背景限界とは? わかりやすく解説

背景限界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 03:16 UTC 版)

オルバースのパラドックス」の記事における「背景限界」の解説

恒星大きさ考慮するとき、宇宙ある程度大きさをもてば恒星表面埋め尽くされていくことになる。 夜空が星によって埋め尽くされるのにおよそ必要となる距離は上述のように背景限界または背景限界距離と呼ばれる。 これは粒子気体などの中を分子衝突せずに進め平均距離として知られる平均自由行程概念本質的に同等のものであり、以下のように見積もることができる。 地球中心として半径 r に広がる微小な厚み dr を持つ球殻を考える。 上述のように、そこに含まれる星が空を覆う割合は球殻の大きさ r によらないはずである。 簡単のため、恒星単位体積あたり n 個の割合一様に存在するとし、星がすべて断面積 σ(星の半径を a とすれば σ = πa2)を持つとする。 球殻に含まれる星の単位面積あたりの数は、n に厚み dr乗じて ndr期待される。 このとき球殻の全表面積対するそこに含まれた星の表面割合とは、単位面積当たりの星の表面積総和に他ならず、これは星ひとつあたりの断面積 σ をさらに乗じてdr となる。 実際これは r に関係しない。 ここで長さ次元を持つ量として λ = 1 n σ {\displaystyle \lambda ={\frac {1}{n\sigma }}} と置けばこうした球殻の星は dr/λ という一定の割合で空を覆っていくと期待される。 このとき星が互いに関係なく分布するなら、星は距離に関してこの一定の割合背景覆い隠し背景指数関数的に少なくなっていくはずである。 実際、距離 r までの星によって覆われていない空の背景割合を β(r) で表すなら、距離 r, 厚み dr の球殻は新たに全体の β(r)dr/λ だけの割合を覆うと期待されるので、その微小な変化量は dβ(r) = −β(r)dr/λ である。 β(0) = 1 であるから、β(r) は r とともに減少する指数関数、 β ( r ) = e − r λ {\displaystyle \beta (r)=e^{-{\frac {r}{\lambda }}}} で表される。 ここで λ は、これらの仮定のもとで空が星に覆われる割合指数関数的な変化特徴付ける距離であり、地上から空を見上げたとき視線が星の表面に至るまでの距離の平均値となる。 この文脈では背景限界と呼ばれるが、これは星と星の光における平均自由行程他ならない太陽系近傍の星の密度参考に、概算値として n = 1050 個/m3 ≈ 0.01 個/光年3(およそ一辺5光年立方体1つ)、恒星断面積を σ = 1019 m2(太陽の2倍弱の半径)とするなら、背景限界 λ は λ = 1031 m ≈ 1015 光年程となる。 この例は18世紀のシェゾーの得た値に近く現在の知識では実際に観測できる宇宙の大きさよりもおよそ5桁ほど大きい。 加えて実際宇宙銀河系銀河団に星が密集しその間には星のない空隙広がるので、実際の背景限界はこの見積もりよりはるかに大きくなるハリソンは、背景限界として λ ≈ 1023 光年という値を与えており、これは宇宙の大きさよりおよそ13上、すなわち10兆倍の大きさである。 上式から逆に、星の輝く宇宙地球から背景限界の k 倍の距離まで広がっていると想定すれば、そのとき夜空が星に覆われている割合 α は α = 1 − β(kλ) = 1 − e−k と求められることになる。 上のハリソンが示す値では k は10分の1となるように非常に小さいと考えられるので、指数関数近似として ex ≈ 1 + x (x ≈ 0) を取れば、これはおおよそ、 α ≈ k {\displaystyle \alpha \approx k} を意味する。 この近似は星の重なり無視した場合相当している。 結局、背景限界と実際の観測可能な距離との比がほぼ宇宙の星と暗闇の比に等しくなる。 この結果上述ケルヴィン得た結果に他ならず、これは重なり無視して一定の割合背景減少する場合であることを考えるなら直観的に理解できる。 このことからパラドックス逆に考えるなら、我々が実際に見る夜空暗闇背景割合だけ、宇宙は背景限界よりも手前までしか見えていないことになる。 この α ≈ k は太陽輝き覆った空と、星空明るさとの比とも等しい。 すなわち、星が一様に分布し、星の絶対的な明るさ平均的に我々の太陽等しいとするなら、太陽表面感じであろう灼熱明るさと、実際我々が見る夜空おぼろげな星明り全体明るさとの比が、背景限界の距離と星が輝く限界までの距離の比にほぼ等しくなる

※この「背景限界」の解説は、「オルバースのパラドックス」の解説の一部です。
「背景限界」を含む「オルバースのパラドックス」の記事については、「オルバースのパラドックス」の概要を参照ください。

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