉄道事業廃止に伴い有田駅と長崎駅が貨物駅としては廃止扱いとなり、有田・長崎の2ヶ所のオフレールステーションはかつてのコンテナセンターと同じ扱いとなる。
- 2025年(令和7年)3月15日 - 敦賀港新営業所の営業を終了[16]。
オフレールステーション一覧
なお、オフレールステーションではないが、北見駅と富良野駅の2駅は、年間を通して自動車代行を行っており、輸送量が多くなる季節は臨時貨物列車も設定される。
既に営業を終了したオフレールステーション
名称 | 拠点駅 | 備考 |
---|---|---|
東能代オフレールステーション | 秋田貨物駅 | 東能代駅構内(貨物駅は名目上存続) |
名取オフレールステーション | 仙台貨物ターミナル駅 | 名取駅構内(貨物駅は名目上存続) |
羽前水沢オフレールステーション | 酒田港駅 | 羽前水沢駅構内(貨物駅は名目上存続) |
東三条オフレールステーション | 新潟貨物ターミナル駅・南長岡駅 | 東三条駅構内(貨物駅は名目上存続) |
魚津オフレールステーション | 富山貨物駅 | 魚津駅構内(貨物駅は名目上存続) |
敦賀港新営業所 | 南福井駅 | 旧・敦賀港駅 |
糸崎新営業所 | 東福山駅 | 糸崎駅構内(貨物駅は名目上存続) |
広オフレールステーション | 広島貨物ターミナル駅 | 広駅構内(旧・広コンテナセンター) |
脚注
- ^ a b 日本貨物鉄道株式会社『羽生オフレールステーション誕生』(インターネットアーカイブ。2024年12月8日閲覧)
- ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '01年版』ジェー・アール・アール、2001年7月1日、ISBN 4-88283-122-8、p.192
- ^ a b 日本貨物鉄道株式会社『刈谷オフレールステーションの開業について (PDF) 』(インターネットアーカイブ。2024年12月8日閲覧)
- ^ a b c d “JR貨物 効率輸送に威力発揮 自動車代行駅”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 2. (1996年5月14日)
- ^ a b 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.87 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.94,145 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ “『山形県の鉄道輸送』令和2年度版”. 山形県. p. 38. 2021年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月8日閲覧。
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.116 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ 新たな鉄道コンテナ輸送ニーズについて - 全国通運連盟、4頁、2017年3月6日閲覧。
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.73,101 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.72,142 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.80,86,113,137 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ “JR貨物/敦賀港線を来年4月廃止、需要減で運行めど立たず”. LNEWS. (2018年12月18日). オリジナルの2018年12月18日時点におけるアーカイブ。 2018年12月18日閲覧。
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.138 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ 石野哲『駅名来歴事典 国鉄・JR・第三セクター編』p.86 JTBパブリッシング刊 2022年、ISBN 978-4-533-15118-7
- ^ “2025年3月時刻改正新しい貨物鉄道輸送サービスのご案内”. 日本貨物鉄道株式会社 (2024年12月13日). 2024年12月13日閲覧。
関連項目
自動車代行駅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 09:01 UTC 版)
「オフレールステーション」の記事における「自動車代行駅」の解説
最寄の拠点貨物駅との間を列車輸送に代えてトラック輸送を行う駅の通称。1996年(平成8年)から利用の減少した、または拠点駅に近接していた一部の貨物駅が指定され、トラック輸送に切り替えられた。一部はJR貨物の第二種鉄道事業廃止で駅としては廃止になり、コンテナセンターに切り替えられたものもあった。設定時は11駅が指定されたが、名称統一時には18駅になっていた。
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