シェゾーとオルバース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 03:16 UTC 版)
「オルバースのパラドックス」の記事における「シェゾーとオルバース」の解説
ハレーそのものの議論には言及していないものの、その不備を正しパラドックスを正しく定式化したのはスイスのジャン=フィリップ・ロイス・ド・シェゾーだった。 1744年のシェゾーの著作『1743年12月および1744年1月、2月、3月に現れた彗星について』(Traité de la Comète qui a Paru en Décembre 1743 & en Janvier, Février & Mars 1744) の付録のひとつで集団としての星の明るさが定量的に求められ、このときパラドックスがはっきりとその姿を表した。 シェゾーは無限の彼方まで均一に恒星が分布するとすれば、ある距離の球殻に含まれる恒星の数が太陽系からの距離とともにその2乗で増えると見積もることができ、距離の2乗に反比例する見かけの表面積と相殺しあうことを正しく認識していた。 これにより、星の重なりを考慮すれば、宇宙のどの方向を考えてもほとんど必ずどこかの星の表面に行き当たることになる。 シェゾーは、星が太陽とほぼ同じ明るさをもつとすると、空はどこも太陽表面と同じ明るさをもち、球面上の面積比から空全体では太陽の9万倍の明るさとなることを示した。 またシェゾーは近距離の恒星の距離もおおよそ正しく推定しており、そこから、星が夜空を埋め尽くすために必要な距離が 6×1015 光年(6千兆光年)であると推計した。 このいわば星の光における平均自由行程は、背景限界と呼ばれる。 シェゾー自身は、無限の宇宙を想定しており、夜空の暗さは宇宙空間を進む間に光が吸収され、自らの計算よりも光が暗くなるためだと考えた。 現在このパラドックスに名を冠されるドイツのヴィルヘルム・オルバースは、シェゾーに80年近く遅れて1823年にハレーの議論の問題を再び指摘するとともに、恒星が均一でなく星団のように集団をなしていたとしても、その星団が均一に分布していれば問題は同じであり、パラドックスは解決しないことを付け加えた。 オルバースもまたシェゾーと同じくパラドックスの解決を宇宙が透明でないことによる光の吸収に求めていた。 オルバースはシェゾーの著作を蔵書としていたが、シェゾーの業績について言及しなかった理由は明らかではない。
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