恒星の年齢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 03:16 UTC 版)
「オルバースのパラドックス」の記事における「恒星の年齢」の解説
こうした20世紀の宇宙論の激変はこのパラドックスの様相を大きく変えた。 しかしパラドックスを解決するには、定常宇宙論であるかビッグバン宇宙論であるかに関わらず、膨張宇宙の考えは必ずしも要るものではなく、より単純な考察で十分である。 レーマーらが掩蔽の観測からすでに17世紀に光の速度が有限であることを示していたため、われわれが見ることのできる星々ははるか過去のものであることは明白であった。 よってそれまでの議論では、暗黙裡に恒星が、少なくとも背景限界を光が横切る時間よりも長期の昔から今と変わらず輝きつづけていたことを仮定している。 しかし科学的探求が恒星の輝きの原因にまで及ぶとともに、星の寿命はそれよりもはるかに短いと見積られるようになっていた。 ケルヴィンは、恒星が背景限界に対応する時間よりもずっと短い過去からしか輝きつづけていないとすれば、ちょうどその比に対応して夜空で星の占める割合が決まると導いた。 ケルヴィンによれば、この比はわずか1兆分の1に満たない値であった。 こうした結果は1884年にケルヴィンがアメリカの物理学者を対象に行った講義の講義録のひとつとして、1901年以降、論文や書籍の付録として出版された。 しかしこの内容は、夜空の暗さについての疑問とそのパラドックスの歴史を探求してきた天体物理学者エドワード・R・ハリソン (Edward Robert Harrison) によって再発見されるまで、その後ほとんど忘れ去られることとなった。 1987年『夜空はなぜ暗い?』(Darkness at Night) を著したハリソンはまた、作家エドガー・アラン・ポーが晩年著した散文詩『ユリイカ』(Eureka, 1848年) の中で夜空の闇について次のように記していたことを紹介している。 星々の連なりが限りなく続くのであれば、空の背景は天の川に見られるように一様に輝いて見えるであろう。 その背後すべてにおいて星の存在しないところは一か所として存在しえないからである。 したがって、こうした事態において、望遠鏡が無数の方向に見出す虚空を理解する唯一の方法は、見えない背景までの距離があまりに広大であるために、光線がそこからいまだ我々の元に届いていないのだと考えることであろう。 ポーが光線が届いていないとした理由を星がまだ形成されていないためであると解釈するなら、これは定性的にではあるが、ケルヴィンの考えを先取りしていたことになる。
※この「恒星の年齢」の解説は、「オルバースのパラドックス」の解説の一部です。
「恒星の年齢」を含む「オルバースのパラドックス」の記事については、「オルバースのパラドックス」の概要を参照ください。
- 恒星の年齢のページへのリンク