自転の減速
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/01 15:29 UTC 版)
恒星は、低温のガスや塵の雲が重力崩壊した結果できると信じられている。雲が崩壊すると、角モーメントの保存により雲の自転速度は増加し、周囲の物質を回転円盤に集める。この円盤の密度の高い中心部で原始星が形成され、崩壊の重力エネルギーで熱を持つ。 崩壊が進行すると、降着する原始星が赤道での遠心力により自壊する速度まで、自転速度が増加する。そのため、自転速度は最初の10万年の間に減速する。減速の機構についての1つの可能な説明は、原始星の磁場と恒星風の相互作用による磁気ブレーキである。増大する恒星風が角モーメントを運び去り、原始星の自転速度を減速させる。 平均自転速度スペクトル型ve(km/s)O5 190 B0 200 B5 210 A0 190 A5 160 F0 95 F5 25 G0 12 スペクトル型がO5からF5の間のほとんどの主系列星は、高速で自転していることが分かっている。この範囲にある恒星は、質量とともに自転速度が増大する。自転速度は、若くて質量の大きいB型主系列星で最大となる。恒星の寿命は、質量の増加とともに短くなるが、これは恒星の年齢に伴う自転速度の減少で説明することができる。 主系列星では、自転速度の減少は次の数学的関係で近似できる。 Ω e ∝ t − 1 2 {\displaystyle \Omega _{e}\propto t^{-{\frac {1}{2}}}} ここで、 Ω e {\displaystyle \Omega _{e}} は赤道上の角速度、tは恒星の年齢である。この関係は、1972年に発見したAndrew P. Skumanichの名前に因んでSkumanichの法則と呼ばれる。Gyrochronologyは、太陽で校正を行い、自転速度に基づいて恒星の年齢を決定する学問である。 恒星は、光球から恒星風を放出してゆっくりと質量が減少する。恒星の磁場は、放出物質にトルクを与え、角モーメントを継続的に恒星から転移している。自転速度が15km/sよりも速い恒星は、質量喪失がより速く、従って自転速度の減少もより速く進行する。恒星の自転が遅くなると、角モーメントの減少速度も遅くなる。このような条件下では、恒星は徐々に自転ゼロの状態に近づくが、決してその状態に達することはない。
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